第146話 いざダンジョンへ Ⅱ
遅れました!!
今まで見てきた中で一番デカいな…この冒険者ギルド…まぁ、本部というだけあってなかなかの佇まいだ。
「あなた?なんでさっきからそんなに挙動不審なのかしら?恥ずかしいからやめてちょうだい…」
「いやいやローズさん?このギルドには危険人物が居るんだぞ!?もし遭遇した時に対処できるようにしないと…」
俺は警戒しながら朝早くまだ眠そうな受付嬢の所へと進む。
「おはようございます…ダンジョンってどこにあるんですか?この街に来たばかりで分からなくて…」
「ふわぁ〜おはようございます…ダンジョンでしたらこのギルドから入り口が繋がってます。そこの階段から下に降りてもらって、そこの門番に話を聞いてください」
「へぇ〜よかったじゃない?あまり遠くに移動することなくて…」
「そうだねぇ…って、あれ?あそこにいるの…」
双葉の視線の先、俺はそれ見た事を後悔した。
「あらぁん?あなたたちもう来てたのね〜♡もうっ♪早く言ってよ♡」
「で、出たぁぁぁあっ!?」
「ちょっとぉ!そんなにアタシに会いたかったのぉ〜?うふふ、再会のハグをしましょうよん♡」
そう言い人外の動きで俺に抱きついて来たディアン…俺は死んだ。
「あはは、ディアンさんおはようございます」その、ユウキくんが死んでるのでそろそろ離してあげてくれませんか?」
「リリアちゃんおはよん♡あららん?ユウキきゅんは照れちゃったのかしらん?しょうがないわね〜」
俺の一命はリリアのおかげで取り留められた…因みにSAN値は限りなく0に近い
「よ、ようディアン…随分移動が速いんだな…」
「そうかしらん?ギルマスとお友達と一緒に全力ダッシュしたのよね〜♪一睡もしなかったのよ?もうっ、睡眠不足はお肌の敵だって言ってるのにね〜全く!」
俺たちの後に出発した筈の化物集団が一睡もせずに街道を走ってる所を想像して、残っていたSAN値は0を通り越してマイナスへ突入した。
「…すまん、後は任せたリリア…」
「えぇ!?ユウキさんどこに行くんですか!?」
無理だ。俺には漢女耐性は無い…
俺は早々に戦線を離脱し外の空気を吸いに出た。
うーん、空気が不味い!ペリドットに引きこもりたくなるな…
それからどれくらいの時が流れたのだろうか…俺は空を見上げて英気を養っていると、袖をくいっと引かれた。
「ん?ってリンか…どうした?」
「ん、お兄ちゃん、ディアンお姉さん?はもう帰っちゃったよ?」
ほっ…よかったよかった…それならまだ生き延びれられる…気がする…
「そうか、じゃあ戻るか…ところでリンはどうやって俺の居場所がわかったんだ?」
「ん、お兄ちゃん良い匂い…だからわかるよ?」
…うちの人達はみんな俺の事見つけるの上手だよねぇ…
「…とりあえず戻ろうか?」
「ん、みんな待ってる」
そして冒険者ギルドへ戻り、仲間達にぶつぶつ文句を言われながら門の前へと向かう。
「もう!ユウキさん酷いですよ?お友達から逃げるなんて!」
「誰が漢女のソウルメイトだって??」
「いや、そこまでは言ってないでしょう?」
呆れた顔でこちらを見てくる一華を鋼の精神で無視し、俺は直立不動で門の前に立っている人に話しかける。
「すんませーん、ダンジョンに挑戦したいって受付嬢に言ったらここに来るように言われたんですけど…どうすればいいですか?」
「そうか…ここは初級ダンジョンだ、ここをクリアすることができれば中級に挑戦することができるようになる」
「へぇ、では上級もあるんですか?」
「そうだ、この国には累計4つの冒険者ギルドがあり、ここを本部にしたのも難易度なら新人が最も集まるからだ…お前達のランクは今いくつなんだ?」
「俺たちは今Aランクだったよな?」
「そうですね…この冒険者証で大丈夫でしょうか?」
「む、問題ないな…Aランクパーティーなら説明も不要だと思うがこの中に入ると更に下にもう1人門番がいるがそこからがダンジョンの始まりだ」
そう言い門を開いてくれる門番さんにお礼を告げ、俺たちは門の内側へと踏み込んだ。
そして、何事もなく第二の門も潜りダンジョンに踏み入れたのだが…
「中は結構暗そうだなぁ…」
「じめじめしてますね…それにカビ臭い」
「ん、鼻が痛い…」
俺たちは初めて踏み入れたダンジョンの洗礼を受けていた。主に汚さと臭いで…
「さっきの門番さんの説明は聞いてたけど…中級冒険者が二度と来ないって言うのはわかるな…俺もここはもう来ない気がするわ…」
うんうん、と頷くみんなを先導して奥へと進んで行く。
「おっ、魔物が出て来たぞ…って言ってもゴブリンだけど…」
ダンジョン初戦闘は見慣れた緑の小人…
でも、こうやって魔物に遭遇するとダンジョンに潜ったって気がして減っていたSAN値が回復して来たなてんてんテンション上がるわ!
「マスター?アイツ何してるんです?」
「あー、この先で待ち伏せてる奴がいるんだよ…それで向こうに行くまで待ってるって感じだよ多分…まぁ、行かないけどな」
「って事は魔法で?」
「イエス、誰か倒したい人いる?」
「それじゃ私がやるわね…」
ローズが手を前に出し風の刃を放つ。
直後、胴体と頭部が分たれたゴブリンの死体が転がり、怒った仲間と思しきゴブリン達が一斉にこちらに向かって来た。と言っても5体程度だが…
「それじゃ次は私がやるね…えいっ!」
双葉の可愛い掛け声と共に放たれたバリアバーストがゴブリン達を細切れにする。その様子に満足げな双葉にちょっと狂気を感じる…
そして俺達は何度かの戦闘を繰り返し、1層のボス部屋の前までやって来ていた。
「んー、朝早く来たおかげで誰とも遭遇しなかったな…それじゃチャチャっと倒して、次の階層に進むぞー」
「「「「おーっ!!」」」」
「ちょっと待って!確か門番が言うには一層のボスはゴブリンシャーマンだっけ?私1人で片付けるわ!」
「「「「おぉ……」」」」
やる気満々の一華に戦いを任せる事にし、俺達はその戦いぶりを見学する事にした。俺達のやる気を返して欲しい…
そして俺達は扉を開けボス部屋へとのんびりと入っていくのであった。
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