第188話 恋人達との日常 6
遅れました!ちょっと午前中頭痛くて…頭痛薬飲んで良くなりました!
〜〜sideユウキ〜〜
「ただいまぁ〜」
「ただいま♪」
「おかえり〜って……あんた達ちょっと近くない?」
「え〜?何言ってるのお姉ちゃん?そんな事ないよ?えへへ」
「………ちょっと双葉?私にその男貸してくれないかしら?」
何故か青筋を失ったかの浮かべた一華が双葉にそんな提案をしてくる。
……なんかみんな遠くから俺たちを見てるんだけど…?俺もそっちに行っていいのかな?
そう思い繋いでいた手を解き、一本踏み出した瞬間……
「どこ行こうとしてるのよ?あんたに話があるのよ?」
「はい…なんなんだよ一体…」
ガシッと着ていた服の襟を掴まれ、強制的に歩みを止めさせられる。
「お姉ちゃん?そんな風にしちゃダメだよ?ユウキくん、お姉ちゃんは明日の事話したいんじゃないかな?よろしくね」
「あっ!おい、双葉!………で、話ってなんだ?」
くそ!みんな逃げやがったな!?
俺は双葉と共にどっかへ消えて行った仲間達に心の中で悪態をつく。
「ちょっと来なさい」
「…どこ行くんだ?」
どこ行くんだと聞いたら、黙ってついて来いと睨まれる。
なんて理不尽な世界…さっきまで楽しかったのになぁ……
一華の後に続き別荘の裏手に来た。
……なんか地球にいた頃にヤンキー(笑)に絡まれた時を思い出す。
「それで?こんな所に来てなんの話だ?」
「……あんた双葉に何したの?」
「…?何が?」
俺は一華の質問の意図が分からずに聞き返してしまう。
それが癇に障ったのかイラッとした一華に詰め寄られる。
「双葉に何したの!!って聞いてるのよ!あの子アンタにデレデレだったじゃない!!変なことしたんでしょっ!!何したのか言いなさいっ!」
「えぇ……そうだな…膝枕と…」
「膝枕!?」
「あと、キスくらいかな?」
「キ、キス!?!?」
面白いぐらいに表情が変わるなこいつ…
終いにはプルプルと震えて涙目でおれを見上げてくる。
「ど、どうした?」
「な、なんでもないわよ!あ、明日覚えてなさいっ!」
「えぇ……明日こんなんで大丈夫なのか?」
まぁ、なんとかなるだろ…
女の子の気分は変わりやすいからなぁ〜
明日の俺に全てを委ねよう。うん。
翌朝…
「一華行くぞ〜」
「ま、待ちなさい!心の準備が…」
「はいはい、お姉ちゃん頑張って来てね〜」
「あっ!?ちょっ!双葉やめなさい!」
「辞めないよ〜!っと…ユウキくん、お姉ちゃんの事よろしくね?それと……」
双葉からこそっと耳打ちされた事を心に留め、一華の待つ転移先へと向かう。
「お、遅いわよ!?あ、あの人だかりはなんなのよ!」
「うわぁ…今日もかぁ……」
ユウキ様ようこそ!!という段幕を広げた人達…
一華とのデート先はペリドットなのだ…
「おいお前ら!今日はデートだから邪魔するな!」
「そ、そんな大きな声で言わないでよ…は、恥ずかしいわよ!?」
一華が真っ赤になりながら俺の背後へと隠れるが、俺の言うことは忠実に聞き入れるので、水が引くように居なくなる。
「な、なんなのよもう…」
「あー、すまん…俺のせいだ…」
「べ、別に攻めてるわけじゃないわよ?ただ…で、デートぐらい落ち着いて過ごしたかっただけなんだから!」
「一華……そうだよな。もっと俺がキツく言っておくわ」
「でも、おかげで緊張は解れたわね…エスコート頼んだわよ?」
「はいはい、お嬢様の仰せのままに…ってね」
俺は事前にローズから教えてもらっていたペリドット周辺の情報を頭の中で整理し、一華が喜びそうな所を順に回ることにした。
「とりあえず一華はこっちに来るのは2回目だったよな?」
「そうね…この前は観光って感じじゃなかったから残念だったけど…」
「あー、確かにな。まぁ、今日はのんびり観光できるからさ!」
俺はそう言いながら一華に手を差し出す。
「……これは?」
「デートなんだろ?手ぐらい繋いでもいいだろ?まぁ、一華が嫌なら辞めとくけど…」
「……い、嫌じゃないわ!仕方ないから繋いであげるわよ!ほら、これでいい?」
「いや、良くないな」
俺は握りしめてきた一華の手を指を絡め合う形に握り変える。
所謂、恋人繋ぎと言えやつだな。
「な、なななっ……」
「何してんだ?行くぞ?」
俺はそれだけ言うと一華の手を引き歩き出す。
「はわ、はわわわわっ……ぷしゅぅ…」
…?変なやつだな…急に黙ってどうしたんだ?
