第183話 恋人達との日常 3
賛否両論あると思いますが、作者的には重要な話。
「ただいま〜」
「戻りましたー!」
あの後俺とリリアはそれぞれの用事を済ませて、夕飯に間に合うように帰宅してきた。
もちろん今日は俺が作る暇がなかったので、ローズとフェイトが担当してくれている。
「パパおかりー♪あそぼー!」
「おっと!ルビーただいま〜遊ぶのはご飯食べてからな〜」
「ん、リリアお姉ちゃんもおかえり」
「リンちゃん!ただいまです〜お土産買って来たので早速リビングでプレゼントしちゃいますねー!」
出迎えに来てくれたルビーとリンと共にリビングへと移動すると、みんなが揃っていた。
「ユウキくんおかえりなさい。アメジスティアの復興は終わってたのかな?」
「ただいま双葉。完璧に終わってたね…エギルに捕らえた捕虜の様子を聞いて来た時にめちゃくちゃ感謝されたよ」
「でしょうね…あんたが作った魔導具のおかげで数年は余裕でかかる被害が半年も経たずに復興したんだから…」
一華がいう通り、本来なら大地は焼け…水も枯れていたあの国は、もはや国を捨てて別の場所へと建国した方がいい状態だった。
それを俺の魔導具で補う事ができたと感謝され、アメジスティア城内を歩くと使用人たちが俺に頭を下げてくるんだよなぁ…
リリアが隣で「……私王女なのに…見向きもされない…ぐすんっ…」と泣いていたのは記憶に新しい。
「あなた、もうご飯だから帰って来て早々悪いのだけど盛り付けを手伝って貰えないかしら?」
「勿論いいよ。それじゃ一華、パス!」
「ん?って、うわぁ!?いきなりルビーちゃんを転移させないでよ!!危ないでしょ!?」
「あっはっはー!パパもう一回ー!!」
「ナイスキャッチだ一華!ルビーをテーブルまで連れてっておいてくれ〜」
ぶつぶつと文句を言いながらもルビーの面倒を見てくれる一華は、意外と子守が上手なんだよなぁ…双葉の事も大切にしてるみたいだし、元々面倒見がいいんだろうな。
その後は普通に夕飯を食べ、ルビーとミスティ、モモとシロナを連れてお風呂に入り……まぁ、いつも通りリリアが乱入して来ようとしたが…概ね平和だったと言って差し支えないだろう。
「……さて、三人も寝かしつけたし…庭の改造に行くかなぁ〜」
そう思い俺は転移魔法でそっと部屋を抜け出し、普通に玄関から靴を履いて外へと出る。
すると、庭に入って直ぐの所に置いてあるベンチにリンが1人で座っていた。
「リン?1人でこんな所にいてどうした?」
「ん、お兄ちゃんを待ってた。私も一緒に行きたい」
なんだ、俺のことを待ってたのか…それなら先に言っといてくれれば幾らでも声をかけたのになぁ…
「勿論いいよ?だけど、今度からは先に言っとけよ?ほら、少し汗ばんでるじゃないか」
「ん、わかった。でも、みんなには内緒がいいの」
「みんな…?って、リリア達のこと?」
俺がこう質問すると、コクリと頷くリンの事を不思議に思い、俺は質問を続ける。
「どうした?何か相談事でもあるのか…?リリア達には話しにくい内容?」
「相談じゃない。でも、リリアお姉ちゃん達には内緒がいい」
うぅむ……最近はリンのちょっとした仕草から感情を読み取れるようになってたけど…流石に分からん。
フェイトは自ら無表情を貫いてるが、リンに至っては天然物だからなぁ…
「そっか…そしたら、丁度作業する所がリンと話すのに最適な所だからそこに向かおうか」
「私と話すのに…?ん、わかった。お兄ちゃんに着いてく」
リンの手を取り、迷路と化した庭へと足を踏み込む。
「すごい…こんな風になってたんだ」
「あー、そうか…立ち入り禁止にしてたもんな…」
朝にフェイトと散歩した時も驚かれたが、侵入者防止も兼ねて感覚を麻痺させる魔法をこの庭全体に仕掛けている。
そのため俺が同伴してない時にこの庭を歩き回るのを禁止しているのだ。
「ん、方向感覚がわからなくなる。魔法?」
「そうだよ。一応この庭には幻惑魔法を掛けてあるんだ。悪い人が入り込まないようにね」
俺とリンは目的地に着くまでの間、他愛無い会話を楽しんでいた。
最近だと…リンが1人で俺の部屋に来て、色んな話をしてくれるようになった。
心を開いてくれてる証拠だと嬉しいんだけど…
「っと、もう少しで着くからここから先はリンは目を瞑ってて?」
「ん、わかった。でもどうして?」
「んー、なんて言うのかなぁ…ちょっとしたサプライズがあるんだよね…」
「ん、それなら言う通りにする。これでいい?」
「オッケー、それじゃ俺の手をしっかり握っててな?」
「ん!」
ぎゅっとまだまだ小さな手で力一杯俺の手を握りしめてくるリンに、微笑ましさを感じながら、俺は歩みを進める。
「よし、目を開いていいよ」
「ん!………ここ、は…?」
