第96話 予選初日
本日2話目になります!
A〜Lまでの計12グループがそれぞれ1試合ずつ交代で行われる。
時間の都合上予選は1vs1ではなく、4人纏めて舞台へと呼ばれるのだが…
今俺の目の前にいる3人は全員同じ顔だった。
「俺は夢でも見てるんだろうか?」
「これより、デルタvsモブワンvsモブツーvsモブスリーの試合を始める!!」
「「「はい!」」」
「え、えぇ…うそーん」
どうやら夢では無いらしい。
「では、試合開始!!」
ゴーンッ!!
ゴングが鳴らされ試合が始まる。実況の声が魔法で拡声してるのか会場中に響き渡り、観客の熱狂を煽っていた。仕事してんるのなイリヤさん…
「俺たちは三つ子!」
「ルール上一つのグループに集まったのは仕方ない!」
「とりあえずお前を連携技で倒す!」
勝手に自己紹介を始め、勝手にスリーマンセルを組むと俺に宣言してきた。
「あっ、どうぞお勝手に…」
「ふんっ、その余裕!」
「いつまでも続くと!」
「思うなよ!!」
「いや、めんどくせぇな!!いちいち台詞を分けるな!」
「「「だが、断る!!」」」
3人同時に走り出し、各々の得物で俺に斬りかかってくる。
「ふむ、んじゃ3人同時に黙らせるか」
「「「え…?」」」
ぐらり…3人が同時に白目を剥き倒れ伏す
「し、試合終了!!勝者…デルタ!!」
静まり返る会場
誰しもが何が起こったか理解していなかった。
「か、解説のイリヤさん…い、今のは…?確か彼はイリヤさん推薦でしたよね…?」
「こ、これは…僕もよく見えなかったけど…手刀じゃないかな?首に手を当てる所しかわからなかったよ…」
各所でザワザワとザワメキが起きる。
「やりすぎたか…?これでもスキル禁止にしてるんだけど…」
スキル禁止にした所でレベル9000越えのチート戦力である事に変わりない。
「え、えーと…何々こんな事もあろうかと、スロー映像があります!だそうです!!こんなものいつ作ったのですかね?」
「さぁ…?ふむふむ、どうやらコレは観戦に来てるアメジスティア国王からの差し入れらしいよ?」
「おー!アメジスティア国家お墨付きって事ですね!!では、先程のシーンをスローで見てみましょう!」
え?なんでアメジスティアにそんなものが…?と一瞬思ったが俺が作ったんだった…
俺の動きがスローで流される…いや、スローでも所々しかわからなかったな…
「うん、三発手刀を繰り出して元の位置に戻ってるだけだねコレ…早すぎてスローの意味がほぼ無かったね…」
「そ、そのようですね…ですが今後の試合で有効活用できる事は間違い無いです!最初から渡してよ!と思わずにいられない実況席でしたー!」
随分正直な実況だな…自分の内心吐露しすぎだろ!?と思ったけどどうやらこの世界で人気のアイドル実況らしい。可愛いのかな?後で見に行ってみよう、そうしよう。
敗者そのまま解散となり、勝者は控え室で待つ管理者に報告をし退室する。
「んーと、リリアの試合はまだ見たいだし…みんなと合流して観戦でもするかなぁ…」
控え室を出た俺は、途中の売店で飲み物だけ買ってみんなの元へと向かう。
そして待ち伏せされていた…
「ふっふっふ…待ってたよユウキくん!」
「ゆうちゃん?この後空いてるよね?」
「今日はもう疲れたんだけど…主に精神的に…」
まさかのラスボス出現にげんなりする。
「空いてるけど二人ともこの姿の時はデルタって呼んでって言ってあったよな…?無視していいの??」
「ご、ごめんなさいデルタ…」
「ゆう…デルちゃん?…言いにくいわね…」
仕方ないので二人を連れた観覧席へと向かう。
「あっ、二人が素顔のままなの不味いから、コレ頭につけといてくれ」
「え、あっ!コレみんな付けてるやつ…?」
「ユルちゃんからプレゼント…嬉しいなぁ」
「……一応似た作りだけどあれは俺のクランの紋章が刻まれてるから、コレは紋章無しのバージョンだな」
雪姉…?ユルちゃんって誰…?
もう突っ込むのもめんどくさい俺はスルーし、観覧席に辿り着く。
「ういー、みんな居る?」
「あっ!マスターお疲れなのです!げっ!?モミジにユキが居るのです…」
「げっ?て何かしらミスティちゃん??」
「マ、マスター!この前の仕返しをしたのです…?」
「あっ、忘れてた…丁度個室だし…」
「わ、私たちは離れてましょうね」
「ん?お兄ちゃんどうしたの?」
「おー♪パパー!ルビーもやるー♪」
「おーし!んじゃルビーに任せた!」
くっくっく…丁度ストレス溜まってたし…昨日の夜の鬱憤も纏めてここで消化してやる!!
