第208話 真っ青な神
短いです…
「ハッ!!」
「ふんっ!!」
俺と軍神アルスの戦いは苛烈を極めていた。
俺が刀を振れば衝撃波がダンジョン内を斬りつけ、軍神が剣を振ると地面が抉れる。
そして、刀と剣が打ち合わさるたびにダンジョンの壁がポロポロと崩れ落ちる。
「ふむ、よもやここまでとは……神であっても成り立てと思い手を抜いておったが余計なことをしていたようだ」
「……本気じゃなかったのか?これで……?」
コイツは本物の化け物だ……
ツゥ……と頬を流れる汗を手で拭い、手の感触を確かめるように刀を握り直す。
やべぇな……握力が死んできてる。
身体強化を使えず、一振りで山を両断するような一撃を受け流しているのも限界を迎えようとしていた。
「見た目は俺のじいちゃんぐらいの歳のくせに…規格外にも程があるだろ……」
「…人は見かけによらないと言うだろう?それにワシは生まれながらにして神だ。最近神へと至ったような小童に負けてやるほど甘くは無いつもりだ」
生まれながらにして神とかエリートすぎて、何処ぞのサイヤな人もびっくりだよ。
「温存してる余裕もないし、次の一撃で決めるつもりで行かせてもらう」
「望む所!いざ尋常に勝負だ」
……ネタの方なのか?違うよな?
一瞬頭をよぎったネタにそっと蓋をし、俺は次の技に全ての意識を集中させる。
刀を鞘にしまい腰を低くし構える。
「ほぉ……では、此方も……」
俺の構えを見た軍神は自らも最強の技を振るうべく剣を構える。
「「…………」」
始まりに戻ったような光景だが、一つ違うのは至る所が傷つき、ダンジョンが崩壊し始めている事だろう。
そして永遠に続くと思われた沈黙を破り、俺は西音寺流の全てをかけて技の名を紡ぐ。
「………西音寺流抜刀術 秘奥義 紅月飛天翔ッ!!」
俺の踏み込みにより地面がひび割れ、ドゴォッ!!と、生身の人間が出せる数百倍の脚力で軍神目掛けて突進する。
俺が肉薄するまでの時間は僅か0.1秒……
これが今までの敵ならば、この時点で俺の勝ちが確定していた。
だが、相手は正真正銘の化け物…もとい神である。
「ッ!?厳星流斗!!」
僅か0.1秒に反応してみせた軍神アルスは内心焦っていた。
くっ!!此奴!!神へと至って身体能力が強化されているとはいえ、このワシが反応するのがギリギリになるだと!?
一体此奴はなんなのだ!?
と、あたかもユウキがスキルの類を使って自己強化をしていると思っているのだ。
そして……
俺の最高の一振りは防がれてしまった。
だがしかし、これは引き分けじゃないだろうか?
俺がそう思うのは軍神アルスの持つ剣。
その剣が半ばから折れて部屋の奥へと飛んで行ってしまっていた。
「……お主、咄嗟にワシを狙うのをやめてこの剣を狙いおったな?」
「よく気づきましたね?その通りです」
バッ!!と飛びのきリリア達の元まで下がった俺は、自らの肉体の限界まで行使したことによって、膝をついてしまう。
「ユ、ユウキさん大丈夫ですか!?」
「ユウキがこんなになるなんて…」
「ご主人様!直ちに回復薬を飲んでください!」
仲間達がボロボロになった俺を見て焦りながら介抱してくれる。
「ふむ、引き分けにしておこう。新神がどのような者かと思って顕現したが、中々に熱い戦いを楽しめたぞ」
「こっちは2度とごめんだ。こんな縛りプレイの中貴方のような武闘派な神と戦うのは勘弁願いたいね」
俺が闘いの感想を話してると軍神が少し顔を青くして俺に恐る恐る聞いてくる。
「お主…スキルを使ってなかったのか…?」
「え?そうだけど?このダンジョンそういう仕様だろ?」
何故か俺の話を聞いて震えている。
どした?さっきまでの威厳が消え去ったぞ…?
軍神の異変に仲間達も首を傾げ、4人で何事や?と思っていると
「お、お主…本当に新神か……?」
「そうですが?何か?」
「「「「「……………」」」」」
暫く無言の時間が流れる。
そして、軍神が口を開いたと思ったら、俺にとって聞き捨てならない事を言いやがった。
「……ば、化け物め!」
「なんですとぉ!?」
こうして、軍神との闘いは予想外の結末で終わりを迎えたのであった。
次の更新は明日の0時頃になります!
暫く短めの話になるやもしれませぬ…
来週の日曜日に新作の投稿を開始しようかなと思ってます!
是非そちらも見ていただけたら嬉しいです♪




