第190話 幕間 バカンスの終わり
幕間になります!
第5章の始まりです!
〜〜side???〜〜
昼間、燦然と地を照らし往来を闊歩する者の体力を容赦無く奪う陽の光が消え去り、宵闇が世界を包み込む中……
とある地で、禍々しい玉座へと深く腰掛け、肘掛けで頬杖を着く、これまた邪悪に染められていそうな装いの謎の人物が臣下へと問う。
「おい!やつはまだこにゃいのか?」
少し、いや…ほんの少しだけ舌ったらずな話し方をする者に臣下は真面目な顔で答える。
「はっ!奴らは未だエメラルに滞在しているとの報告が上がっております。何でもエメラル近郊の避暑地でバカンスを楽しんでいるとか」
「にゃんだと!ずるいのじゃ!妾も遊びたいのじゃ〜!」
「こほんっ、威厳が台無しですぞ?」
「おっと、ダミルよわるいのだがこの手紙をやつに届けてはくれまいか?」
「これはこれは、私目にそのような大役を任せていただけるなど恐悦至極!直ちにエメラルへと馳せ参じ、このダミル…戦果を上げて見せましょう!」
「うむっ!がんばるのだ!…のじゃ!」
「では、行って参ります!」
ダミルと呼ばれた筋骨隆々な褐色の戦士然とした男……その男の頭には頭角にツノのようなものが生えていた。
「して我らが主よ……例の者達には何か準備をさせておきますか?」
「ふむ、どうしようかのぉ〜何かよい案はうかばぬか?」
主と呼ばれた者は、威厳(笑)たっぷりに臣下に聞いているが、この場にいる2人の臣下の片割れがボソッと口に出す。
「……今日も尊い」
「おい、良さないかルイス…」
だが、ルイスの言葉はうむむ…と可愛ら……威厳(笑)たっぷりに唸っていた為気付いていなかった。
「……はぁ、ではこうしてはどうでしょうか?」
ガノン…この地で1番の知将が玉座へと歩み寄り、主へと耳打ちする。
「ふむふむ、おぉーっ!それはいい!」
「では、その様に手配して参りますのでルイスにも手伝ってもらっても?」
「許可するのだっ!…のじゃ!」
斯くして、この世界を揺るがす(?)一大プロジェクトが密かに幕を開けたのであった。
〜〜sideユウキ〜〜
「へーーーっくしょんっ!!」
この特大のくしゃみをした少年は、言わずと知れたハーレム野郎…
「どうしました?風邪でしょうか…?」
「いや、俺は風邪を引くことはないから誰かが噂でもしてたんじゃないか…?」
突然の寒気に襲われたハーレム野郎改めユウキは何となく嫌な予感を覚える。
「あっ、先輩それダウトです」
「えっ!?何でわかったんだ!?」
地球のカードゲームを楽しんでいた俺達の元へと来訪者が訪れたのは、この日の夕方……
「!?ご主人様!!」
「あぁ、わかってる。誰かここに向かって来てるな…」
物凄い勢いでかなりの魔力を秘めた何者かが、俺たちが過ごすこの別荘へ向けて飛んで来ている。
俺達は各々武器を手に取り、外へと飛び出してその時を待つ………
「ッ!!見えました!」
リリアが指を刺す方を皆んなが一斉に見上げ……目を点にする。
「えっ……?」×全員
その者は空を飛んでいた。
いや、飛ぶと言うのには語弊があるだろう。
その者は此方に向けて吹っ飛んで来ている。
この表現の方が今の彼の状態を表すのに丁度いいだろう。
「だ、誰か止めてくれぇぇぇえええ!!」
何かを叫んでいるのは聞こえていたが、まさか助けを求めているとは思わず、俺たちはそれを呆然と見つめる。
「ええっと…どうしよっか…?」
「どうするも何も…敵が味方かもわからない今は助けるのも抵抗あるわよね…」
「で、でもねぇ……その、あの体制を見てると…ぶふっ…」
ローズが思わず吹き出してしまい、それに釣られて双葉と一華も顔を背けて吹き出す。
斯く言う俺も笑いを堪えるのに必死だ。
何故なら件の人物は身体をくの字になりながら空を飛んで来ているのだ。
完全に空気抵抗に抗えてない状態で…よく背骨折れてないな…
「そこの者ォォォオオ!!この手紙を受け取ってくれぇぇぇえええ!!」
「えっ、手紙……?」
「あぁぁぁぁぁあああッ!!!!!」
俺達の頭上を通り過ぎ、少し離れた所に不時着した謎の人物は、小さくないクレーターを作り、あたり一体の木々を薙ぎ倒していた。
結界を張っている為何の影響もなかったが、かなりの地響きだったな…
「せ、先輩…?あの人死んだんじゃ…?」
「……かもな。さて、とりあえず飯の準備でもするか」
俺は何も見なかった。
そう思う事にして別荘の中へと戻ろうとした時……
「勝手に殺すな!手紙を受け取ってくれと言ったであろう!」
「ヒィッ!!パパ!このおじちゃん怖いよぉー」
「あぁん?テメェうちの娘を何怖がらせてくれてんだ?あぁ?今すぐ土に還すぞ?」
「ヒィッ!!ってそうではない!……怖がらせてしまったのはすまない。この通りだ」
見た目とは裏腹に意外にも素直に頭を下げた褐色の男にルビーも「うみゅ、許してあげるよー?」と素直に謝罪を受け入れていた。
うんうん、人が謝ってるのを素直に聞き入れてあげるなんてうちの娘は良い子だなぁ〜
「で、手紙は?」
「おっと!そうであった!これである!」
男が懐から取り出した、少し汚れてしまっている手紙を受け取り、俺はその中身へと目を通す。
可愛らしいひらがな多めの丸文字で書かれていた内容に俺は胸を躍らせる。
「ユウキさん?私たちにも見せてください」
「あぁ…いいぞ」
そう言い俺はリリアに手紙を手渡すと、残りの仲間達がその手紙を覗き込んでいる。
「ん、可愛い字……」
「可愛いのです!マスター?この手紙が誰からのかわかるのです?」
「あぁ、勿論だとも!これは俺への招待状だろうな……魔族の王…通称まおーさまからの!!」
俺はきっと今キモい顔をしてるに違いない。
だって仕方ないだろう?
リアルまおーさまに会えるんだぜ?そりゃ、ニヤけても仕方ないだろう?
さて、バカンスも終わりか…
また忙しい日々が始まりそうだな。
俺はそんな予感とは違い、確証を持ってそう思う。
この先に何が待ち受けていようと……
俺はまおーさまを愛でるんだ!!!
色々と台無しである。
次の更新は明日の0時頃になります!




