第186話 恋人達との日常 5
と言うことで次の日…
「双葉〜準備はいいのかー?」
「うん!もう大丈夫だよ〜」
「そっか、そんじゃ留守を頼んだよみんな」
「はいはい、さっさといきなさい!」
一華に転移門へとぐいぐいと押し込まれ、それを双葉が苦笑いしながら着いてくる。
「何かあったら直ぐ念話しろよ!!」
「みんな行ってきますー!」
「よっと、双葉大丈夫か?」
「う、うん…ごめんね。ちょっとよろけちゃって…」
「気にすんなって、とりあえず異常は無さそうだな……ちゃんと認識阻害の魔法は発動してるようだな」
俺たちが暫くの間家を開ける為、人がいるように見せかけるように結界を張った。
それがきちんと発動している事を確認した俺は、フェイトに頼まれていたポストの中身を亜空間へとしまい、双葉の手を取り庭へと入り込む。
「ふわぁ…すごいね…この虹色のお花はなんていうの?」
「あー、それは虹花という幻の花だよ?確か世界中で発見された虹花は、数千年も前の資料でしか確認できないらしいぞ」
「へぇ〜凄いお花なんだね…」
「……えっ、もっと驚くと思ったんだけど…反応薄くない?」
もっとこう、えっ!?なんでそんな花が!?みたいな反応を期待したんだけど…
俺の予想とは裏腹に、双葉は普通に虹花を愛でている。
「え、だってユウキくんだし…それぐらい普通でしょ?」
「いやいや、こんな普通ないからね!?世界でここだけしか咲いてないんだよ!?もっと驚くべきだよ双葉!」
「で、でもね?ユウキくんは凄い人だから…それぐらい当たり前のことに思えちゃって……わ、わぁ〜!す、凄いびっくりしたなぁ〜」
「……いや、いいんだ双葉。気にしないでくれ…こうなったのも全部俺が飛び抜けてぶっ飛んでるからなんだって自覚してるから…」
俺がしょんぼりしてるのを悟ったのか、無理やり驚いたふりをしてくれる双葉に俺は居た堪れない気持ちになった。
くっそー!俺の馬鹿野郎!!もっと普通で居られないのか!?
「因みになんだけど、俺が普通のことをしてたらどう思う?」
「えっ……………って、感じかな」
「よく分かりました…普通への道は険しいようだな」
この後もゆっくりと庭を散歩して歩いた俺たちは、フェイトとも来た精霊の泉(フェイト命名)にやって来ていた。
小一時間程度歩いていた為休憩がてら精霊の子供達と戯れている。
「ふふっ……可愛いね。それにそれぞれに色がついてるのは…属性なのかな?」
「その通りだな。俺もまだ研究段階だから詳しい事はわかってないんだけど……この前よりも少し大きくなってるから、そのうち自我を持つようになるんじゃないか?」
精霊の子の色はそれぞれ違う。
例えば……
赤い子は火
青い子は水
緑の子は風
ってな感じなのだが……
中には色の薄い個体も居る。
多分だが、薄い青の子は氷とかかな?
