第187話 恋人達との日常 6
双葉回2話目です!
「こっちなの?」
「あぁ、この林道を抜けた先だよ」
雲一つない快晴…
上を見上げると夏の日差しが木々の葉に遮られ、キラキラと反射している。
そんな林道を双葉と寄り添いながら歩く。
次第に視界が開けて来て、林の先から差し込んでくる光に双葉が目を細め…そして…
「うわぁ!うちの庭にこんな所があったんだね!」
目の前に広がっていたのは、少し小高い丘のような所に一本だけ生える巨木…
イメージとしては地球で言うハワイにある、CMで有名な巨木だな。
「あの下でお昼にしよっか?」
「そうだね…うぅ、緊張するなぁ…」
そう言いながらこの前仲間達にプレゼントしたそれぞれの誕生日石が嵌め込まれた指輪がキラリと光る。
その指輪の名は幻想の指輪…
俺の力によって亜空間収納が付与され、更には魔力なんかを蓄積しておけたり、疲労回復効果なんかも付与してある。
他の子達にも同じ内容のリングを渡した為、ミスティやリリアやローズとルビーに上げたアクセサリーの力も全てこの指輪に移し替えた。
「お、おぉ……結構デカいね…」
「え、えへへ…気合入れて作りすぎちゃって……」
双葉が取り出したのは、遠足なんかでよく見かけるお重…それが3段重なったものだ。
二人で3段はやりすぎでは?と思うが、大切な恋人が作ってくれた愛妻弁当にケチをつけるつもりもない為、素直に嬉しい。
「ありがとう!俺の為に朝早くから作ってくれて……早く食べよう」
「う、うん!あっ、私シートも持って来たんだった」
再び指輪が光り、その場に布製の敷物が広がった。
これは確かフェイトが暇な時に裁縫スキルで作っていたやつかな…?綺麗なデザインだなぁ…
「フェイトさんから使ってって言われて持って来たんだけど…綺麗すぎてちょっと使いづらいね…」
「はははっ!気持ちはわかるけど使ってあげないとフェイトが悲しむさ!遠慮なく上がらせてもらって後でお礼を言っとくよ」
俺は率先して靴を脱ぎ敷物の上へと上がる。
それに続くように双葉も座り、お重を広げてくれている。
「双葉は何飲む?」
「あっ、うーんと…緑茶がいいな!おにぎりだし」
「あっ、おにぎりなんだ?そしたら俺も緑茶だな!」
お茶を準備して、双葉の手元を覗き込む。
「ど、どうぞ…召し上がれ?」
「おっ、おぉ!美味しそうだね!」
一つ目のお重におにぎりが三列並び、二つ目には唐揚げ、卵焼きなどの定番物から、俺の好物であるささみとチーズの揚げ物も入ってる!
普通に美味そうだわ……確か元の世界で薔薇園家では、料理は双葉の担当だったらしいからなぁ…
こう……家庭的な子って素晴らしいよね?
前にローズ宅で振舞われたリリアのハンバーグ?は一瞬天に登ってたからなぁ……
リアルに昇天するかと思ったわ。
「!?ゆ、ユウキくん?!な、なんで泣いてるの!?そ、そんなに不味そうだった…?」
「いや、違うんだ!!やっと恋人のちゃんとした手料理が食べられるんだと思ったら感動して……」
ローズの手料理は何度か食べさせてもらったけど、この世界の料理だからなんか違かったんだよね…
双葉は俺と同じ国で育ってたから作る物も俺と同じ感じだし…うん、凄くいい。
そして、3段目は野菜中心の料理が並んでいた。どれもこれも普通に美味しそうだな…
「あっ、おにぎりはユウキくんの好きな具にしてあるよ!左から梅、ツナマヨ、筋子って順」
「おぉ!よく俺の好きなおにぎりの具知ってたね!」
「そ、そのぉ…お昼休みも隙を見てユウキくんのこと観察してたから…」
「……そ、そうか!とりあえず一番好きな梅干しから…いただきます!はむっ!」
くぅーーっ!この酸っぱさが堪らん!
俺ははちみつ梅も好きだがおばあちゃんの漬けた酸っぱ目の梅干しが好きだった。
「双葉…これ、自分で漬けてるの?」
「そうだよ?ユウキくんの好きな物をなるべく手作りしたくて…えへへ、頑張っちゃった」
最高かよ。
自分で言うのもなんだけど、こんな素敵な子が俺の彼女で良いのか?