「……も、もうやめへぇ…」
「ご、ごめんなさいぃ…反省しましたぁ…」
事後の二人はヘロヘロになりながら床に転がっている。やはりビリツンには誰も勝てないようだ…
今度あいつでも試そっと…
「ツン…パパー!ビリビリ終わっちゃったー!」
「おっ、ご苦労ご苦労!二人とも俺が女になってた時の仕返しを堪能できたか?」
「あ、あれは…ユウキくんが可愛いのが悪いっ!」
「そ、そうよ!なのにこの仕打ち…私はそんな子に育てた覚えはありません!」
なるほど、此奴ら全く反省していない…
「……ルビー、ミスティ…任務を与える」
「なーにー?」「どうしたのです?」
「この感度5倍のスティックを二人にお見舞いしてやるのだ!!」
「「や、やめてぇぇぇえええ!!」」
再び室内に二人の嬌声が響く…なんか途中から喜んで無かったか?
防音結界を張ってるおかげで外にこの声が漏れる事は無い。こんな声誰にも聞かせられないからな…
「あなた…リリアちゃん出てきたわよ?」
「おっ、本当だ…おーい、ルビー!ミスティ!リリアの番だぞ!」
「おー!リリアお姉ちゃんの試合見るよー!」
「リリアー!頑張るのですー!」
ビクンビクンしてる神咲と雪姉を放置し、ちゃんと観戦する。スマホのカメラを起動し、リリアの勇姿を録画する。
俺の気分は運動会のお父さんそのもの…成長した我が弟子の活躍をこのスマホに残すぜ!
「く、くぅ…リ、リリアさんって闘えるの…?」
「はぁ、はぁ…んんっ…リリア王女は魔法学院に通ってたって聞いたけど…この大会は身体強化魔法以外禁止よ?大丈夫なの?」
妙に艶っぽい2人が俺の足にしがみついてくる。なんでもじもじしてるんだろ?
「あー、そうだなぁ…見てればわかるけど今のリリアは魔法も剣技も使える魔法剣士だよ」
「ん、リリアお姉ちゃんは強い」
「…あなたの鈍さって凄いわよね…」
「ん?ローズ何か言った?」
「なんでも無いわ…それより2人ともちょっと来なさい…」
「?試合始まるぞ?」
「この2人はそれどころじゃ無いだろうし…後で録画したの見せてもらうわね」
「そうか?まぁ、了解…」
ズルズルと引きずられて行く2人を見送り、丁度ゴングが鳴らされた。
「ふむ、相手は大剣、曲刀、ハンマーか…曲刀がめんどくさそうだな…」
「リリアの使う剣は細剣…大剣にハンマーも相性が悪くないのです?」
「そこら辺は身を持って体験してもらってるから対処できるだろうけど…曲刀を使って相手した事ないから勝手がわからないだろうからな…」
「ん、面白い剣。お兄ちゃんも使える?」
「使えるには使えるぞ?使い所は無いけどな…」
まさかこの世界に曲刀使いが居るなんてな…
「あっ!曲刀使いが動いたのです!」
「ん、大剣の人の所へ行った」
「ハンマーの人も動いたよー!」
3人が楽しそうに解説し合ってる。なんかほのぼのするなぁ…削られたSAN値が徐々に回復してる気がする…
「あっ…曲刀使いがリリアに吹っ飛ばされたのです…」
「ん、呆気ない」
「弱かったねー!」
哀れ曲刀の人…
一瞬で傍から詰めたリリアの一撃を受け、場外へと吹き飛ばされる。
「あっ、終わっちゃったのです…やっぱ予選はこんなものなのです?」
「ん、みんな弱かった」
「おー、あっという間だったねー」
「みんな容赦無いな…」
「どうやろ間に合わなかったみたいね…」
「えっ!あれ!?もう終わっちゃったの!?」
「見れなかった…ゆうちゃん、リリア王女は勝ったの?」
「ん?勝ったぞ!それより2人はどうしたんだ?」
「「気にしないでください…」」
「はぁ…?まぁ、いいけど…?とりあえずリリア迎えに行って帰ろうか」
俺たちは部屋を出て受付のお姉さんに鍵を返す。
「あっ!!!皆さん!!私勝ちましたよーーっ!」
俺達を発見したリリアが駆け寄って来る。
「おっ、リリアお疲れ様…結構あっという間だったな?」
「リリアお疲れ様なのです!」
みんなそれぞれ労いの言葉をリリアにかけ、移動を開始する。
「あれ、2人はソラの応援に行かなくていいのか?」
ふと思った疑問を神咲と雪姉に投げかける。
「「あっ、忘れてた」」
どうやら素で忘れていたらしい…
はぁ…哀れ勇者よ…
この世界を救う為に召喚された勇者は、仲間に忘れられる程影が薄いらしい。
きっと忘れてるのはこの2人だけだろうけどな…
こうして大会初日は無事終わった。
明日、残りの予選を経て決勝トーナメントが始まる…どんな強者と闘えるかな?今から楽しみだ!
まだ見ぬ強者との対戦を心待ちにする俺は、その願いはなかなか叶わない事を後に知るので合った。
次の更新は明日の正午になります!
やっと大会が始まった…まだ三章終わらない…
文字数少なすぎて一月で終わらなかった…後15話くらいかなぁ…蓋開けて見ないとわからないですね…




