第15話 リリアの思い
「やぁ、リリアいらっしゃい？てか、どうしたの？さっき城に戻ったばっかりなのに…」
こんな早く再会することになると思ってなかったユウキは、なんとなく面倒ごとの気配を感じつつリリアに聞いてみる。
「何か勇者達に嫌なことでもされたのかい？」
「いえ？ただ会いたかったので来ただけですよ？」
この辺りが妥当だろ？と思いついた事を聞いてみたユウキだったが、リリアのなんでそんな事聞くのかしら？とか首を傾げる仕草に、肩の力が抜ける。
(このお姫様は、自分が今何言ったかわかってるのか？まぁ、あいつらに変なことされて逃げてきたわけでないなら、なんでもいいか)
「まぁ、こちらから出向くわけにも行かなかったし、旅立つ前にちゃんと挨拶できてよかったよ」
ユウキとしてもこの世界に来て初めてできた、歳の近い友人？と呼べる存在のリリアに何も言わずに居なくなるのは、なんだかな〜と思ってたので、思わぬ所で心残りを取り除くことができて、内心ほっとしていた。
「いえ、そのことなんですが…あの、その〜」
あの〜、その…えっと…となんとも歯切れの悪いリリアに、俺はミスティの方にチラッと目線を送る。
ちょうどミスティの方も俺のことを見ていた為に目が合った2人は視線でやりとりをする。
(ミスティ！これはどうするべきだ？早く言えと急かすべきなのかな？)
(いえ、何か迷ってるようなので覚悟決めるまで待ってあげるべきではないです？)
…てか、普通に念話でよくね？と思いここからは念話で会話する事にした。
(ミスティ聞こえるか？)
(はい！聞こえるのですよ！)
(そうか…でだ、やっぱあれは国王への説明が上手くいかなくて連れて来いとか言われたのかな？それで言い出せないってパターンかな？)
(うーん、私はもっと違う理由のような気がするのです…なんなのかまではわからないのですが、そんな気がするのです！)
うーん、ミスティの言う事を鵜呑みにするなら、とりあえず国王達はごまかせたのかな？それならどうしてわざわざここに？てか、護衛はどうしたんだ？
ふと疑問に思い、どう切り出せばいいのぉぉ！と頭を抱え始めたリリアに聞いてみることにする。
「なんか悩んでるとこ申し訳ないけど、リリア？護衛とかってどこかにいるのか？まさか1人で来たなんてことは無いよな…？」
「いえ？1人で来ましたけど？ダメでした？」
ユウキに呼ばれたリリアは何か問題でも？と言いたげな顔で首を傾げているリリアに、ユウキはとうとうため息も我慢せずに何してんのこの王女…とリリアにちょっと説教しよう、そうしよう。
そう思いリリアを、椅子に座らせ目の前に仁王立ちする。
「はぁ…リリア、ちょっとここ座りなさい」
えっ？と思いつつも、そういえば立ったままだったな〜とまさかこれから怒られるとは思ってもいないリリアは、座りながら改めて話そうと思い腰をかけた。
「？？ユウキさんとミスティちゃんもお掛けになられては？」
何故か机を退かし、目の前に移動してきた2人にリリアはどうしたの？ときょとんとしている。
「いいかリリア！君はこの国の王女なんだぞ！？それがなんで護衛の1人も付けずに、今日知り合ったばかりの男の部屋に1人で突撃してきてるんだ！？危険だとは思わないのか！？」
「えっ！？いきなりなんですかー！？わ、私っ『いいから黙って聞け！』はっ、はいぃぃ…」
凄い剣幕でリリアの事を怒り始めたユウキに、目を白黒させながらなんで怒ってるのですか！と言った意味合いも込めて
反論を試みるリリアだったが、ユウキのあまりの剣幕になんですか以上の言葉は続けられなかった。
－－－－－－－－－－－－中略－－－－－－－－－－－－－
それから10分以上、ユウキの説教は続いていた。
ふぅ…ついつい怒りすぎてしまった…言い過ぎたかな？
と思い怒られていた当人に目を向けると、すすり泣く声が聞こえる。ていうよりも普通に泣いていた。いや、寧ろ鼻水も出てる気がするくらいの号泣であった。
やべ！！言い過ぎた！！と思っても後の祭り
ミスティもまた泣かしてるこいつ…と言った目で俺の事を見ていた。完全にやりすぎました。昼の反省が全く生かされてないな全く…最低だな俺…
「す、すまんリリア…言い過ぎた！どうか泣かないでくれ」
「うぇっ、ひっく…むりれす…ユウキしゃんにきらわれたぁ…あぁ…」
泣き止まないリリアに焦り始めたユウキは、咄嗟にリリアの頭を撫でながら、どうして怒ったのかを伝え始める。
「えっと…俺が怒ったのはリリアの事を大切に思ってるからなんだ。嫌いとか泣かせたくて怒ってるわけじゃない」
「本当？」
「あぁ！本当だとも！ただ、リリアの事を思うが故に、少し…いや、だいぶ言い方がキツくなってしまった。本当にごめん！！」
誠心誠意、頭を下げて謝るユウキの姿を見て、よかった嫌われたわけじゃないんだ…と気持ちが落ち着いてきたリリアだったが、ユウキがさっき言っていた言葉を思い出し、ひゃーーっ！と顔を両手で覆う。
その姿を見たユウキは、また泣かせてしまった！！とミスティに助けを求めたが、ミスティはなんで顔を覆ったのか察して、この天然たらしやろう！とユウキの事を逆に睨みつける。
(あの？ミスティさん？なんで睨んでるんですか？)
(いえ？別に？？ちょっとイラッとしただけなので、気にしないでください)