「とりあえず一華、あそこに行くぞ?」
「ふぅ、ふぅ…ど、どこかしら?」
「何でそんな息荒いんだ?熱でもあるのか?顔も赤いし」
「なっ……き、気にしないでいいわ!そ、それよりもどこに行くのって言ってるのよ」
「無理すんなよ?……それであそこの仕立て屋に行こうと思うんだ」
「仕立て屋…?服でも作るの?」
くっくっく……俺の目論見通りの質問を返してくれる一華に、俺はニヤリと笑みを浮かべて口を開く。
「そうだ、せっかくオシャレして来てくれた所悪いんだけど……ペリドットの民族衣装的なの着て行動しないか?」
「!?し、仕方ないわね!」
オシャレ好きな一華はペリドットの衣装なんかも気になるのだろう。
嬉しそうにしながらぎゅっと俺の腕に抱きついて来る。
……近くね?とも思ったが、本人に言うとまた機嫌を損ねる可能性もあるので、下手な事は口にしないのだ。
「あっ!ユウキ様!お久しぶりでございます!」
「久しぶりですねリュートさん!……と言っても毎回出迎えの中に居るの知ってますからね?」
「はっはっは!そりゃあ勿論ユウキ様を一眼見るだけでしばらく元気になれますから…それよりも此方のお嬢さんは?彼女様ですか?」
「彼女ではないかな…紹介するよ、俺の仲間の一華だ…」
「ば、薔薇園一華です。その…二人はどのような知り合いなのかしら?」
「あー、俺が前にこの国にいた時に服のデザインとかを習ってたんだよね」
「あの頃が懐かしいですね…またいつでも教えますから遊びに来てくださいね?」
「あははっ!ありがとうございます!っと、本題を忘れてた。一華とのデートでペリドットの民族衣装を着て楽しもうと思ったんだけど…あるかな?」
「勿論ありますが……ユウキ様が自ら作ればよろしかったのでは?」
「え?アンタ作れたの?」
「それはそうだけど…それじゃつまんないだろ?折角のデートだし現地で買った方がいいだろ?」
「ま、まぁ…そうかもしれないけど…」
「んじゃ、リュートさん!一華に似合うとびきり可愛いのをよろしく」
「任せてください!さぁ、一華様此方に…ユウキ様も適当に好きなのをお選びくださいね」
「ありがとう。それじゃ一華着替えたら呼んでくれ〜」
「わ、わかったわ!」
俺は適当に店内を物色して、気に入ったのを手に取り着替える。
さてと…一華のこと待ちますかねぇ〜
〜〜side一華〜〜
「では、此方を…着替えは私の妻が手伝いますので」
「よろしくお願いします」
私は言われるがまま衣装室へと入り、ペリドットの民族衣装であるとても繊細な衣装を着させて貰う。
……最初はせっかく気合入れたのにっ!と思ったけど、アイツが申し訳なさそうに言ってくるのもあって許してあげる事にした。
そ、それに…素直にアイツの気持ちが嬉しかったし…
私がオシャレ好きなのを知っていて、こういうプランを立ててくれた事も私のことを考えてくれてる感じがして良かった。
で、でもよ?そ、それにしても恋人繋ぎはやりすぎじゃないかしら!?
だって私たちまだ恋人じゃないのよ……?
