第170話 歓迎会 後編
遅くなりました!
んー、ナイフを入れる度に肉汁が溢れ出してくる…素敵ですハンバーグ先生…
まぁ、自分で作ったハンバーグなんだけどな…歓迎会なのに全員無言なんだけど…パーティーとは?
「パパ〜次はあれがいいよ〜?」
「おっ、了解。ふー、ふー、ほらあーん」
「あーむ!んむっんむっ!美味しいー!」
俺の膝の上に陣取った愛娘の指示で料理を取り分け食べさせてあげる。
普段ならリリア達がずるい!不公平だ!と騒ぎ出すのだが、どうやら俺が本気で作った料理に夢中になってるらしく、こちらの事など眼中にないらしい。
母親であるローズでさえルビーに見向きもせず目の前の料理を幸せそうに頬張っている。
……ペリドットにいた頃のローズはもっとクールな感じだったんだけどなぁ…
「?パパー、もっとちょーだい!」
「おっとごめんな」
手が止まってる事を怒られてしまった俺は、ルビーにご飯を食べさせるのに専念する。
そんな事をしてると……
「ふぇぇぇ…おぃしいよぉぉ…ぐすっ…」
と後輩が泣き出してしまった。
「…ゆっくり食べろよ?」
本人立っての希望で隣の席に座ってる後輩の頭を撫でてやり、ハンカチで涙を拭ってやる。
「しゅみません先輩…もう2度と先輩のご飯を食べれないと思ってたので…私をこの世界に呼んでくれてありがとうございますぅ…」
「大袈裟なやつだなぁ…でも、まぁ…大変だったな。コレからは俺を頼ってくれよ?」
「よしよしー♪ルビーも一緒だよー?泣かないでー?」
「あぅ…先輩…ルビーちゃんごめんなさい…」
「後輩、違うだろ?」
「うぅ…ありがとうございます…」
「どういたしましてだよ〜♪あっ、パパ!次はあれ食べたい〜♪」
「はいはい」
ルビーのおかげで後輩も泣き止んだし…どうやらもう大丈夫そうだな。
ただ、一つ気になるのは…
後輩が泣いてるのにも関わらず、気付かずに料理を堪能してた面々だ…君達ちょっと視野狭すぎやしないか?
その後、全ての料理を平らげたみんなの前にデザートを出してあげて、俺は緑茶を飲みながら一息つく。コレが無いと俺は今頃死んでいたかもと思えるくらい緑茶が好きなのだ。
「ふぅ…いやぁ、相変わらず西音寺の作った飯は美味いな!おかげで食べ過ぎた…もう動けねぇ…」
「同じく…お腹が苦しいよぉ…」
ソラと紅葉はお腹をさすりながらソファーに沈み込んでいた。くつろぎ過ぎかよ…いいけどさぁ…
「ゆうちゃんごちそうさまー!本当においしかったよ?日本にいた頃よりも腕あげたんじゃ無い?」
「いや、そんなに変わらないよ?でも、食材がこっちの方がやっぱ良いのが多いんだよね…と言っても白米は勿論日本の米を創り上げてるんだけどね…広い庭も手に入ったし、暇を見つけて自分で1から育てようと思ってるんだけどな。
勿論隠居生活をする前にスローライフを目指して、魔神族をぶちのめさなくちゃならんけど…
「てか、魔神族を倒したら俺たちの役目終了じゃん?やる事その後ないよな?」
「あー、なんか国王が言ってたなぁ…魔神族を倒せば女神様から選択を促されるらしいぞ?」
「選択?何の事だ?」
ここに来て新情報かぁ…
「いや、この世界に残るか元の世界に帰るか選択できるらしいぞ?」
「マジで?そんなの聞いてないぞ…まぁ、俺に選択肢は無いけどな」
「え?何で?ユウキくんは元の世界には帰りたく無いの?」
「いや、帰りたい帰りたく無いじゃなくて、俺ってこの世界の神様になったから、他の世界に渡ることが出来なくなったらしいぞ?」
「「「「は?」」」」
「いや、だから俺が神になったから日本に帰れないって言ったんだけど」
「ちょっと待ってください!ユウキ先輩って神様だったんですか!?」
「一体いつからなの?!お姉ちゃんに教えなさい!」
「えぇ…つい最近だと思うぞ?後輩を救おうと試行錯誤してる時に至ったらしい」
「「「「えぇ…」」」」
なんか俺のこと見ながらゲンナリしてるんだけど…俺だってなりたくてなったわけじゃ無いんだぞ!?
「で、でもですよ?私の為に神様になったって事ですよね?」
「まぁ、そうとも言うな…」
「ふぉぉおおっ!先輩私の事大好きですねさては!!えへ、えへへへへへへ♪」
うわ!なんだこいつ急にキモいなぁ!
「うわ!なんだこいつ急にキモいなぁ!」
「西音寺?心の声漏れてんぞ」
「やっべ!でも、トリップしてて聴こえてなさそうで良かったわ」
頬を押さえながら気持ち悪い動きをしている後輩をなるべく視界に入れないように庭へと出る。
今日は満月かぁ…
「……この世界に来てからそろそろ半年くらい?」
「そうだな…確か春先くらいだったからな…」
季節は移り変わる。
この世界にも四季があるのは個人的に高評価だ。なんせ俺は日本生まれ日本育ちの和食が無いと生きていけない人間だからな!
春は桜を見て花見をしたいし、夏は海で素潜りしたいし、秋は紅葉や秋の味覚を味わいたい、冬にはルビー達と雪遊びをしたい。
だからこそ…
「ソラ、紅葉、雪姉…強くなれよ?俺達が生き残る為にはこの世界を守るしか無いんだから」
「勿論だぜ!でも、邪神の相手はお前に任せるわ…勿論地上で戦わないでくれよ?巻き込まれたらひとたまりも無さそうだ」
「だねぇ…ユウキ君が本当に人を辞めてるなんて思わなかったもんなぁ…」
「ゆうちゃんって本当に凄いわよねぇ…」
「お前らなぁ…」
付き合いの長い俺にはわかる。
3人もそれぞれ葛藤があるのだろう。
「あっ!ユウキさん何してるんですか?そんな所で!」
「マスター!ひまりがきもい動きをしてるのです!止めるのですよ!」
リビングに居た仲間達も庭に居る俺たちに気付き集まって来た。
…未だに一人でクネクネしてる後輩を俺の目の前へと転移させる。
「ふぇっ!?」
「そろそろ正気に戻れよ?」
フェイトが気を利かせて大きめのシートを芝生の上へと敷いてくれたので、一言お礼を言ってその上に寝転がる。
俺はこんな平和な日がコレからもずっと続くようにと日本と同じ綺麗な満月へと祈るように見上げるのであった。
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ユウキ達がお月見を楽しんでいる頃…
とある場所で複数人の身なりの良さそうな服を着た者達が集まり、机を囲んでいた。
「おい、例の者は呼び出せるのか?」
「えぇ、滞り無く手配してあります」
「くっくっく…俺のものにする時が楽しみだなぁ…」
ユウキの祈りはこの先の未来で早々に打ち砕かれることになる。
だがしかし、世界の理を捻じ曲げられると困ると、未来視を使えないように神界協定で定められている為、時を司る神へと至ったユウキでも未来は見えない。
だからこそユウキ達の旅路の末路は誰にもわからない。
それが例え世界神であるイブであっても…
次の更新は明日の0時頃です!
実は今日僕の誕生日だったんですよねぇ…あっ、もう昨日だ…