リンの視線の先…
そこに広がる光景はきっとリンにとってすごく思い出が詰まった光景だろう。
「ここは神獣の森…リンと出会った場所をモチーフにした場所なんだ」
俺の言葉を聞きながら、一歩…また一歩とあるものへと向けて歩いて行くリンの後ろをゆっくりと着いて行く。
「…このお家……私とお父さんが暮らしてたお家…?」
「…いいや、流石に違うかな。俺の記憶を頼りに限りなく似せて作ったリンとリンネさんのお家かな…?ほら、本物は俺の結界で神獣の森に留めてあるからね…」
「…嬉しい。でも、どうして…?」
このどうしては、きっとどうして私のためにこんな事を?って事なんだろうなぁ…
「それは勿論リンが俺の大切な家族だからだよ?リン、君は自分の心に素直になるべきだ。ずっと辛い思いを胸に秘めてるだろ?」
「…どうしてそう思ったの?」
「そりゃ、いつも俺がリリアとか双葉とかと一緒に寛いでる時に寂しげにこっちを見てたからさ…リンもみんなに甘えたいのかなって思って……って、リン?!どうしたの?!」
何故か途中から涙目で俺を睨みつけてくるリンに、俺はめちゃくちゃ焦る。
「……違う」
「ち、違う!?な、何が違うの…?」
甘えたいってのが子供っぽくて嫌だったとかか……?俺はそう思い口に出し掛けた所でリンが何か言おうとしてるのを察して留まる。
「…私は、お兄ちゃんに甘えたい。リリアお姉ちゃん達じゃなくて、お兄ちゃんだけに甘えたい」
「そ、それはすごく嬉しいけど…」
「それに…私もリリアお姉ちゃん達と一緒がいい」
「…?一緒って…いつも一緒にいるだろ?」
俺が疑問を口にすると、ふるふると首を横に振り俺にしがみついてくる。
「…お姉ちゃん達はお兄ちゃんの恋人。でも、私は違う…それが嫌。私も一緒がいい」
「ッ!?そ、それってつまり……リンも俺と……?」
自分でもまさか有り得ないよな?と思って確認のために口に出したのだが……
「そう、お兄ちゃんとけっ……結婚したいっ……うぅ…」
「!?!?」
まさかの事態に俺は史上最高にテンパってる。
青天の霹靂とはまさにこの事…
まさか妹に告白されるなんて!?って一瞬思ったけど、別にリンは妹ではなかったわ…
ただ、妹が居たらこんな感じかな〜とついつい妹のように扱ってただけだ。
「妹じゃ嫌。私もお兄ちゃんの事好き」
「……それは妹としてではなく?」
「ん、そもそも妹じゃないもん」
「カハッ!?可愛すぎて死ぬ。いや、寧ろ今までごめんなさい」
急にもん!はキツい…可愛すぎて一瞬イブの顔が見えた気がした…む、あいつの顔を思い出したら冷静になれたな。
「うーん、そうだなぁ……リリア達に昨日まで散々怒られてたからなぁ……俺個人としてはリンの事を好きを通り越して寧ろ愛してるから問題ないんだけど…」
「はぅ……恥ずかしいからダメ」
「あははっ!ごめんごめん…でも、どうすっかなぁ…話せばわかってくれるかなぁ…」
俺は昨日まで怒り狂っていたリリア達の顔を思い出して身震いする。
だが、「恥ずかしい、恥ずかしい」と手で顔を隠しながら耳をピクピクさせ、尻尾をぶんぶんと振っているリンを見ると考えるのがバカらしくなってくるな…
よし!
「とりあえずリン?中に入ってゆっくりお話ししようか?」
「はぅ!?わ、わかった。わかったから降ろす」
「ダメだ!リンが可愛すぎるのが悪い!恋人になったんだからケモ耳もふっていいよな?合法だよな?」
俺はその後1時間ほどお茶を飲みながら、デレデレしてる天使。もといリンとお茶を楽しみ、ケモ耳を満喫したのだった。
はぁ…永遠ともふれるわ……
ついついもふりすぎてしまった為に、遂には借りて来た子猫のように丸くなり、「すぅ…すう…」と眠ってしまったリンを優しく撫で、転移魔法で家に戻って来た。
そのままリンの身体を生活魔法で綺麗にし、ベッドに寝かせる。
「んんっ…お兄ちゃん……大好き」
「…ははっ、こりゃ反則ですわ。……俺も大好きだよ。おやすみ、リン」
俺はそっと部屋の扉を閉じ、自室へと戻る。
今日は何も作業が進まなかったけど、最高の一日になったな…たまにはこんな日があってもバチは当たらないよな……
もふるの日課にしようかな。
おっと、そんな事よりも俺も早く寝なきゃ…
明日はローズとルビーと出かけるんだから…
俺は自室へと戻り、ちびっこ達が寝ている俺のベッドへと静かに潜り込む。
すると途端に抱きついてくる三人衆に苦笑いしつつ毛布を掛け直してやり、俺も直ぐに眠りにつくのであった……
次の更新は明日の0時頃になります!
本当はもっと長々とイチャコラしたかった!!
作者お気に入りのリンちゃん回でした…うぅ、もっとイチャコラさせたかった。
明日天気悪いせいで頭痛が半端ないわぁ……死ぬ。