「ありがとう双葉…今言う事じゃないかもだけど…君と恋人になれて本当によかったよ…」
「も、もう!ユウキくん大袈裟だよ?……で、でも…喜んでもらえると私も嬉しいな」
にへら…と口角を下げて笑う双葉が可愛すぎて今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが、食事中の為なんとか自制する。
この後も全部が全部俺好みの味付けにされていて、凄く素敵な食事になりました。
味の感想を言うたびに恥ずかしそうに照れ笑う双葉が最高のスパイスでした。
「ふわぁ…美味しいご飯を食べて、こう天気が良いと眠くなるなぁ…」
「そうだねぇ…ユウキくんのおかげで暑くないし…」
俺が屋敷を覆ってる結界には自動温度調節機能も備えてるからな…
「この後どうする?庭の案内の続きをしようか?」
「うーん、それも良いんだけど…そ、そのユウキくんさえ嫌じゃなければしてあげたいことがあるんだけど……」
ん?なんだろ?俺が双葉にされて嫌なことなんて思いつかないが……
「因みにどんな事?」
「そ、その…膝枕したいなって……だめ、かな…?」
「素晴らしい提案だよ双葉くん…夢のシチュエーション過ぎて変な口調になってしまった…」
「そ、それじゃ…はいっ!」
自分の膝を叩いてどうぞ!してくる双葉に俺は唾をごくりと飲み込む。
「し、失礼しま〜す」
俺は少しきょどりながら双葉の太腿に頭を付ける。
「こ、これは!?」
「ふわっ!?な、何!?」
「いや、気持ちいいなって思っただけです」
「はぁ〜、もう驚かせないでよ!めっ!だよ?」
子供を叱りつけるように頬を膨らませて、めっ!してくる双葉がめっちゃ可愛い。
さっきから俺語彙力を失ったかの如く、可愛いしか言ってないけど可愛いんだから仕方ないよな?
「あ、あの…」
「どしたー?」
俺は陽気の心地よさと、膝枕の心地よさのダブルパンチにより夢心地だった為、気の抜けた返事を返す。
「頭撫でても良いかな…?」
「どうぞご自由に…」
「で、では失礼します…ふわぁ…やっぱサラサラだぁ…」
子供をあやすように俺の頭を撫でてくる双葉に、俺は記憶から失われてしまった母親を思う。
(俺の母さんもこんな風に俺の事を撫でてくれてたのかな…)
この世界に来て張り詰めていた神経が徐々に解かれていくような………。
〜〜side双葉〜〜
「……寝ちゃった?」
「すぅ…すぅ…」
私の膝の上…そこで私の大好きな人が寝息を立てていた。
「ふふっ…ユウキくんの寝顔可愛いなぁ…脳裏に焼き付けておかなくちゃ…」
私はユウキくんが寝ているのを良いことに、その寝顔をじっくりと堪能する。
いつも私の事を助けてくれるカッコいいユウキくんの無防備な姿に、私は自然とニヤけてしまう。
「うぅ……我慢だよ双葉!」
そう言いながらも私の視線は、ユウキくんのお顔の一部分に集中していた。
「……ちょっとぐらいならいいかな?で、でもユウキくんにバレたら幻滅されちゃうかも…で、でもでも!リリアさんが自慢げにこの前話してたし…うぅ……私はどうしたらいいの」
そう、私はユウキくんの唇を見ている。
見ているなんて生やさしい表現では無く、ガン見していた。
これも全て昨日リリアさんに、「むふふ〜、デートの時に、ユウキさんにキスしてもらっちゃいました♡幸せ〜」とか言われたから!
その後に、双葉さんも頑張ってくださいね?と応援されてしまったからには、何かしらユウキくんと恋人らしい事をしたいと思って、膝枕を提案したんだけど……
それからどれくらいの時間が経ったのだろう……
うじうじと意気地無しな私は、一人で葛藤していた。
「……ボソっ……私もユウキくんとキスしたいな…」
思わず口をついて出てしまった言葉に、ハッとなる私……聞かれてないよね?と思いユウキくんの顔を覗き込むと……
なんか目が合った。
………あれ?
「なんだ双葉、言ってくれればキスぐらいするぞ?双葉が言ってくれたから遠慮なく」
「ふぇっ!?ま、まだ心の準備が……んっ♡」
心の準備が!とか言っておきながら直ぐに目を瞑り、唇を差し出した私は悪い女なのかな……?
でも……後悔はしてないよ?
えへへ…
だってキスってこんな幸せな気持ちになれるんだもん♪
……これからはもっとおねだりしてもいいよね?
次の更新は明日の正午頃になります!
明日はこの前休んだ分2話更新します〜!
予定では、ひまり→一華で終わる予定……
2話で終わらせる為、1話1話が長くなる恐れがありますがよろしくお願いします!




