第184話 恋人達の日常 4
あまりイチャイチャできてないかもしれません…何故こうなった?
燦然と輝き容赦なく大地を熱す真夏の太陽がキラキラと湖で反射してとても美しい。
俺は今、本日のデート相手であるローズとその娘ルビーと三人で親子デートを楽しんでいた。
「パパー!ママー!早くぅーっ!」
「あっ!こらルビー走るなって!……ったく」
「あらあら、仕方ない子ね。待ちなさいルビー!」
俺たち三人はエメラル近郊にある避暑地……クリスタリディア湖へと遊びに来ていた。
この辺り一体は比較的魔物も弱く、貴族が良く夏になると猛暑から逃れる為にこの辺りに乱立している別荘へと遊びに来るのだとか…
そのためこのシーズン中は、各国から貴族が集まる為、警備がきちんとなされている。
特にエメラルはこの湖の所有権を有しているため、冒険者ギルドに直々に依頼し、この辺り一体の警備を一任していた。
そして、その担当が漢女軍団らしく、この間偶々遭遇した化け物……もといディアンにこの場所の事を聞いたので、ルビーを連れて遊びに来てみたのだ。
「それにしても……みんな水着着てるのな…」
「そうね…私も持って来ればよかったかしら…」
この世界に水着という概念が存在している事を忘れていた俺は、普通に半袖短パンで行動している。
「パパー?水遊びしないのー?」
「うっ…そりゃ、こんな綺麗な湖に来たら泳ぐべきだよな……そしてら、一旦別荘に戻って着替えてくるか!」
「わーい♪パパ早く行こー!置いてくよー!」
「ちょっ!?ろ、ローズ!ルビーの事捕まえといて!!」
「あらあら、本当にはしゃいじゃって…うふふ、昨日もずっと楽しみにしてたみたいだし…仕方ないわね」
「よっと!捕まえたぞルビー?」
「きゃははっ!捕まっちゃったよー♪パパ?抱っこ」
「はいはいっと!って、もうこんな所まで戻ってたのか……それにしてもこんな綺麗な別荘をタダでもらってよかったんかな?」
「そうね…でも、いいんじゃないかしら?なんて言ったってあなたはエメラルを破滅から救った英雄なんですから」
「パパかっこいーっ!」
「あはは、ありがとうなルビー!」
俺がこの湖に行くという事をどこで知ったのか知らないが、何故か今朝王城から使用人が馬車を用意していた。
そして訳がわからないまま乗せられて、降ろされたのがこの別荘だった。
「パパ、パパ?行かないのー?」
「おっと、ごめんな?一旦着替えようか」
「そうね…まさか出かけて30分で一度戻ってくるとは思わなかったけれど」
「それは言いっこなしだぜ…って事でただいまー」
「たでまー♪」
「あれ?先輩もう帰ってきたんですか…?」
「ご主人様?忘れ物でございますか…?」
「湖に着いて思い出したんだけど、水着着てってないやってね…着替えたらまたすぐ戻るよ」
そう、この地へ来たのは何も俺たち三人だけじゃない。
仲間達全員を連れて遊びに来たのだ。
もちろん、今日は親子デートをするために湖に遊びにくるのは禁止にしてるから問題ないが…
別荘に残ってたのはフェイトとひまりの2人だけのようだな……後のメンバーは探検にでも出かけてるのだろう。
「フェイト、すまないがローズの着替えを手伝ってあげて来れないか?」
「お任せください」
「何種類か用意してあるからローズの好きなのを選ぶといいよ」
「ありがとう♪可愛いの選んであなたを悩殺してあげるわね」
「お、お手柔らかに……」
フェイトに連れられてローズが衣装室へと入っていくのを見送った俺は、ルビーにも水着を選ばせてあげる。
「ルビーも水着着ような?どれがいい?」
「んーとねー、これ!これがいいよー♪」
流石まだ幼いだけあってこういう時は自分の好きなのを速攻決めてくれる。
ルビーが選んだ水着はフリルのついたひよこ柄の水着であった。
「よし、それじゃ着替えちゃおっか?後輩も見てるなら手伝ってくれ」
「お任せください!せ、先輩は着替えないんですか……?」
「俺も着替えるけど、とりあえずルビーから先だ。俺なんてズボンを履き替えれば終わりだから」
「わかりました!ルビーちゃんのお着替えが終わったら、先輩のお着替えを手伝えばいいんですね!」
「そうそう……って、え?なんか今変なこと言わんかった?」
「空耳では?それよりもモタモタしてるとローズさん来ちゃいますよ先輩!」
何かを誤魔化すように俺を急かしてくる後輩に訝しげな目を向けつつ、言われた通りにルビーの着替えを終わらせる。
「「………ぎゃんかわ」」
「へへへ〜♪ルビー可愛いー?」
「「可愛い通り越して天使」」
俺と後輩は一言一句同じ言葉を口にしていた。
「んーーーっ!!可愛すぎる!!先輩!?ローズさんくるまで抱きしめてていいですか!?」
「……俺はいいけど、ルビーはいい?」
「んーー、いいよー♪ひまりお姉ちゃんのぎゅーっすきー♪」
「ぶっふぉっ!!は、鼻血が……止血してくださいふぇんふぁい…」