成長してみない分にはわからないが…強ち間違えではないと思う。
「確かこの子達が成長すると、その子のイメージに合わせた姿を取るんだよね?」
「おっ、よく勉強してるな」
「えへへ、アメジスティアにいた頃に宰相さんから聞いたんだよ?私は無属性魔法だから、属性魔法を使うために精霊と契約するといいんじゃないかって」
「そのアドバイスは的確だろうな…俺も自分が無属性魔法の使い手だったらそうしてただろうし……純粋に自分の撃てる手数が増える事は、戦いの場において有利に事を進めるためには必要な事だからな」
双葉は勤勉だからエル宰相の話してた事をしっかりと覚えていたのだろう。
だが、双葉は精霊と契約してないはず……まぁ、今となっては女神の使徒になってるから戦力的には充分とも言えるが…
「なんで双葉は精霊と契約しなかったんだ?エル宰相が言ってたって事は、何人かは解約してる奴らが居たんじゃないか?」
「…うん、クラスの子達は精霊と契約する子もいたよ。でも、私はその時は槍捌きを完璧にしたくて…他の事にかまけてられなかったんだぁ…」
なるほどね……確かに双葉は槍の扱いは俺が教える前から形になっていた。
性格的に騎士団員に教えを乞う事は無いだろうし、必死に人の技を見て努力したのだろう。
あれ?そういえば……
「ふと思ったんだけど…双葉の槍捌きってマリアさんの使徒になる前から、西音寺流に似てる技あったよね?あれはどこで知ったんだ?」
「あぅ……えっと、それはね……日本にいた頃に…ユウキくんが山に行くのを見て、着いて行ったことがあって……」
「えっ?つ、つまり双葉は俺に気付かれないように着いてきていたって事…だよな?」
えぇ、割とショック……日本にいた頃だって普通に気配感知は得意だったし……特に山の中だといつ何処から熊が襲ってくるかわからないから、気を張り巡らせていたはずなのに……
「そ、そんなストーカーみたいな事はしたないからね!?こ、こっそりユウキくんが熊と戦ってるところを見てて……そこで木の槍を使ってたのを見たんだぁ〜えへへ、あの時のユウキくん…カッコ良かったなぁ」
「お、おぉ……そうだったんだ…だけどよく俺に気取られなかったな?」
俺がこう言った瞬間、あからさまにしゅん…と肩を落とす双葉に俺は戸惑う。
「ど、どうした?何か変なこと言ったかな俺…」
「……私、昔から影が薄くて……学校でもずっとユウキくんの事見てたのに、一回も目があった事無いなって思って…」
わ、わぁ〜思いっきり俺のせいやんけ〜!!
言い訳すると高校へと通っていた頃の俺は、女子と関わり合おうという気がなかった為、脳内で勝手に居ないものとして扱ってたんだよなぁ…
その中で無理やりパーソナルスペースに突っ込んで来た紅葉は今考えてみれば凄いよなぁ…
あいつこそ真の勇者だよ。うん…
所変わって、遠く離れたアメジスティア城で魔法の訓練に精を出していた噂の紅葉さんはというと…
「ハァックション!!!ううん?誰か私の噂でもしてるのかなー?」
「だ、大丈夫紅葉ちゃん?凄いくしゃみだったけど…」
「あっ、気にしないで雪先生!多分風邪は引いてないと思うので……」
と、特大のクシャミをして雪に心配されていたとか居ないとか……
閑話休題
「と、とりあえず理由はわかった。だが、もう精霊と契約してもいいんじゃ無いか?」
「うーん、そうかなぁ……ユウキくんのお墨付きをもらえたなら良いかなって思うんだけど、でも…肝心の精霊さんがいないから…」
その時だった
さぁーっと風が吹き抜け、双葉の髪を靡かせた時…1匹の精霊の子が一瞬だが確かに小鳥のような姿に見えた。
「んんん?今のは…?」
「えっ、どうしたの?この子……この子の色は黄色いけど…何属性なのかな?」
なるほど、双葉はちょうど目を瞑っていたから見えなかったのかな…?
これはあえていう必要もないか。
「んー、どうだろうな?双葉的には何属性に思うんだ?」
「私は……雷だと思うなぁ…」
へぇ……なるほどね。
「きっとそうかもな……さて、休憩もできたし目的の場所まで案内しますよお姫様」
「お、お姫様なんてそんな……うぅ、エスコートしてね?」
俺が姫に使える騎士の如く手を差し出す。
その手をチラチラと見ながら頬を染め、恥じらいながらも俺が伸ばした手を取り、しっかりと握りしめてくれる。
「そりゃもちろんだよ。んじゃ、行くか」
「うん♪えへへ〜ユウキくんと恋人繋ぎしちゃった……えへへ♪」
……ぎゃんかわ。
尊くて死ぬわこれ…
次の更新は明日の0時頃になります!
……あれ?余計な話してたら双葉のターンが終わらんかった……あと1話継続します




