SS 元の世界での出来事 Ⅲ
本日!…本日??
と、とりあえず3話目になります!
ショートストーリーはこれにて終わりです!
「んー、ケーキ美味しかったし先輩とプリも撮れたし…プレゼントも買ってもらえたし…最後に手料理まで振る舞ってもらえるなんて…もしかして新婚生活のシミュレーションでしょうか…?にゅふふ〜」
「?あっ、後輩!ハンバーグのソースは何がいい?」
俺達は大型ショッピングモールを後にし、俺の家の近くにあるスーパーへとやって来ていた。
「えぇ…迷いますね…ユウキ先輩のおすすめは…?」
「んー、夏場だったらさっぱりとおろしポン酢って言うんだけど、今はまだ6月入りたてでそこまで暑くないしなぁ…」
「そしたら私は洋風がいいです!あっ、でもパンじゃなくてお米ですよ?日本人はお米と味噌汁が無いとダメなんですから!」
「激しく同意…俺は麺類好きだけど味噌汁に関しては毎日1杯は飲みたいからなぁ…」
「……も、もしかして今のもお前が作った味噌汁が毎日飲みたいって言う定番なプロポーズ!?」
「後輩?因みに味噌汁の具は何がいい?」
「……なわけないか……ふぅ、私はおネギとかワカメとかシンプルなのが好きです」
「ほーん、ならワカメ豆腐ネギの三種の神器にしとくか〜」
そう言い俺はスタコラさっさと買う物をカゴに入れて行く。
「あれ?先輩先輩!ワカメも豆腐もネギも全部カゴに入れて無いですけど…ストックがあったんですか?」
「ん?いや、ワカメはこの前海に潜って取ってきたやつあるし、豆腐も大豆から作った自家製のがあるし、ネギも家で栽培してるから必要無いからな」
基本的に自分で作れる物は作ってるんだよねぇ…流石に醤油や酢なんかは作れないけどね
「……主婦通り越して農家ですね…それも通り越してると思うけど…一言で表すなら流石にユウキ先輩!ですかね?」
「いや、何その雑な褒め方…まぁ、いいけど…あと買う物は肉くらいかな…」
「お肉と言うことは挽肉ですね!!ってユウキ先輩?なんでレジに?」
「え、スーパーで買う物は基本的に加工品とかだけだぞ?肉は肉屋、野菜は八百屋、魚は魚屋って相場は決まってるだろ?」
「いやいやいや、今時そんな事してる人珍しいですよ!?」
えぇ…普通じゃ無いか…?
スーパーだと値切ったりおまけ貰ったりできないじゃん?
「まぁ、とにかく行くぞ!」
「あっ、待ってくださいよぉ!」
その後、スーパーを後にした俺達は行きつけの八百屋などを巡り、家に着く頃には陽も沈み、当たりが徐々に薄暗くなって来ていた。
「たでまー」
「お邪魔します〜!」
俺が帰宅すると、例の如く廊下に転がっている一振りの剣…除霊してもらおうかな……
俺は剣を拾い上げ元の場所へと戻し、気を取り直して腕捲りをする。
「よーし、取り掛かるぞ!あっ、後輩は適当に寛いでてくれ!すぐ作るから!」
「えっ?手伝いますよ?流石にご馳走になるだけじゃ申し訳ないですよ」
「そう?なら手伝ってもらうかなぁ…因みに料理の経験は?」
「毎日マ…お母さんの手伝いをしてます!」
「あら偉い…それじゃ基本的なことは知ってそうだし、チャチャっと作っちゃおうか?」
「はーい!先輩先輩?こうしてると私達新婚さんみたいですねっ?」
新婚さん?何言ってんだ?
