第12話 パーティーでの一幕
そしてその夜
勇者たちの歓迎会、並びにリリアの帰省を喜ぶちょっとしたパーティーが開かれていた。
「勇者様方、今宵は存分に楽しんでくだされ!我が国最高の料理人達が手によりをかけて作った料理、存分に召し上がってくだされ!乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
あちこちから楽しげな会話が聞こえる中、リリアはパーティーを抜け出すタイミングを思案していた。
(は、始まってしまいました…どうしましょう…まだ、ろくな案も浮かんで無いのにっ!このままでは、ユウキさんのところにいけなくなってしまいます…誰か騒ぎでも起こしてくれれば…)
と、リリアが一国の姫であるにもかかわらず物騒なことを考えてるところに、騒ぎを起こしてくれそうな者達の足音が近づいてきていた。
「おいおい〜、天空達でお姫様独占はよく無いんじゃないか〜?俺たちとも話そうぜ?」
「そうだそうだ、高田くんの言う通り!俺たちともお話ししましょう?お姫様〜?」
「高田、関根…お前ら…」
2人はニヤニヤとしながら近づいてき、不躾にもリリアの身体を舐めるように見ながら声をかけ、下心丸出しなのを隠そうともせずにリリアの神経を逆撫でしてきた。
(この方達は本当にユウキさんと同じ世界から来たのでしょうか?このような者達が勇者として召喚されてしまうとは…まぁ、このような雰囲気の者達は、貴族の中にもいますしここは穏便に済ませましょうか。)
「これはこれは、タカダ様にセキネ様。改めまして、リリアです。畏まらず、リリアとお呼びください。」
(本当はユウキさん以外には名前で呼ばれたく無いんですけどね!!)
このリリアの反応に、少なからず気があると勘違いした2人はニヤついた顔を、更に気持ちが悪い顔に変えた。
「じゃあリリアちゃん、天空達なんてほっぽっといて、俺たちと向こうで話そうぜ?」
と、リリアの肩に手を回そうとした。
「っ!触らないでください!!」
思わず、といった風に肩に触れようとしていた手を叩いてしまった。
突然のリリアの悲鳴に、しーん…と静まり返り、パーティー会場にいる者全ての視線がリリアの元に集まる。
「リ、リリアよ、突然どうしたのだ?何があった?」
この状況に、しまった!と一瞬顔を青くしたが、そこは流石王女だけあり、完璧に気持ちを切り替え、普段のリリアに瞬時に戻った。
「お父様…申し訳ありません。この方達が突然私に触れようとしてきたので、つい声を荒げてしまいました。」
「そうだったのか…だが、何もそこまで怒ることでもあるまい?この方達はこの世界を救ってくださるんだぞ?」
エギルが何もそこまでしなくても…という反応を示した為、ほんのちょっとやらかした!と思っていた高田と関根は、国王が味方だと思うや否や直ぐにニヤケ面を再開させた。
「そうですよリリアちゃ〜ん、俺たち深く傷ついたな〜」
「ちょっと別室でお話ししましょうよ?ねぇ?」
こいつらっ!!と怒りのままに魔法をぶっ放したい衝動に駆られたが、なんとか思い留まり、言葉を紡いでいく。
「お誘いは嬉しいのですが、恋仲でもない女性に触れようとしたり、あろう事か自室に誘い込もうなどと考えているような、下心丸出しの方とこれ以上お話しなどしたくございませんので、申し訳ありませんがお断りさせていただきますね。」
何者も寄せ付けない、そんなリリアの今まで感じたことのない雰囲気に、エギルは勿論の事、普段のリリアを知る者達も大いに慌てた。何故、姫様はここまでお怒りなのか?と…
それは、リリアのユウキを思うが故の行動であるとは誰も知らない事なので、仕方ない。
だが、リリアもこれが高田や関根で無ければ、もう少しマシな対応をしただろう。
リリアはパーティーが始まる前、エギル達との話が終わった後、城を抜け出してユウキに会いに行っていたのである。
(ユウキさんはこの者達の悪意に晒されて傷ついた…でも、ユウキさんは優しいからそれすらも許してしまっていた。優しいが故に自分が傷ついている事に気づいていない…なら!私がユウキさんの心を守ってみせる!)
リリアの目には強い意志が宿っていた。
(ほぉ…良い目をしている。魔法学院に入学させたのは間違いではなかったらしいな。)
エギルはリリアの目を通して、娘の成長を感じ取ったが、まさかユウキの影響などわかるはずもなかったのだった。