あれ…?今私……はぅ…
この時私は自分が"まだ"と言ってる事に気付き、一人で顔を真っ赤にしていた。
着付けをしているせいで目の前に姿見があり、その様相が有り有りとわかるのが辛かった。
「……?どうかなさいました?苦しかったでしょうか…」
「い、いえ!大丈夫です!そ、その…この衣装可愛いですね」
「ふふっ、ありがとうございます。一華様にも良くお似合いですよ?それに、この衣装には別の意味が込められているのです」
「別の意味?」
気になった私は好奇心からその意味を知ろうと思い、奥さんに聞き返してしまった。
「えぇ…その衣装は女性が男性に求婚する時のものです。一華様はユウキ様の事をお好きなんですよね?」
「きゅ、求婚!?そ、それよりもど、どうしてそれを!?」
「ふふっ…見てればわかりますよ?きっと気付いていないのはユウキ様くらいです。なので、一華様からビシッと行かないと!と思い僭越ながら気持ちの面でお手伝いさせてもらえればと思い、この衣装に致しました」
「はわ、はわわわ……」
ま、まさかみんな気付いてたの!?
で、でも!誰も何も言ってこなかったはず……
この時の私は混乱していたからわからなかったけど、よくよく思い返してみれば時々、双葉やフェイトが私とアイツを二人きりにしようと画策しているようだった。
「はい、お終いですよ。それじゃ頑張ってくださいね」
「はぅ…が、頑張りますぅ…」
うぅ…照れてる時の双葉みたいになっちゃった。
で、でも仕方ないじゃない!
こ、これからアイツにこ、告白ッ!!する事を考えただけで顔が熱くなる。
「おっ、着替え終わったのか…?うん、可愛いな一華。とてもよく似合ってるぞ?」
「きゃわッ!!あ、ありがとう……そ、その…アンタもよく似合ってるわよ…?か、カッコいい」
「ははっ!ありがとな!それじゃリュートさん、これでいいかな?」
「あれ?渡すのはお金じゃないの?」
私は西音寺が取り出したものを見て首を傾げる。
「あぁ、この国では通貨は無いんだよ。他の国との交流なんてないし、物々交換が基本なんだ」
「えぇ、そうなのですよ?それに、ユウキ様から頂いた此方の素材は全て染色料…ペリドットでは取れない貴重な物なので、むしろ貰い過ぎなんですがね…」
「俺は使わないからさ…それに一華をこんなに可愛く着飾ってもらったんだから、これじゃ足りないかな?ってくらいさ」
もおっ!!なんでコイツって一々こんなかっこいい事言うのよ!!
ぜ、絶対に私の反応見て楽しんでるわね…
そう思い私は、西音寺の事をじっと見つめる。
すると……
「ん?どうした一華?俺の顔に何かついてるか?」
「……何でもないわよ!それより次はどこに行くのよ」
見つめて損した!コイツ本心で言ってるのね……うぅ、恥ずかしい……
その後も私は西音寺にエスコートしてもらい、色々なお店を回った。
そして、いつの間にか時刻は夕方……
もう帰るのね…あっという間だったわ…
「あっ、そうだ一華?最後に見せたいものがあるんだけどいいか?」
「なによ?どこにでも着いてくわよ」
まだこの楽しい時間を延長できるとわかった私は、迷わずに西音寺の意見に頷いた。
「それじゃ、ちょっと失礼して」
「きゃあッ!?って、な、何するのよ!こ、こここここれって!?お、お姫様ッ!!?」
「ん?いや、今から飛ぶからしっかり捕まってろよ?」
急にお姫様抱っこをされた私は、きっと顔が真っ赤だと思う。
それに至近距離からコイツの顔を見ると余計に顔が熱くなる。
……待って、今コイツ飛ぶとか言わなかったかしら?
「ま、待ちなさ……」
「フライアウェーイって何か言ったか?」
誰にも言ってないけど私は高い所が地味に苦手なのよね………
でも、憎たらしい程にコイツの腕の中に抱かれていると安心できる。
「一華、向こう見てみなよ。星が綺麗だぞ?」
「…えぇ、本当ね……とても綺麗だわ」
西音寺が見つめている方を私も見る。
そこには、満点の星空が広がっていた。
さっきまで夕方だったはずなのに…どうして星空が?と思ったが、なんだろう?この星動いてるような…?
