第178話 エメラルの過去 下
しばらく続くと言ったな!あれは嘘だ!!
といのは冗談では無いですが、暗い話を延々としてても仕方ないので切り上げました。
それで書いてて全話との話を合わせるために、一個前の話の冒頭を書き換えていますので、先にそちらをチェックしてからお読みくださると良いかと思います…
書いててこの方がいいかなって時あるよね〜。あるよね?
「えっと…ディルクレー陛下が変わられた発端だったね…私たちが学院を卒業したのと同時に即位したアイツは、学院時代に婚約していた女性と直ぐに婚姻し、翌年には子供を授かっていた」
「へぇ…奥さんいるのに他の貴族の妻を呼び出したりしてたのかアイツは…」
「…それは違う。この前取り潰しになった貴族も他の貴族達もディルクレー陛下の意向ではないんだよ」
「そうなのか…?でも、俺が聞いた話ではそうなってたが…真実は全然違うのか?」
確かハンゾンさんから聞いた話だとそういうことになっていたのだが…
「……アイツは私の学友でもあったリーナを愛していた。事実、それ以降アイツは後妻を娶らず、一生リーナだけを愛すると私の前で泣きながら誓っていた。そんな男が女性を引っ換え取っ替えするとは思えなかった私は、独自に調べ上げたんだ」
へぇ…リーナさんか…
どうやらディルクレーの嫁はリーナと言うらしい、そしてエリン殿の悲しそうな表情から読み取るに…既に他界しているのだろう。
「それで結果は?」
「……この国の大臣であるガファイ大臣の仕業であった。私はこの事実をガファイに突きつけたが権力によってねじ伏せられてしまったよ…」
「それじゃあこの国の内政が腐ってるのは…?」
「全て大臣達の仕業だ。唯一まともな大臣はホーマット大臣くらいであった」
「なるほど、それはわかったが…結局のところディルクレーは何故大臣達の犯している罪を見て見ぬ振りしてるんだ…?」
「……人質を取られてるんだよ。一人息子であるリル王子をね…」
「………そうか」
俺は悔しそうに唇を噛むエリン殿を見て、それ以上の言葉をかけられなかった。
「……話がだいぶ逸れてたけど、病魔の話に戻ろうか…」
「あぁ、そうしてもらえると助かるな。それでどの様にして病魔を乗り越えたんだ?」
「……察してはいると思うけど、リーナのおかげなんだ。彼女のユニークスキル…その効果は、自らの命を捧げる事で願いを叶える魔法。まぁ、こんなスキルを持っていた事はリーナが死んでから知ったんだけどね…」
「……リーナさんは命を代償に何を願ったんだ?」
「…彼女は優しかった。そして何よりもディルクレー陛下、そしてリル王子を愛していた彼女が望んだ願いは……ディルクレーが守るべき民を救う事。アイツの代わりに、彼女は命を賭けてこの国を守ったんだ。だが、リーナの事を知る人は、あの場にいた人達と大臣達だけ。殆どの民達は王であるディルクレーが救ってくれたと信じている」
自らの命を代償にこの国を救った英雄か……
どんな人だったのかなぁ…一眼見たかったな。
リーナさんに会えていれば俺が進むべき道を示してくれてた気がするなぁ…
この国の過去を知り、政治が腐敗してる理由も知った。
俺の取るべき行動が見えたな……
「……それでユウキ殿はどうするんだい?ディルクレー陛下を糾弾するのかな…?」
「……いいや、大臣共を放し飼いにしていた罪は重いが……一人息子を人質に取られているのなら、下手に反抗できないのもわかるからね。とりあえずこの国を正すには、大臣達の不正を全て明らかにするしかない。俺はその証拠を今からかき集めてくるよ」
「……今からかい?些か時間が足りないのでは?」
「……俺を誰だと思ってるんだ?世界を救おうとしてる俺が、たった一つの国を救えない様じゃ困るだろ?後で報告ついでに、明日の段取りを詰めに来る。貴重な話と美味しい紅茶をありがとう。それじゃ」
俺は心配そうなエリン殿に思った事をありのまま伝え、転移魔法で自室へと戻る。
1人残されたエリンは1人呟く。
「……確かにユウキ殿の言う通りだな。それでは私も英雄殿のために人肌脱がせてもらおうかな」
斯くして、俺は全ての能力をフル活用し悪事を働いていた大臣や貴族達の情報を把握する。
そしてエリンは、仲の良い貴族達へと連絡を取り、明日のパーティーへと参加する様に呼びかけて回った。
エメラルという国が生まれ変わる。その変革に立ち合わせるために…
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そして話は現在に戻る。
俺がディルクレーに投げつけた紙の束の最初の一枚、そこにはこう書かれている。
(お前の息子は俺が保護した、これからこの国を腐らせている連中を潰す。俺と敵対するフリを続けてくれ。エリン殿の友であるというお前を信じる)
この文字を読んだディルクレーは、誰にも聞こえない小さな声で、「ありがとう」と言っていた。そして、俺の要望通り尊大な態度を貫き通し、大臣達の目を誤魔化した。
そして、大臣達の懐刀である影を仕向けて無力化し、大臣達の戦力を削ると、騎士団の中に紛れ込む外道を俺に差し向け、篩にかけていたと言う訳だ……
まぁ、騎士団が一枚岩の組織じゃなかったのは予想外だったけどね…正義を志す者達はこの国の在り方に疑問を抱いていたんだろうさ…
だが、概ね予定通りことが進んでいるな…
それになかなか良いシナリオだろう?
ちなみに、俺がイライラしていたのは本当だけどな?大臣の指示に従っているとは言え、演技でもリリア達を物のように扱ったからな…
それは神が許しても俺が許さん!!
…あっ、俺って神だから神も許してないじゃん。
次の更新は明日の0時頃になると思います。
次回予告! 愚王死す!
冗談です。




