第181話 恋人達との日常 1
本日1話目です!
「はぁ…今日からデート週間かぁ…」
俺は朝起きた瞬間から疲れ果てていた。
何故なら王城から帰宅したあの日から、丸2日ご飯中もずっとぐちぐち言われ、寝るまで延々と怒られていたのだ。そりゃ疲れるわ。
同情したのか一華はルビーとモモ、シロナのチミっ子三人衆を連れて別室に行き、メイドであるフェイトは俺の代わりに食事の片付け等をやっていてくれた。
いや待てよ?これ、俺が説教から逃げ出す理由を潰されていただけでは……?
いやいや、いくらなんでもそんな事は無いはず…
怒られているからと言って休む事は無く、もちろん昼間は色々と動いていた。
王城から帰宅した次の日、ディルクレーから正式に国民に対し表明があった。
当初色々と困惑していた国民達は、納得したのかディルクレーを励ます声の方が多かった。
まぁ、それはそうだろうな…元々のディルクレーは国民に寄り添い国政を行なって来た。それに王姫であったリーナさんも国中の人気者だったらしいしな…
そこで取り潰しになった貴族の情報や新しく大臣へと就任した者達の挨拶もあったようだ。
昨日その報告をエリン殿から聞き、俺の予想してた通りエリン殿も大臣になったとの事…いやぁ、まだ若いのに出世しちゃって…
それともう一つここ最近凝っていたのが庭の改良だ……
なんと、ディルクレーからお礼と称して俺の屋敷の周りにあった土地を全部くれたのだ。
……何故かうちの周りにゴミ貴族が溜まっていたらしい。よく考えてみたら元々この土地に住んでいた貴族の婦人も大臣と密会していたのだったな…最初はディルクレーとだと思ってたけど後々違うと判明した為忘れてたわ。
木を隠すらなら森の中とも言うし、悪事を隠すなら周りも悪どい事をしてる連中で固めてた方が都合が良かったのだろうな…
その結果、地球にいた時によく例えられていた東京ドーム2個分程の土地が俺の所有地になってしまった。
そこで俺はこれまであった貴族の屋敷を全て更地にし、俺の創造した木の苗を植えて全て森に変えた。
色々と作っていたらあっという間に2日も立ってしまった…今日も本当なら広すぎる庭の改造を施したかったが…夜にでもやるかな。
コンコンッ………
ん?
そんな事を朝から考えていると俺の部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞ〜」
「失礼致します。ご主人様…本日のご予定は?」
ドアを開けて部屋へと入って来たのはフェイトさん…主人を売った疑惑のある渦中の人物がノコノコと現れよった。
「んー、昨日決まった予定だとこの後リリアとデートなんだよね……それと一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」
「リリア様とデートですね……はい、なんでも聞いてください」
「フェイト……昨日家事を変わったのってなんでだ?」
「?それはもちろんご主人様に反省していただくダメですが何か問題が?」
「……いや、俺って一応フェイトのご主人様なんだよね?そこはほら、助けてくれたりしても良かったんじゃ無いかなって…思ったんだけど…」
なんの悪びれもせずに何か?と言いやがった!!だがしかし、俺はこれまでの教訓から女性に逆らうべからずと学んでいるのだ!
なので遠回しにクレームを入れてみたが……
「はぁ?私と言うものがありながら他の女をホイホイ引っ掛けるゴミ……ご主人様に罰を与えるのはメイドとして当然では?」
「……今、ゴミって言わなかった?」
「言ってませんよ?ゴミ…ご主人様」
いや完全に言っとるやろーーっ!!!ってツッコミを入れたいがゴミである俺にそんな度胸は無い。ただゴミである事を受け入れて生物に戻れるように努めよう……
「あっ、そうですご主人様。デートの順番って決まってるのでしょうか?」
「……一応、リリアから始まって、ローズ、リン、双葉、ひまりって感じかな…後は何故か一華とも最後に出掛けることになった」
「何故か…ですか…ふむ、相変わらずご主人様は鈍感クズ野郎なのですね…」
「もはや隠すつもりすらない罵倒をありがとうな!!それよりも何か知ってるなら教えてよ」
「いえ、それは本人から聞いた方がよろしいかと……それと、何故その中に私が含まれていないのかが疑問なのですが?」
えぇ……そこまでボロクソに言ったんだからこれくらい教えてくれよ…
「…いや、だってフェイトはメイドであって恋人じゃないだろ…?」
「確かにそうですね。どちらかと言えば私は愛人枠です」
「だろ?だから……って、違うからな!?人聞きの悪い事を言うな!」
「違うのですか?おかしいですね…リリア様達からはオッケーを貰っていたのですが…」
……聞きたくなかったそんな事実。
てかおかしくね?なんで俺じゃ無くてリリア達が俺の愛人を斡旋してるの!?
