第140話 エメラルへの道中
第4章スタートです!
太陽が燦然と照り付け、道行く人々が暑さでやられる7月下旬…
俺達はダンジョンのある自由国家エメラルを目指し旅をしていた。
「ますたぁ〜溶けちゃうのです〜」
「暑すぎます…ユウキさん…なんとかなりませんかぁ〜?」
仲間達が夏の暑さにやられ魔法の絨毯の上でだらけていた。暑いのは分かるけどもう少し我慢強さを覚えないと駄目だな…
「てか、まだ夏になったばかりなのに暑すぎん?何か理由があったりするのか…?」
「確かに暑いよね…日本でもここまでの暑さじゃなかったもん…お姉ちゃんは何か知らない?」
「…えぇ?私に話しかけたの…?んっしょっと、それで何かしら?」
「……お前もだいぶ慣れたよな?最初は怖い〜とか落ちたらどうすんのよー!とか文句ばかり言って来たくせに…」
「はぁ…?何か言ったかしら?」
「いえ何も言っておりません…」
「……この辺りは砂漠地帯が近いこともあって夏場は特に熱風が吹いて来て暑いらしいわよ?ていうか貴方達下調べとかしないわけ?」
「一切しないな!それこそリリアが案内人な訳だが…見ろ、あの堕落ぶりを…」
「「………」」
俺達の視線の先、ミスティと一緒に絨毯に寝そべり溶ける〜と繰り返し言っている姿は王女(笑)と呼ばれても仕方ない光景であった。
「な?二人も思うだろ?」
「「……ノーコメントで…」」
薔薇園姉妹は擁護の言葉を探そうとしたが諦めた。
「あなた…そろそろお昼の時間じゃないかしら?」
「おっと、もうそんな時間?エメラルまで後どれくらいなんだ…?」
「そうねぇ…元々馬車で2週間の旅になるって言ってたから後二日くらいじゃないかしら?」
「後二日もあるのか…なら早いとこお昼にするかぁ…丁度いいとこに大きめの木があるからあの木陰でお昼にしよっか」
「ん、お腹空いた。準備手伝う」
「ルビーもお腹ペコペコだよー!パパー!」
俺の隣で魔法の訓練をしながら座っていたリンと俺の膝の上で絵本を読んでいたルビーが空腹を訴える。
「リンありがとうな…ルビーもお手伝いしてくれるか?」
「うんー!パパのお手伝いするよー♪」
「いい子だ!」
リンとルビーの頭を撫でてやりながら俺は双葉にお願いする。
「双葉、あの大木を囲うように結界を張ってくれるか?」
「うん、任せて!結界魔法…聖殿守陣!」
大木を囲うように双葉が発動した聖魔法の結界が魔物の侵入を防ぐ。
うん、どうやら俺が教えた魔法もうまく使いこなしてるみたいだな…
「う、うまくできてるかな…?」
「全然大丈夫だぞ?自信持てって!それじゃ降りるからな…」
すっと空中で停止し、いきなり落下させる。
「「ちょ!?ユウキさん(マスター)!?」」
リリアとミスティ以外のメンバーは俺の周りに集まりGを「きゃーっ!」と言いながら楽しそうにしている。
だが、だらけていた二人は慣性の法則に従い空中で一瞬停止し、絨毯を追いかけるように落下を開始していた。
「「いやぁぁぁぁああっ!?!?」」
ふむ、罰はこのくらいでいいかな?そう思った俺は風魔法で二人を減速させてやり、ゆっくりと絨毯の上に落とす。
ぼふっと絨毯に顔から突っ込んだ二人は涙目で抗議する。
「な、何するんですかマスター!!怖かったのです!落ちるかと思ったのですよ!?」
「そうですよ!!も、漏らすかと思ったじゃないですか!!」
涙目でもじもじしているリリア…いや、君事後だよね?思った…じゃないよね?
流石にやりすぎたか?と思った俺はテントを出し、リリアに着替えてくるように言う。
「ほら、もじもじしてないで着替えて来ていいぞ?お漏らしリリアちゃん?」
「っっ!?!?な、ななななんて事を言うんですか!?うぅ…もうお嫁に行けません…」
「大丈夫大丈夫!リリアはちゃんと貰ってやるから…」
「そ、そうですよね!ユウキさんに貰ってもらえば問題無いですね!ミスティちゃん行きましょう!」
「な、なんで私まで!?恥ずかしいからって私を巻き込むななのですー!!」
ズルズルと引きずられてテントの中に消えて行ったミスティに俺達は同情の眼差しを向け、心の中で合掌する。
「さてと、俺達は昼の準備に取り掛かるか〜」
そして、お昼を食べ終わった俺達は各々自由時間を取る。
リリアは双葉と稽古を取り、ローズはリンとルビーに魔法の先生をしている。
そして残った俺は一華を見ていた。
「はい、ダメだな…純粋な魔法特化の方がいいんじゃ無いか?」
「う、煩いわね!いいからもっと教えなさいよ!」
「はいはい、んじゃもう一回やってみようか」
何を隠そう俺は今一華に西音寺流の技を教えていた。それも自ら俺に頼んできたのだ…あのプライドの塊みたいな一華が…思わず三度聞きぐらいしたら蹴っ飛ばされた。解せぬ
「んー、筋は悪く無いんだけどなぁ…」
「はぁ、はぁ…じゃあ何が悪いのよ…」
それは誰から見ても分かるだろ…
一華が使ってる武器…それが特殊なのだ。
「いや、ほらそれは一華がもう少し無難な武器に変えればの話な?なんで数ある武器の中で鞭なんて選ぶんだよ…」
そう、こいつが選んだ武器は鞭という非常に難易度の高い物であった。
確かに似合ってるんだけどな?ほらSMの女王様的な雰囲気があるし…
「?あんたなんか失礼な事考えてないでしょうね?」
「いえ、そのような事はございませんよ??」
「ちっ、いいからさっさと次行くわよ!」
「はい…」
かれこれ旅に出てからというものずっと鞭術を教え続けてる為、それなりに形にはなって来ているのだが…
まぁまだ教え始めて5日だからな…
そう思い俺は、一心不乱に鞭を振るう一華を見る。
真剣に取り組む姿は素晴らしいと思う。だけどなぁ…1ヶ月はかかるかなぁ〜等と思い空を見上げる。
「あっ、手が滑った」
「ぶふぉあっ!?」
一華の焦る声が聞こえ前を見た瞬間、鞭が俺の顔面にバチーンとクリーンヒットした。
やっぱり教えるのやめようかな…
次の更新は明日の正午頃になります!




