第1話 あれ?本当に召喚されちゃったの?
んじくん…西音寺くん!!起きて!!
「ん、ん〜?あれ?ここは?異世界か?」
「何寝ぼけてるの?次は移動教室だからそろそろ行かないとだよ!テスト終わってからずっと寝てたでしょ!(笑)」
「あ、あぁ、やっぱ夢だったか…期待した俺がバカだった…くそっ…」
「ん?なにか夢見てたの?まさか!?エッチな夢とかじゃないでしょうね??」
「いや、そういうのじゃないよ!!?まじで!!」
「じーーー、怪しい……なんてねっ!西音寺くんの事を信じてあげよう!ありがたく思いたまえ!」
「は、ははぁ〜、ありがたき幸せ…」
「おーい、お前ら!バカやってないで早く行くぞー!!」
「あっ、コラ待て天空!!」
「ちょっと!置いてかないでよ〜!!」
と二人して天空の事を追いかけるのであった。
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3人で他愛ない話をしながら、科学実験室に向かっていると…
「こんにちは、西音寺くん、天空くん、神咲さん!相変わらず3人はいつも一緒ね〜」
この人は氷山雪、この学校の教師であり、俺の近所に住んでいて、小さい頃から何かと世話になっているひとである。小さい頃から思っていたことなんだが、めっちゃ美人なんだよなぁ〜、お上品な顔立ちをしているのにも関わらず、明るい少しオレンジっぽい茶髪を、背中に流し軽くウェーブがかかっていて、歩く度にふわっといい匂いが広がる…何度か先生じゃなく、モデルとかその手の道に進むべきじゃないかな?と言ってみたことはあるのだが、「それだとゆうちゃんの面倒見れないじゃない!」と速攻否定された、うーむ、本当にワンチャンどころか、確実にトップモデルまで上り詰めると思うのになぁ…
「おっ、雪姉じゃん!ちっす!」
「こら!学校ではちゃんと先生って呼びなさいっていっつも言ってるでしょ!!」
「いや、だって雪姉のこと先生って呼ぶと違和感半端ないんだもん(笑)」
「はぁ〜、お姉さんは悲しいよ…ゆうちゃんにいつまでも先生って呼んでもらえないなんて…」
「いや、雪姉…素が出てるけど…」
「はっ!?しまった!!天空くん、神咲さん!!何も聞かなかった事にしてくれない?!お願い!!」
「私は何も聞いてませんよーー」
「俺もちょっと突発的な中耳炎になったんで、何も聞こえてないです」
「ふふっ、ありがと♡あっ、あなた達もう行かないと移動教室でしょ?間に合わなくなっちゃうわよ?」
「って、担当は雪姉じゃん…みんな早く行くよ」
「ほーい」「はいはい」
「あっ、ちょっと待ってよーー!先生のこと置いてくなーー!」
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ふぅ、それにしても変な夢だったなぁ…命綱無しのスカイダイビング…あれはマジでやばかった…寝ながらチビってなくてよかった…マジで…
「それじゃ、授業始めるよーー!号令!」
「起立!気をつけ!礼!!」
「よろしくお願いしまーす」
「はい、じゃあ教科書の“キャーッ”薔薇園さん!?どうしたの!?」
雪姉が授業を始めようとした瞬間、授業開始の決まり文句をぶった切り、異変にいち早く気づいた女子の悲鳴をトリガーに、実験室中に一気に光が満ち始めた。
いやいや、なんだこれ?新たなドッキリか何かか?誰が仕掛けたんだ?雪姉か?いや…雪姉にこんなこと出来るわけないし(別に馬鹿にしてるわけではない)、となると生徒の誰かが?いや、こんなことするヤツうちのクラスに居たっけな〜、敢えて言うなら、天空か?でもあいつは朝からずっと俺たちと一緒にいたし…マジでわからん…まぁ、そのうち収まるだろ。
「何これ!?急に光が!?!」
「うわぁぁああ!!眩しぃぃいいいい!!」
「みんな!!落ち着いて!!!」
「うーむ、なんだこれ?いつになったら収まるんだ?」
みんながパニックに陥ってると、とうとう目も開けられないくらいの強い光が実験室を覆い尽くした…
しばらくして光が収まると…何故かさっきまで居た実験室とは異なり、体育館程の広さの空間に居た…いや、マジでどうなってんの?誰か説明して…ドッキリにしても大掛かりすぎだろ…体育館程の広さと言っても、もちろん体育館ではない、寧ろ何かの儀式を執り行うような部屋に見える。俺達から見て両サイドに何本かの柱が立っており、その柱の前には騎士?っぽい人達が静かにこちらを見ている…あれ?よく見ると足元に魔法陣っぽいものが…マジで異世界召喚されたんか??
