第204話 残されたもの達
短めです。ごめんなさい…
〜〜sideローズ〜〜
行ったわね…
私はユウキくんの事を見送り、姿が見えなくなるまで立ち続けていた。
もしかしたらこれが今生の別になる可能性だってあるのだから、私の行かないでと思う気持ちは正常なものだろう。
「ん、行っちゃった」
「パパ〜うぅ…」
私が暗い顔をして見送っているのを悟った仲間達が悲しそうに地面を見つめて項垂れていた。
年長者である私がこんなんじゃダメよ…
「さぁ、みんな部屋に戻りましょうか。パパ達が戻って来た時に元気な姿を見せるためにも今は私達だけでやれる事をやるわよ」
「そうですね。そうと決まれば私も修行に励みます!」
「ひまりちゃん…私も一緒にやるね!」
「ルビーも〜!」
「ん、私も」
こういう時、人一倍明るくみんなを元気にしてくれるひまりちゃんの存在は本当に助かるわね。
「それに、先輩なら全然大丈夫ですよ!何があっても戻って来ますって!」
「ふふっ…そうね。ユウキくんがやられる所なんて想像もできないわね」
「リルもそう思います!ユウキ様は世界最強です!」
「「ご主人様は世界一じゃなくて宇宙一だよ?」」
こてんっと可愛らしく首を傾げているシロナちゃんとモモちゃんの事をいつものユウキくんのように撫でてあげる。
「あー、すまん。盛り上がってるところに水をさして悪いんだが、あいつらが死ぬことは絶対にないぞ」
私たちが感傷に浸っていると、一連の流れを見守っていたダミルさんがこんな事を言い出した。
ユウキくん達が死ぬ事はないってどういう事なのかしら?もっと詳しく教えてもらえるかしら?
と言おうと思ったのだが、先手を打たれる。
「俺は説明が下手くそだからな。ガノンが戻ってくるまで部屋で待っててくれ!」
それだけ言うと自分はスタスタと屋敷の中へと入って行ってしまった。
「……今の、どう言う事ですかね?」
「…なんだろう?口から出まかせを言ってるようには思えなかったけど…」
「そうね……彼が私達を励ます為に嘘をついた可能性も捨てきれないけど、性格的にそんな気を回せるタイプでは無いと思うのが正直なところかしら?」
暫く共に旅をしただけあり、仲間達も彼の人柄をよく理解していた。
それだけにこのような気遣いをできるはずがない!と微妙な信頼を勝ち得ていた。
「まぁ、考えていても埒があかないわ。彼の言う通り、部屋でガノンさんの帰りを待つことにしましょうか」
「ん、そうする」
「ですね!部屋で魔力トレーニングでもしてます!」
「ん、私もそれやる」
「それじゃ私はシロナちゃんとモモちゃんとリルちゃんと遊んでようかな」
「「やったー♪」」
「り、リルもですか!?」
そして私たちは部屋に戻り、各々好きなように過ごしていた。
そしてお昼も近づいて来た頃、部屋の扉がノックされる。
「皆さま、そろそろお昼になります。旦那様もお帰りになっておりまして、是非食事をとの事ですがいかがなさいますか?」
私は、仲間達を見回すとやはりユウキくんの事が気になるらしく、全員が頷いていた。
まぁ、ずっとソワソワしていたものね……
斯く言う私もなのだけども…
「えぇ、是非お願いするわね。私たちはもう向かった方がいいのかしら?」
「いえ、もう少ししたら案内担当のメ使用人が参りますので、もう少しの間お寛ぎいただいてください」
「了解よ。待ってるわね」
「はい、失礼いたします」
失礼しますと言い残し、扉の前から去って行くメイドが言う通り、もう少しの間我慢が必要なようだ。
個人的には早めに行って、ユウキくんの話を聞きたかったのだけど……って、これは私だけの気持ちではないわね。
「はぁ…リルは早くガノンさんに話を聞きたかったです」
「ん、私も」
「まぁまぁ、後少しの辛抱ですよ?」
「ご主人様大丈夫かな…?」
「きっと大丈夫だよモモ!だってご主人様だもん!」
なんの根拠にもなっていないシロナの言葉に、全員が苦笑いしながら、確かに。ユウキくんだしな…と思い笑い合う。
それから15分近く経ち、案内係がドアをノックして来たので、私達も作業をやめて食堂へと向かう。
「皆さんお揃いですね。では、ユウキ様達が今どちらにいるのかを説明致しましょうか」
食堂へと入った私たちの姿を見て、ガノン殿は真っ先にユウキくんの現在の情報を教えてくれるようね。
「その前に、立ち話もなんですし、それに使用人たちが料理を運んで来ますので先に席に着きましょうか」
私たちは終始無言の状態で、ガノンさんに促されるままに席へと着く。
いつもならユウキくんの膝の上に座るルビーも今日ばかりは私の膝の上に座っている。
「さて、皆さん席についた事ですし話を始めますね……まず最初に、この国の制度をご存知でしょうか?」
ガノンさんの説明はこの言葉と共に始まったのであった。
次の更新は明日の0時頃予定です。
もしかしたら日曜日の朝になる可能性があります…




