第169話 歓迎会 前編
少し遅れました!ごめんなさいいい!!
「んっ…うむ、完璧だな!そろそろ誰か呼んで運んでもらうか…」
俺は料理を作り終え、フェイトでも呼ぼうかしら?と考えてると…
ドダダダダッッ!!!!
と、もの凄い勢いで走ってくる足音が聞こえる。
誰やねん…埃がたつでしょうが!!!と思った俺は調理室の扉の前で足音の主が入って来るのを待つ。
ガチャッ!!
「ユウキ先輩聞いて……っ!?」
「おいこら後輩?俺の作った料理が埃被ったらどうしてくれんだ?」
「ごめんなさい…で、でも聞いてください!みんな私の事おもちゃみたいにもみくちゃにするんです!!紅葉先輩も助けてくれないし!!」
へぇ〜、確かにこいつの見た目や仕草なんかは小動物みたいだからな…みんなが可愛がりたくなる気持ちもわからなくわないな…
それに、後輩は気付いてないみたいだから言わないが…後ろに着いてきてるぞ?
「先輩聞いてるの!?可愛い後輩が助けを求め『ひまりちゃぁん?なんで逃げるのかなぁ?』ヒィィィッ!?!?」
後ろから気配を消してしなだれ掛かるリリアと紅葉にガチな悲鳴を上げた後輩は俺に飛びついて来た。おっと、危ない危ない…
「ったく!お前らもあまり揶揄うのもやめてやれよ?それより良いとこに来たなぁ?この料理を運ぶの手伝ってな」
「仕方ないですね…1番大きいハンバーグは私のものです!」
「あっ!ずるいですよリリアさん!!」
「……大人しくもってけな?それに全部1グラムも差がないように作ってあるからな?もしかしたら食いしん坊にだけ大きく見える魔法を掛けた気もするが…」
「さぁ!モミジさん運びますよー!あっ、このお皿はモミジさん食べていいので!」
「もの凄い手のひら返しですね!?あっ、もう…ユウキ君フェイトさん達呼んでくるね」
「おぉ、頼んだ!」
料理の乗った皿を配膳用のワゴンに乗せて持っていってくれるリリアと紅葉を見送り、俺はすんすんと匂いを嗅いでいる変態に声をかける。
「おい変態?間違えたわ…おい後輩?何匂い嗅いでんの?」
「へ、変態?な、何を言ってるんですか先輩!私は別にユウキ先輩の匂いを嗅いでるわけじゃ無いですから!」
やっぱちょっとおバカなんだよなぁ…こいつ…
「誰も俺の匂いとは言ってないだろ?それよりもパーティーの主役がこんな所にいないで早く戻れよ?」
「は、嵌められた!?くっ…先輩が意地悪です!言われなくても戻りますよーだ!」
戻るときにワゴンを持ってこうとするのをお前はいいよ。と言いなかなか食い下がろうとしない後輩に軽くチョップし、文句を言われる前に転移魔法でリビングへと無理やり転送する。
一応家の敷地内の四方に結界を張ってあり、その中であればどこでも自由に転移できるようにしてある。勿論プライベート空間やお風呂やトイレなんかはやめてあるけどな。
その後、直ぐにやって来たフェイト達メイド部隊に配膳を頼み、俺は一度自室へと戻る。
「んー、この世界に来た日から一度も着てなかったからなんとなく懐かしい気持ちになるな…」
そう、俺は城を飛び出した日に着るのをやめた高校の制服に着替えていた。
後輩の制服姿を見たら俺も久しぶりに着ようかなぁ…という衝動に駆られて袖を通したけど…割と筋肉がついたせいかキツイな…ちょっと魔法で改造しよう。
イマジンリアリゼーションで伸縮性や全属性耐性などを過剰に付与し、絶対に破れたり傷んだりしないようにした。やっぱ生まれ故郷を連想させる唯一の物だしなぁ…できれば一生大切にしたい。
トントン……
一人で日本を思い出してしみじみしていると、控えめにドアをノックする音が聞こえる。
このノックの仕方は…
「どうしたモモ?何かあったかい?」
「し、失礼します…ご主人様…配膳が終わりました…その、其方の御召し物は…?」