と考えていると、
「皆様、ようこそおいで下さった。私は、アメジスティア王国国王、アメジスティア・ウィル・エギルであります」
国王と名乗り腰を45度ほど折り、俺たちに頭を下げた。いや、国王がそんな簡単に頭下げるなよ…
「こ、国王陛下!!そのような態度では威厳が!!」
ほら、言わんこっちゃない(言ってはないけど)案の定怒られている…
「いいのだ宰相よ…我らが呼び出しておいて、偉そうにしていては、私の言葉に耳を傾けてもらえなくなってしまう」
「し、しかしですな陛下!上に立つものが、腰が低くてどうするのですか!!」
「そうですぞ陛下、余りにも下手に出ていると強面の顔も役に立ちますまい」
と、今まで沈黙を保ったままでいた柱の前に並んでいる中で、1人だけほかの騎士達とは違う装いをした、如何にも偉いですよと言ったようにみえる豪華?なんと表現していいかわからんが、とにかくほかの騎士達よりも目立つ甲冑を着けている。めっちゃ渋顔のイケメン、ダンディーなオッサンといった感じの騎士が国王に声をかけた。
「おい、騎士団長よ、それはちょっと違くない?」
「はっはっは、お客人方失礼した私はアメジスティア王国の騎士団長を務めている、ディ・フォール・アウリムである。気軽にアウリム団長と呼んでくれ」
と俺たちに向かって気さくに声をかけた。うん、何となくこの人はいい人だな。と思わせる雰囲気がある人である。
「とりあえず立ち話もなんだから、とりあえず部屋を移動しようか。誰か勇者様方を用意しておいた部屋にお通ししておいてくれ」
と国王が命令し、扉から護衛を数人連れて出ていってしまった。
「では、ご案内致しましょう。改めまして私はこの国で宰相を務めさせていただいております、エル・ユルス・エドガルドと申します。呼び方に関しては、どのような呼び方をして頂いても構いませんが、そこの騎士団長と同じく気軽に話しかけてもらえるとこちらも嬉しいですね」
と歩きながらエル宰相の話を聞いていると、立ち止まりエル宰相は俺たちに頭を下げた。
「はぁ、これはご丁寧に。私はこの子達のクラスの副担任をしています、氷山雪といいます」
雪姉が恭しく頭を下げるのだった。
それはいいのだが、宰相も国の中ではお偉いさんだろうに、さっき自分で国王に軽々しく頭を下げるなと注意しておきながら、自分はいいんか?
「不思議に思っただろ?さっき国王陛下に注意しておきながら、自分は頭を下げるのか?と」
!!??なんでわかったんだ?騎士団長はエスパーなのか??
「その顔はなんでわかったんだ?って顔だな、ふっ、君はすぐに顔に出るからわかりやすいのだよ。さて、質問の答えだが、我々は良くも悪くもあの陛下を尊敬していてな、民を思い、民の目線に合わせ、この国に何が足りないか、こうしたらもっと良くなるのでは?と民と共に考えることが出来る、素晴らしい国王なのだよ、だから陛下に対して厳しいことを言うが、我々は陛下を見習い高圧的な態度を取らないように、日頃から過ごしているのだよ」
と、アウリム団長は俺たちに語った。この国は国のトップ連中が民の事を真に思っている。なるほど、宰相や騎士団長といった立場が上の存在になっても、このように思い遣りのある行動が取れるのか…是非とも日本の政府のお偉いさん方にも、この国の見学にでも来てもらいたいものだな、無理だと思うけども…
などと、どうでもいいことを考えていると、宰相がまた立ち止まった。おや?着いたのか?こんなこと言うのはなんだが、今の今まで歩いてきた廊下は、王城にしてはなんというか、余りにも質素な気がするが、それにほとんど使用人らしき人ともすれ違わなかったし。何かあるんか?
「着きました。こちらの部屋で陛下はお待ちです。これからの詳しい話は陛下からお聞きください。では、失礼致します。」
「あれ?エル宰相達は中に入らないんですか?」
「はい、私たちの役目はここまで案内する事でしたので、後のことは国王陛下からお聞きください。では、ディ団長行きましょう。」
「うむ、そうだな。ではユキ殿そういう事なので」
「はぁ、わ、わかりました…」
「それではまた後程」
宰相と団長率いる騎士団の方々はそれだけ言うと、今来た廊下を戻って行ってしまった…