「アホか……ヒール」
「ふぅ、ありがとうございます!では、ルビーちゃん……お覚悟を!!」
「きゃははっ!!もーーっ!くすぐったいよー♪」
後輩とルビーが戯れあってるのを横目に、俺はしれっと水着へと完装し、準備を終える。
「お待たせ。って何をしてるのかしら…?」
「おっと、早かったな?なんかひまりのやつがルビーが可愛すぎて興奮してるみたいだぞ…気持ちはわかるけどな」
予想以上に早く来たローズは、パーカーを羽織って水着が見えないようにカバーしていた。
「……あなた?足ばっか見ないで欲しいのだけど…」
「ご、ごめん!!スラーっとして白くて綺麗だったからつい……決してやましい気持ちがあったとかじゃないからな?」
「……別にあっても良いのだけどね。まぁ、それはまた今度でいいわね…今はデートを楽しみましょ」
「……そ、そうだな!ほら、ルビー行くぞー!ひまりもフェイトと留守番頼んだぞ!」
「はーい♪ひまりお姉ちゃんまた後で遊んであげるねー♪」
「ぐっ…私が遊ばれてる立場になってる!?ま、まぁいいです。行ってらっしゃい!」
「ご主人様、ローズ様、ルビー様行ってらっしゃいませ」
別荘を出た俺たちは、テンションが爆上がりしてるルビーを追いかけるように小走りしたので直ぐに湖へと到着した。
「パパ!ママ!はーやーくー♪」
「ルビー待ちなさい!こ、これじゃゆっくりユウキくんに水着を披露する暇もないわね…」
「あ、あはは…仕方ないね…でもローズは良かったのか?2人きりとかじゃなくて」
俺はデートの日程が決まった時から疑問に思っていた事を口にする。
するとローズは優しい笑みを浮かべてルビーを見つめ、徐に口を開く。
「うふふ、もちろん本当は2人きりでも行きたいわよ?でもね、それよりもあの子のこうして楽しそうな姿を見れることの方が、私にとっては何よりも幸せなことなのよ?」
「…そっか、俺もルビーの笑顔を見てると疲れが吹っ飛ぶからなぁ…」
「でしょう?それに、ここ最近はゆったりとした時間も取れてなかったし、ルビーも誰かさんの影響を受けたせいか訓練ばかりだったもの。こうして子どもらしい無邪気な姿を見てると安心するのよ」
「なんかすまん………でも、たまにはローズと2人で出かける日も作らないとな…我慢は良くないぞ?」
「……バレた?うふふ、本当は綺麗事を並べてるけどあなたと2人で過ごせる時間って中々作れないからね…絶対2人でデートしましょうね?約束よ?」
「もちろんだ」
「パパー!ママー!何してるのーっ!早くしないとダメって言ってるでしょーっ!」
ぷんすか怒ってますアピールしてくる愛娘に、俺とローズは目を合わせて、ぷっと吹き出してしまう。
「わかったわかった!今行くよ!」
「本当我が子ながら可愛いわね…」
そう言いながら俺とローズは羽織っていた服を用意していたパラソルの下へと脱ぎ捨て、愛すべき我が子の元へと馳せ参じる。
その間にチラッとローズを見ると、大人っぽいセクシーな黒いビキニを身に付けていた。
もちろん似合ってるが、なんていうんだろう……他の男性客の視線も釘付けになってるのがムカつくな……とりあえず威嚇しとくか。
そう思い俺は一瞬殺気を男だけに反応するようにして飛ばす。
「………?あなた?今何かした?」
「ん、あぁ……ローズの水着姿を他の男がじーっと見てたからな、殺気を飛ばして威嚇しといたんだ」
「…もう、だめよそんなことしたら……」
「いや、だってこんな可愛いローズの姿を他の男なんかに見せたくないだろ?俺だけ見れればいいんだよ」
「……本当ユウキくんって急にズルいわよね」
「え?何が?」
急に赤くなってそっぽを向いてしまったローズに、俺は首を傾げつつルビーの元へと辿り着く。
「もおーっ!2人とも遅いよー?あっ、ママすっごい可愛いねー♪」
「うふふ、ありがとうルビー?あなたもとっても可愛らしいわよ?」
「本当にローズもルビーも可愛いから困るんだよなぁ……変な虫が寄ってこないように魔法使っとくか…」
「あなた…」
「パパ…」
何故か2人から呆れられてしまったが、邪魔が入っても面白くない。
背に腹は変えられないのだ。
「よし、結界も張ったし…遊びますか!」
「わーい♪ルビーが一番乗りー♪」
バッシャッーンッ!!
「キャッ!!冷たいわね…でも、私も…」
「そんじゃ俺も入るかねーっと!」
お昼にはBBQをしたり、魔法を使って湖底を探索したりと普通の人では中々できないような事を楽しんだ。
斯くして、俺たちは湖を夕方まで満喫したのであった。
だが一つだけ気になることがあった。
それは………
……湖底であるものを発見したのだが…
しばらくはデート週間のため、これが終わったら今度みんなで探索に行ってみるか。
次の更新は明日の0時頃になります!!
やっぱ三人だとイチャイチャするの難しいですね……
今度は純粋にローズとのデートに行かなければ…