「そんな堅苦しく話さなくていいよ?それとこれは俺の故郷の学校の服なんだ。似合うかな?」
「とっても素敵です!あっ…し、失礼しましたっ!」
「いやいやそんな感じで気兼ねなく話してくれる方が俺は嬉しいからさ?気にしないでな。それよりもモモみたいな可愛い女の子に素敵って言われると照れるね…」
「そ、そんな…私なんて可愛くないです…」
うーん、何処からどう見ても美少女だけど…まぁ、リンや双葉もそうだけど…美少女の自覚ってのがない子が多いからなぁ…
寧ろ、リリアと一華の自信を少し分けてあげてほしい。
まぁ、リリアの場合は王族だから普段から美しく居ようと心がけてたみたいだから仕方ないか…一華は知らん。
「さて、余りみんなを待たせても悪いし行こうか?」
「そ、そうでした…すみません…」
「ほら!俯かない!それに敬語じゃなくていいって!シロナを見習ってもっと甘えていいんだぞ?」
「うぅ…恥ずかしい、です…」
まだ無理か…シロナなんてフェイトに幾ら怒られても俺に抱きついて来たり、おやつを強請ってきたり、夜になると絵本読んで!とせがんでくるのになぁ…
おかげで毎晩ルビー、シロナ、モモの年少組に絵本を読み聞かせてるのだが…いつも話が終わる前に寝ちゃうんだよねぇ…
そして、俺もそのまま寝て、朝リリアとローズに怒られるのが朝のルーティンである。なんで怒られてるのか未だに分からん。
そんな事を考えながらリビングへの扉の前に辿り着き、モモがサッと前に出て扉を開いてくれる。
俺はモモにありがとな…と頭を撫でてやり部屋に入る。
「えっ!?ユウキくん制服なの!?」
「おっ、懐かしいな…俺も持ってくりゃ良かった」
「本当だね〜!相変わらずゆうちゃんは制服が似合うわねぇ…学ランも良かったけど、ブレザーはもっといいわぁ…」
「せ、先輩?どうしたんですか?」
「ん?そりゃ後輩一人制服だと寂しいだろ?それに俺も久しぶりに着たくなったんだよ。だから、ほれ。先に渡しとくけどコレが俺達の統一してる装備だ。明日この国を案内する時はそれを着て街を歩くようにな?」
「え、でもフェイトさん達がお洋服買ってきてくれましたよ?それじゃダメなんですか?」
わかってないなぁ…まぁ、勿論私服がダメってわけじゃないけどな?
「うふふ、ユウキくんはね?ひまりちゃんは俺の仲間だ!誰も手を出すなよ?と街中の人にアピールしたいのよ」
「そうね…私と双葉も真っ先にそのエンブレムの付いた服を着させられたわ…」
「でもお姉ちゃんすごい喜んでたよ…ね…?」
「そ、それは言わない約束でしょ!?」
…まぁ、ローズの言ってる事は間違いではないけどニュアンスが大分違うけどな?
ただ俺は後輩に、早く俺達のクランに馴染んで貰いたいだけだからな…
「とりあえず早くご飯を食べるのです!もうお腹ぺこぺこなのですよぉ…」
「うぅ…ルビーもお腹減ったよぉ…」
「っと、すまんすまん!そしたらみんなグラスを手に持ってくれ!」
フェイトがみんなにジュース(未成年しかいない為お酒はNG)を配り、自分もグラスを持つ。
俺はそれを見届け、グラスを構える。
「よし、それじゃあ後輩の仲間入りと俺達の新たな門出を祝って…乾杯!」
「かんぱーい!!」×全員
俺の音頭に合わせグラスを打ち合わせる大切な人たちの姿、そして何より笑みを浮かべる後輩の姿を見て、俺の選択は何一つ間違えていなかった。と本気でそう思えた。
楽しい宴はまだ始まったばかりだ。
次の更新は明日の0時頃予定です!
いや、ゲームのフレとVCしてたらいつの間にか23時50分でしたわ…焦った。
サッと書き上げたので誤字脱字あるかもなので発見した方居ましたら報告していただけるとうれしいです!