後で問い詰め…聞き出してみよう。
「と、とりあえずそれは保留としてフェイトも出掛けたい?俺は大歓迎だけど…」
「いえ、出掛けるとなるとこの家の家事をする方が居なくなってしまいますので。私は毎朝こうしてご主人様とイチャイチャできれば充分でございます♪」
おっと、どうやらこれはイチャコラタイムだったらしい…おかしいな、俺の記憶ではボロクソタイムだったんだけど…
「そっか、そしたらフェイト一緒に散歩でも行くか?まだ朝早いし誰も起きてないからなぁ…」
「よろしいのですか?朝は毎日トレーニングされてるのでは……」
「はっ?そんなの可愛いメイドさんの為なら切り捨てるわ。ほら、行くぞ!」
「きゃっ!?ご主人様何を!?」
俺は自室の窓を開け、フェイトを横抱きにして窓から飛び出す。
庭を眺められるように広めに作ったベランダから飛び降り、庭へと降り立つ。
「よっと、さて庭を散歩しようか?」
「…ご主人様?お戯れが過ぎるのでは?」
「ごめんごめん。そんな頬を膨らませないでくれ?あと、普段からそうやって感情を表に出しなよ?」
「いえ、私はメイドですので。それに……私の本当の姿を知っているのはご主人様だけと言うのがいいのです」
「……?よくわからんけど、たまにはリリア達にも笑顔を向けてやってくれ…そんじゃ行くか?」
「はい♪ご主人様が作っていたお庭を拝見するの楽しみです♪」
「まだ改良途中だからなぁ…そうだ、フェイトも希望があれば言ってくれよ?それに、今から見て回って気になるところあったら言って欲しいな」
「承知しました。個人的にはお花畑とかあると素敵だと思いますが…」
「あっ、それなら作ってあるよ?それじゃそこ目掛けて歩いてくか」
俺はそう言い、フェイトの手を握る。
「はぅっ……ご、ご主人様?手、手が…」
「ん?あっ、嫌だったかな?」
やっちゃったか?と思って手を離そうとすると、ぎゅっと力強く握り返してくれるフェイトの顔を伺うと、頬を染めながら「い、嫌じゃないです…驚いただけで……」と照れていた。
普段無表情を貫いてるフェイトのこういう普通の女の子のような表情は、正直言ってたまらんのよなぁ……
「そっか、それじゃこっちだよ」
そっから俺はフェイトと一緒に庭を歩いて回った。
「ご主人様、この木はなんて木なのですか?見た事のない種類ですが…」
「あぁ、それは桜だよ。俺が元居た世界では有名なんだ。春になると綺麗な花を咲かせるから楽しみにしておいて?」
残念ながら今の季節は夏…後半年以上は先になるが、フェイトは「楽しみです♪どんな花が咲くのでしょうか…」ととても楽しみにしてくれてるみたいだ。
「ご主人様、あそこは泉ですか…?とても神秘的な場所ですね…ふわふわと漂う…これは精霊…でしょうか…?すごく綺麗…」
「だろ?ここはローズの国、ペリドットをイメージした場所なんだ。そしてこのふわふわしてるのは精霊もどきって感じかな…この場所を創った時に一緒に生まれて来たんだよな…多分、ここから成長して精霊になるんだろう」
ふわふわとした精霊の子供がふよふよとフェイトの周りに集まって来た。
それを見て「見てくださいご主人様!可愛い…」と精霊の子供と戯れているフェイトの方が百万倍は可愛いと思う。
その後も色々と見せて周り、1時間ほど経ってようやく目的の場所へと辿り着く。いや、改めて歩いてみると広すぎねぇか?
「……ご主人様、なんと言うか…やりすぎでは?」
「やっぱそう思う…?でも、満足行くまでやりたくて…」
そこには色とりどりの花々が咲き乱れていた。
「このお花は確か冬にしか咲かないのでは…?こっちの花は春の……」
「あ、あはは…植物図鑑見て気に入った花を全て咲かせようと思った結果…改造して一年中咲くようにしちゃった…てへっ」
「てへっ…って言っても誤魔化せませんからね?でも、素敵ですね……それに、ご主人様の意図が私にはわかります。この花々は私達を表してるのではないでしょうか…?」
なんか自分の思ってる事がバレるのって恥ずかしいな…
この花畑に咲いている花達の花言葉は全て仲間達にぴったりな花達だ。
「青い花は幻想、黄色い花は努力、赤い花は思いやり、ひとまわり小さな赤い花は無邪気、白い花は親愛、2種類のオレンジの花は相愛、ピンクと白が混じり合ってる花は未来…この濃いオレンジの花が豊かな心、それでこの淡い緑色の花が…愛情だ」
「……ご主人様?順番的に私が最後だと思うのですが……何故その花言葉なのでしょうか…?」
「そんなの決まってるだろ?フェイトがみんなに愛情を持って接してるからだろ…もしかしてバレてないと思った?」
「……はい。誰にもバレてないと思っておりました…で、ですがご主人様にしかバレてないはずです。それほ自信があります」
はぁ…このメイドさんは何を言ってるのだろうか?
「いや、みんなにバレバレだぞ?よく一華がフェイトって本当にツンデレよね〜って嬉しそうにしてるぞ?」
「なっ!?い、一華には言われたく無いのですがそれは!?くっ、いい度胸ですね…後で嫌がらせをしておくことにします」
「……ほどほどにしてやれよ?」
すまん一華…
「ま、まぁ…とにかくだ!フェイト、君が俺たちを想ってくれてるのはみんなわかってる。それと同じくらいみんなも君の事が大好きだ。それだけは間違いない。だからこれからもうちの事を任せたよ?」
「はいっ!一生ご主人様のお側にいます!」
ぎゅっと俺の腕に抱きついて来たフェイトの頭を撫でてやり、この素晴らしい花達を眺める。
俺は、どうかこの花のようにみんながこれからも笑顔で過ごせるようにとの願いを込めて花を咲かせた。
戻ったらリリアとのデートか…大切な恋人を満足させられるかわからんけど……頑張りますか!
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