「ねぇ、これどう言う事?夕日は沈んでるけど…まだこんな星が見えるほど暗くなってないし……それに、あの星動いてない?」
「よく気付いたな?あれは星じゃなくて、世界でペリドットにしか生息していない昆虫だよ。名前を星爛虫って言うんだ。年に一度しか見れない希少な光景なんだぞ?」
「…この世界って本当に不思議ね」
私は空に瞬くのが昆虫だと知り驚くとともに、この世界は地球とは違うんだなと再認識した。
「……だな。でも、地球とは違ってもさ、人と人の繋がりはどこの世界でも変わらない。俺は仲間達がいて本当に良かったと思う。勿論一華もな?」
「本当かしら?でも、そうね……私もアンタがこの世界に居てくれて良かったと思うわ」
「…俺がか?」
「そうよ?だって私の好きな人だから」
「……?一華さん?今なんて……?」
「だから、私の好きな人って言ったのよ!何度も言わせないでよ恥ずかしいんだから!」
勢いに任せて私は自分の恋心を西音寺に伝える。
「その…それはすまない。でも、いつから…俺はずっと一華に嫌われてると思ってたんだけど」
「……それは、そのぉ…一緒に過ごすうちにって言うか……小さい頃からと言うか……と、とにかく!私はアンタのことが好き!いいわね!?」
「は、はい!!そ、それで返事をすればよろしいのでしょうか!?」
「期待はしてないから……ハッキリと断ってくれた方が清々するわね」
そう言いながらも私の目には涙が浮かぶ。
うぅ……日頃から素直になれない私はきっと嫌われてるはず…そんな奴が告白したって断られるに決まってるのに……何で告白なんてしちゃったのかしら…
明日から気まずくなるくらいなら、今まで通りの関係で良かったのに……
私は西音寺の顔を見れなくなり、ぎゅっと目を瞑る。
その時、溜まっていた涙が頬を伝うが西音寺に空中で抱きついてるため、涙は拭えなかった。
すると……
「なるほどな…双葉が言ってたのはこの事か……」
西音寺が何かを言いながら私の涙を拭ってくれる。
「一華、お前は俺が一華の事を嫌ってると思ってるかもしれないが、絶対にそんなことはないぞ?それに嫌ってる奴のことをわざわざ大切な仲間なんて言わないだろ?」
私は返事をせずに恐る恐る目を開く。
するとそこには、私に優しく微笑んでくれている西音寺の顔があった。
「一華、よく聞いてくれよ?俺も君の事が好きだ。何でも気軽に言い合える一華といるのが楽しくて仕方ないんだ。だから、遅くなったけど…これからもずっと俺と他愛無い話をしてくれないかな?」
「……私の事好き、なの?」
「そう言っただろ?さっきの仕返しか?」
私は違うと言う気持ちを込めて顔を横に振る。
なんだろう。
嬉しいはずなのに涙が溢れてくる。
「おいおい、泣くなよ…」
「ご、ごめんなさい…嬉しいのに涙が止まらなくて…」
今日勇気を出してよかった。
こんな空の上で告白する事になるとは思ってなかったけど…
でも、そのおかげで西音寺の顔をこんな至近距離から見てられる。
「なぁ?一華、お願いがあるんだけど」
「な、何かしら?今なら何でも聞いてあげるわよ?」
「ははっ、そしたらさ…俺の事はみんなみたいに名前で呼んでほしいかなって」
「あっ……そ、そうね!もう恋人なんだもの!それが当たり前よね!」
私は確かに西音寺とかアンタとかコイツとか一歩線を引いた呼び方をしていた。
「……その、ユウキ?」
「…なんか照れ臭いな。なんだ一華?」
「私のお願いも聞いてもらえないかしら…?」
「ん?どうした?」
私は一度深く息を吸い、恐る恐る言葉にする。
「その…双葉にした事を私にもして欲しいなって…」
「なんだ、勿論いいぞ?では、遠慮なく」
「ちょっ!?早ッ……ふむっ……」
何の遠慮もなく私の口を塞いで来たユウキに文句を言ってやりたい。
……嘘です冗談です。
本当はすごく嬉しい……
「……あっ」
すぅっと顔を離すユウキに私は、もうお終い?と思い思わず口から息が漏れてしまった。
「なんだ、一華って意外と甘えん坊なのな?」
「そ、そんな事ないわよ!!ゆ、ユウキだけになんだからっ!」
「……一華って本当ブレないなぁ…んじゃ、もう少しだけ」
「……うん」
次の更新は本日の0時頃になります。
次の話で一応この章は終わりになります!
活動報告見てる方がいるかわかりませんが、次は魔族領編になります!