俺は適当にそだな〜とだけ返してご飯を研ぎ土鍋にセットする。
「え、適当に流された…しかもご飯炊くの土鍋だし…炊飯器あるのに何故…?」
「炊飯器で炊くのは楽だけど、後輩には美味しいご飯を食べて欲しいからな…全部手作りじゃ無いと!」
くっくっく…俺は山で何ヶ月も過ごした経験のおかげで火の扱いは右に出る物は居ないと自負しているからな……俺って自分に自信あり過ぎじゃね…?引くわ…
と、自分自身に引きつつ料理を滞り無く済ませ、食卓に今日の夕飯が並ぶ。
「先輩っ!お腹空き過ぎてやばいです!まだ食べちゃダメなんですか!?」
「いや、お腹空き過ぎてやばいって君…さっきケーキパクパク食いまくってたよね…?今更だけど普通に作ったんだけど食べられるの?」
「ケーキは別腹!!先輩の手料理も別腹です!!」
「それだと別腹しかないんだが??まぁ、食べれるならいいさ、では…いただきます」
「いただきます!!まずは先輩の愛情がたっぷり詰まったハンバーグを…」
パクリ……
一口口に入れた瞬間フリーズする後輩…えっ、不味かったかな……
「……ど、どうした後輩…?そんなに不味かったか?無理せず吐き出していいぞ?」
「……う」
「う……?」
「うまぁいっ!!!なんですかこれ……美味しすぎて一瞬天国に行ってましたよ!?」
「えぇ…因みに天国はどんな感じだった?」
「訳の分からない駄女神がポテチ食べながらスマブ○してましたよ!」
「こっちが訳がわからんのだが?まぁ、不味くないならいいや…」
「はい!という事で私は先輩の料理に集中するので黙ります」
「あっ、はい…どうぞ…」
後輩の事だから喋りながらご飯を食べると思ってた俺は毒気を抜かれ、黙々と食べる後輩を見つめる。
そんな俺の視線には気付かず「うま、うま♡」と幸せそうにご飯を食べてくれるので、俺も嬉しくなって来たな…
そういえば…じいちゃんが死んでから誰かと食卓を囲うって事は無かったか…
「うん、俺も食べよう!」
少ししんみりとしてしまった心を紛らわせる為にハンバーグに食らいつく。我ながらなんてデリシャスなハンバーグ…んー、90点!
「ふぃ〜美味しかった〜先輩…私幸せです〜」
「お粗末様……ところで後輩?お前何時に帰るの?」
「えっ?マ…お母さんには先輩のうちに泊まってくるって言っちゃいましたよ?」
「ふーん、なるほどね…ってなるわけないだろ?!泊まる!?」
こいつ正気か…?
それに親御さんが男の家への外泊なんて許すわけ…
「あっ、因みにお母さんはユウキ先輩の家って言ったら、全然いいわよ!って言ってくれたので心配いりませんよ!」
はい、外堀埋められてたわ〜
って、なんで許しちゃってるのお母様…?
娘さんが大切じゃないのかしら??
俺が思わず心の中でオネェになっていると、後輩が一言俺にトドメの言葉を告げる。
「先輩…?今日は休息日で私の言う事なんでも聞いてくれるんですよね…?なら、私が泊まってもいいですよね?ね?」
「うぐ…そ、それはその……倫理的にダメじゃない…か…?」
「何がですか?あっ、もしかして先輩……恥ずかしがってるんですかー?もぉ!意外とうぶですよね先輩って!あっ、私お風呂入りたいです!」
意外は余計だ!!俺は生まれて15年間彼女居ないんだぞ?!と言うよりも記憶にあるのはじいちゃんとの修行の日々と山で死に物狂いで生き抜いたサバイバルな日々しか残ってない!!
そんな俺が後輩とはいえ女の子と一つ屋根の下で一晩を明かすなんて……まぁ、何も起こらんけどな…
「はぁ……お好きにどうぞ…?着替えは俺のスウェットとかで良いか?」
「もちろんです!では、お先お風呂いただきまーす!」
はぁ…今日の特訓は筋トレだけにしておくか…流石に後輩を放置することはできないからな…
そして、風呂から上がった後輩にドギマギしたり、寝るまでゲームをやりまくったり、何故か後輩が俺のベッドに潜り込んで来たりしたが、無事翌朝を迎え、俺達は揃って学校へと向かう。
「あっ!ユウキくんおはよっ!こんな時間に登校するなんて珍しい……ね……?なんで、ひまりちゃんが……家、全然違う場所、よね……?」
「ん?おはよう神咲…それがな?こいつ昨日俺ん家泊まったんだよ…ふわぁ…眠い」
「おはようございます!紅葉先輩!ユウキ先輩の家にお泊まりしちゃいました!」
「そ、そうなんだ…アハハ……ユウキくん?後でOHANASIがあるから……ニッコリ」
表情が消えた神咲が全く笑ってないのに笑顔になるという離れ業を披露していた。俺に…
「は、はは、はい…わ、わかりまひたっ」
今日は平和には行きそうにもないなぁ……と思いつつ、俺は青く澄み渡った空を眺め、溜息を吐くのであった。
「先輩!何してるんですかー!置いて行きますよー!?」
「はいはい!今行くよ!」
何事もなく過ぎていた日常は、ある日を境に非日常へと変わってしまった。
それは俺にとって…いや、ソラや紅葉…それに後輩の運命も予期せぬ方へと分岐する。
「先輩……私は、もう一度先輩に会えるって信じてますから……だから、どうか…どうか…神様が居るのなら、私をもう一度先輩に合わせてください…そして今度こそ大好きだって伝えたいんです……先輩に会いたいよぉ……」
一人、取り残されてしまった少女はこの世界から消えてしまった一人の少年を想い、静かに涙を流すのであった。
次の更新は明日のうちに更新します!
ただ、明日はストーリーじゃなくて第3章終了時のステータスと忘れていた2章から3章終了までの新キャラのまとめになります…




