第13話 女の戦いが始まる予感!?
これは王城でパーティーが開かれる前の話である。
異世界での初戦闘を終え、鍛えているとはいえ慣れない戦闘に疲れ果てていたユウキは、宿屋で昼寝をしていた。
寝ている姿を見ているミスティは、ユウキの寝顔を見ながら顔を綻ばせていた。
(あー、普段のご主人様もカッコいいですが、寝てる姿も格別です!普段の凛々しい姿がこんな無防備な寝顔を晒しちゃってもー!こんな姿見たら、世の中の女性達がメロメロになってしまいます!絶対この尊い方を守らねば!!)
と決意を固めていた…
伝説の武器がこのような性格で大丈夫か?と伝説の武器の存在を知ってる者達は頭を抱えそうである
と、そんな所に部屋に近づく者の気配を感じ取ったミスティは、ドア付近に移動し来客を待つ。
「トントン、失礼しまーす!っと、あれ?ミスティちゃんドアの前に立ってたりしてどうしたの??」
「なんだ、リーファちゃんですか。いえ、もしかしたら敵が来たかもしれないと思ったのですよ。」
「て、敵!?敵って魔物的な?」
「ま、まぁ…ある意味魔物かもしれないのです…」
まさかユウキの寝込みを襲いに来た女が来た!と思ったとは口が裂けても言えないミスティなのであった。
「そ、それでリーファちゃんはどうしたのです?もうご飯ですか?」
「んーん、違うよ!お兄さんにお話聞こうと思ったんだけど、寝てるみたいだから後にするね!」
「あっ、約束してましたもんね。疲れて眠ってるみたいだから、起きたらリーファちゃんが来たって伝えておくのです!」
「うん!よろしくね!またご飯の時に呼びにくるからー!」
そう言い残しリーファは去っていった。
(ふむ、やはりリーファちゃんはいい子なのです。突然現れた私にも変な勘繰りせずに接してくれますし…)
ユウキが起きたら真っ先に伝えてあげよう。そう心に決めユウキのところに戻るミスティは、なんとなく嫌な気配を感じ、窓の外に目をやる。
すると、フードを目深く被りこちらを見上げている何者かの姿がある。
(あれは…こんな真昼間にあのような装い…訳ありのものに違いないのです…絶対ご主人様と関わらせないようにしないと)
窓の外から目線を外し、カーテンを閉めようとしたところで一瞬だが不審者と目が合ったような気がしたが、気のせいだと思う事にし、ユウキの寝顔を見るのに戻る事にした。
ーーー----------------ー-------
(不審者視点)
(や、やってしまいました…何も案が思い浮かばなかったとは言え、城の者達に何も告げずに王都へ飛び出してきてしまいました…)
そう、不審人物とは言わずと知れたこの国のお姫様なのであった。
玉座の間での会話を終了させて自室に戻ったリリアだったが、何も名案は生まれず、ましては頭の中で考える事はユウキ一色になってしまっていた。
これはいけない!と心の中で思っていても、いざ考えを戻そうとしても結局自分がユウキの元に行くための理由を考えてるのを思い出し苦笑する。
(そうでした…ユウキさんのことを考えるのやめようにも、ユウキさんと冒険に行きたい一心で王都から抜け出す策を考えているのでした…もう!どうしたらいいのですかー!)
一国の王女がベッドの上を頭を抱えながら転げ回る姿は、まさしく恋する乙女といった様子だが、王国の民には決して見せられないような醜態を晒していた。
実際にリリアに飲み物を運んで来た傍付きのメイドはドン引きしていた。
「ひ、姫様?何をなさっているのですか…?」
「ふみゅ〜っっ…ってラル!!?ど、どうしてここに!?」
「どうしても何も、姫様が飲み物を持ってきてほしいと頼まれたのでしょう?私はメイドとしてその要望に応えたまでです。まぁ、当の本人がそのことを忘れてベッドの上で転げ回ってるとは思いませんでしたが」
ラルと呼ばれたメイド服を着た少女のトゲのある言葉に、「む〜っ!」と唸ってはいるものの、それ以上注意したりしようとしないそぶりからも、普段からこの二人の仲の良さが窺える。
「それで姫様は、なぜ醜態を晒していたのですか?」
「しゅ、醜態!?ま、まぁ…ラルが相談に乗ってくれるのでしたらお話しします!」
「はいはい、それでどうしたのですか?」
「それがですね〜」
と、リリアが包み隠さず全てのことを話していく中で、ラルは全てを悟った。
(なるほど、姫様はその冒険者の事を好きになってしまわれたのですね。それで、その冒険者と一緒に居たいから、どうにか父親を説得してこの城から抜け出したいと)
流石、王女の専属メイドだけあり優秀な思考回路を持つラルは、はーっと深いため息を吐き返答待ちのリリアに軽い口調で伝える。
「姫様、うだうだしてないで今すぐ会いにいけばいいではないですか?」
「で、ですが、城を抜け出す上手い言い訳が思い浮かばなくて…」
「それは姫様がその冒険者の事で頭がいっぱいだからです。普段の姫様ならすぐに思いつくような事ですよ?」
「すぐに思いつく?」
頭がいっぱいは否定しないのですね…とラルは思う。一国の姫をここまで虜にした人物は気になりますが、ここは姫様の為に人肌脱ぎますか。
やれやれ、といった風にリリアの目を見て話すラルはおてんばな妹のお世話をするお姉ちゃんの様にも思えてくる。
「いいですか姫様、王にはこの様に伝えてください」
曰く、久しぶりの王都だから視察に行きたい。だが、リリアは疲れているからという理由で玉座の間から退席した。だから近いうちに行ってくると伝える。
そして見に行くときはお忍びで行く為に周りに護衛はいらないこと、自分の力でどうにかできる事を話す。
「そして、今から行けばいいのです」
「い、今から?」
「近いうちにが今日でもいいでしょう?」
ラルのそれがどうした?といわんばかりの物言いに、呆気に取られるリリアだったが、確かにそうだ、と思うのも事実。
「ありがとうラル!うじうじしてても仕方ないですよね!善は急げです!」
ありがとおおぉぉぉ…と部屋を飛び出し走り去って行くリリアに、「はぁ…」とため息を吐くラルだったが、その顔はどこか嬉しそうであった。
「姫様の初恋ですか…できればそのお相手の殿方を私も一眼見れるといいのですが…」
この時のラルは、まさか自分も共に行動する時が来るとは、思ってもいなかったのであった。
そして、冒頭に戻る
リリアはユウキの所在を知るために、北へ南へと奔走していたのだが、途中で見かけた冒険者ギルドを見かけた瞬間に思わずorzみたいな姿勢になってしまった。
(ああぁぁ…私は馬鹿です…ユウキさんは冒険者ギルドの依頼でゴブリンの討伐に来たって言ってたのに、それを今の今まで忘れて…と、とんだ無駄足でした!)
通行人からなんだあいつ怖い…といった視線がじわじわとリリアの精神力を削る。
だがしかし、そこは王女「はぅっ!」と呻きながらも私は王女!と自分を鼓舞しすぐに立ち上がり、全てユウキが悪い!と思う事にして冒険者ギルドの中に足を踏み入れた。
なんやかんやで、ユウキの情報を得て宿屋に辿り着き、徐に見上げていた部屋の窓越しにミスティの姿を見つけ、思わずニヤリと笑ってしまった。
(ふふふ…見つけました!私から逃げられると思わないでくださいねユウキさん…)
うふふ…と不気味に笑いながら宿屋に足を踏み入れるのであった。