(いやいや！！怖いよ！？急に話し方変えるのやめて！？その笑顔怖すぎる！！)
急ににっこりと微笑みながら(目は笑っていない)敬語になったミスティに恐怖を覚えた俺は、これ以上はまずいと判断し、リリアの攻略？に戻る
「リ、リリア？そろそろリリアが俺たちに会いに来た理由を教えてくれないかな？」
話を変え、最初の疑問に戻ることにした。
「ぐすっ…それはユウキさんに会ってアドバイスを貰おうと思って…」
「アドバイス？ってなんの？」
「ユウキさん達と一緒に冒険に行くためのアドバイスです」
…あれ？今この子なんて言った？
「リリア？ごめんよく聞こえなかったから、もう一度教えてくれないかな？」
「ッ！！ですから！私はユウキさんと一緒に居たいので！冒険に一緒について行くために！！お父様達を言いくるめるアドバイスをもらいに来たのです！！！」
「「え、えぇぇぇ！？！？」」
ユウキとミスティの絶叫が重なった。
最初にリリア達が大きな声を出した時に、外に声が響かないように結界を貼っておいて良かった…と思いつつ、リリアから告げられた言葉に耳を疑う。
(このお姫様は、俺たちと一緒に冒険したいって言ったよな？普通に考えて断るべきだけど、ミスティはどう思う？)
(私はマスターに任せるのです！でも、一つだけ言うと…仲間は多い方が楽しそうだな？とは思うのです！！)
ミスティの返答に、それはOKって事じゃないか…と苦笑いしつつ、やっぱ厄介ごとだったか〜と今後の為の考えを巡らす。
「リリア、俺たちは世間に疎い。だから一国の王女でおるリリアの知識は頼りになると思う」
「で、では！ついて行ってもいいのですね？！」
ぱぁっと瞳を輝かせながら、やった！と言う気持ちを抑え切れていないリリアに、やれやれと思いながらもどうしても理由だけは聞かないとダメだなと思い、だけどと続ける
「だけど、リリアが俺たちと共に行きたい理由がわからないんだが、なんで俺たちなんだ？他にも強い冒険者はこの国にはそれなりにいるだろう？」
何故俺たちなんだ？と、リリアにとっては物凄く答えづらい質問が飛んできたことに、うぐっ、それは…その〜とまたしても、もじもじしてしまうリリア
(なんでユウキさんは察してくれないのですか！！この鈍感！天然たらし！！)
と心の中で悪態を吐き、これは言うしかない！と覚悟を決めたリリアはユウキの目を真っ直ぐ見つめ、思い口を開く
「それは、私がユウキさんの事を好きになってしまったからです！好きな人と一緒に居たい！その気持ちを優先するのは悪いことですか！？」
「ぶふぉっ！！？？」
ミスティが入れてくれた紅茶を飲みながら、リリアの返答を待っていた俺は、不意打ちをダイレクトにくらい吐き出してしまった。
「ごほっ！ごほっ…リ、リリアさん…？今好きって言いました…か…？」
「えぇ、そうです！私はあなたのことが好きになってしまいました！」
え、えぇ…どうしてこうなった…
と頭を抱えたい衝動をぐっと堪える。
「ど、どこにそんな要素が…？自分で言うのもなんだけど、最初の出会いは最悪だったと思うんだけど…すごく酷いことを言ったし…」
「えぇ、確かに最初は酷い人だと思いましたよ？でも、最後には理由を説明しながら謝ってくれましたし、私の事を気遣ってくれている事もわかりました」
「そ、それでなんで好きって事になるの？」
「もちろんそれだけではありませんよ？絶望的な光景を目の前にしても、何事もないかのように立ち向かって行くユウキさんはとてもカッコ良かったです。それに…」
「それに？」
「ユウキさんに撫でてもらった時にとても幸せな気持ちになりました。でも1番は一目惚れですかね」
「一目惚れ？俺なんかに？」
「なんかなんて言わないでください！私がユウキさんを目にした瞬間に、あぁ…私はこの人に出会う為に生まれてきたんだと、そう思ったのです。もちろんユウキさんはとても顔も整ってらっしゃいますが、それだけじゃないんです！ユウキさんの醸し出す、優しい雰囲気も合わさって…とにかく、この人しかいない！そう思ったんです！！」
「そ、そうなんだ…えと…リリアにそこまで言ってもらえて…すごく嬉しいよ」
「その後はちょっとあれ？と思うこともありましたが、私の目に狂いはなかったんだと思いました…ですけど、明日にでも王都から旅立ってしまうと聞き、どうしても我慢できずに会いにきてしまったのです。これが私がここにきた理由です」
そう締めくくり、ユウキの返事を待つリリアは強い意思の宿った目を向ける。
…俺の事が好きだから…か…
今までこんなに好意を向けられた事なんてなかったなぁ…いつも根暗や陰キャが移ると男子から悪口を言われ、女子からもキモいと思われていたユウキは、女の子にこんなにはっきりと告白されたと言う事実にドキドキしていた。
女の子は雪姉か紅葉以外、俺と話したがる人なんていないと思ってたけど、この子は俺の目を見て好きだと伝えてくれたんだ…や、やばい！なんだこれ！顔が熱い！恥ずかしくて目を合わせられないんだけど！？なんだコレ！？
ストレートに好きと言われたユウキは、普段では絶対に見せない動揺を隠しきれないのであった…
視点ゴチャゴチャかもしれないですね…
あまり気にせず読んでもらえると幸いです…
