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せっかくの異世界転移なんだし、モデル歩きで壁登りしたいよね?

 本館の前は厳重な警備だった。

 ハルバードを持った重武装の騎士たち、その後ろにはローブを着込んだ魔道士、さらにその後ろには一発で首がもげそうな大きな弓を構える弓兵がいた。

 ポケットを漁ると出てきたのは【自爆ボタン】と書かれたスイッチ。

 外観は黒と黄色の危険信号のカラーリングで、アクリルで赤いボタンが覆われていた。アクリル板ごとボタンを押すようだ。背面にはなぜかUSB端子がついている。

 俺はもうやることがわかった。

 アクセルを拾った木の枝で固定すると、そのまま操縦席から飛び降りた。怖い怖い怖い!

 土の上でゴロゴロ転がり勢いを殺す。ひいいいいいいいいッ!

 足が痛い。もうあたしプリマドンナになれない……。

 何とか止まって身を起こすと、ロードローラーは騎士たちに接近していた。

 本館の護衛はエリートの中のエリートなのだろう。騎士たちは密集し鋼鉄の盾を構えた。魔道士はなにやら呪文を唱えると騎士たちの盾が青白く光る。弓兵も呪文を唱え矢を光らせていた。

 だがそんなことは拉致された高校生、ましてやお仕置き要員である俺の知ったことではない。

 はい、ぽちっとな。

 ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんッ!

 衝撃で俺は吹き飛ばされ、宙を舞っている最中にキノコ型の爆破雲が見えた。

 おーい! ちょっと待て、らめ、らめええええええええええ!

 どすん。落ちたときに脇腹を強打しおえっとなる。

 普通なら骨の一つや二つはやられている。だが怪我一つしてない。さすがチートマシマシだ。

 騎士たちはもっと悲惨だった。おっさんたちが最弱の男のごとく寝転がっている。全裸で。この爆風でもグロ回避! 実に優秀である。

 本館の門はひしゃげていた。ひしゃげた程度だった。

 思ったより被害が少ない。魔力的な防御がされているのだろう。

 俺は本館を見る。また騎士が出てきたら面倒だ。

 あれやっちゃう? ねえアレ。やっちゃおうっと!

 俺は本館の壁を蹴飛ばす。足がズブリとめり込んだ。

 よしいける。足を突っ込んだままもう片方の足をズブリ。

 そのまま某吸血鬼のように壁を登っていく。ふはははははははははー!

 なお腹筋がピクピクしている。それでも俺はモデル歩きで壁を登っていく。

 最上階に着くと俺は足を踏みならす。

 ドガンと言う音とともに壁が壊れる。俺はモデル歩きをしながら、本館の中へ悠然と侵入する。

 そこは大きな部屋だった。おそらくは玉座の間だろう。

 怯えた視線が俺を囲んだ。そこには十数人の男たちがいた。

 男たちの顔に映るのは恐怖。

 俺の頭の中に某将軍のテーマが流れた。


「ひい! き、きたああああああああ!」


 俺の近くにいたおっさんが叫んだ。

 俺は襟をつかんでオッサンを引き倒す。

 そのまま笑顔でポケットからラバーカップを出す。

 大きく踏み込んでフルスイング! ホームラン!

 俺が入ってきた穴からおっさんは飛んでいった。


「オズワルド伯爵ーッ!」


 いきなりの暴力におっさんたちが叫ぶ。

 俺は笑顔のまま、おっさんたちに質問をした。


「帰る方法は?」


 男たちは息を呑み、静かになる。

 あ、そう。そういう態度なわけね。お仕置き決定。

 俺はラバーカップを無駄に光らせながら振り回す。

 そして近くにいたおっさんを雑に殴る。

 ドカンと壁を突き破っておっさんは星になった。

 さてもう一度。


「帰る方法は?」


「ま、待て! 喚ぶ方法はあっても帰る方法など……」


 それはわかっていた。異世界転生、それも集団転移のお約束だ。

 だが召喚しておいてその態度はないと思うのだよ!


「成敗!」


 俺はラバーカップを投げつける。

 ラバーカップは答えていたおっさんの顔面に命中。

 おっさんはそのままはじき飛ばされ、壁を突き破って星になった。


「や、やつは聖剣を捨てたぞ! 今が勝機だ! 皆でかかれば……」


 バカどもめが!


「誰が一つだけだと言った?」


 俺は手を前でクロスさせる。

 なんとなくわかってきた。

 俺のチートは思い通りに力を発現させる能力だ。

 俺のまわりに無数のラバーカップが出現する。


「秘技、千なんとか便器スッポン!」


 俺は近くにあったラバーカップを手にする。


「ひ、ひいいいいいいいいッ!」


「成敗!」


 スッポン!


「や、やめてくれ! 本当に帰る方法なんて、ひぎゃああああああ!」


「成敗!」


 スッポン、スッポン!


「ほ、本当なんだ! 戦争に勝ちたかっただけなんだ」


「成敗!」


 スポポポーン!

 面倒になった俺は両手にラバーカップを持っておっさんたちに襲いかかる。

 あるものは顔面をラバーカップでスッポンスッポンされ、またあるものは星になった。

 最後に残るのは玉座に座る汚いおっさん。たぶん国王、ただ一人。くわッ!


「わ、我を倒そうも我が子たち貴様を必ず討ち果たすだろう」


 どこの魔王だ! 俺は心の中だけでツッコミを入れた。

 せめてもの抵抗なのだろう。国王は俺を脅したのである。

 あ、そういうのいいですから。いらないんで。効きませんので。

 だから俺はそれをせせら笑った。

 ちょっと追い込んでくれる!


「あははははは! おっさん、お前にだけは教えてやるわ。実は俺、お前らの喚んだ異世界人じゃないんだわ」


 国王は目を見開く。

 口は半開きになり、その目は狂気をまとっていた。


「俺はこの世界の神にお前ら人間をお仕置きするために雇われた人間なんだよ!」


 国王は血走った目で怒鳴った。


「な、なんだと! まさか神がそのような! 我らこそ神の末裔だというのに、神は我らをお見捨てになったのか!」


「そりゃあ、他の世界の人間を召喚してポイ捨てしてれば、他の世界の神が怒るだろうに。お前らはもう神に見放されたんだよ!」


「我が世界の神はあらゆる神に勝るというのに。なぜだ! 愚鈍な異世界人などいくらでも使い捨てにしてもいいはずだ! なぜそんな小さな事で神がお怒りになるのだ! 理屈が合わぬではないか!」


 ああ、ダメだこりゃ。反省しないタイプだわ。

 ムカつくからそろそろ退場してもらいましょうね。

 俺はブンッ、ブンッとラバーカップを素振りする。


「はいはい。ちょっとでも反省するかなあと思った俺がバカでした。最後に、本当に帰る方法はないのかな?」


「ふははははははははは! バカめが、最初から貴様らを帰す気などない! 用済みになったら処分するのだ! くははは! ぐははははははは!」


「そうか。じゃあ歯、食いしばれ」


 俺はそう言いながらも歯を食いしばる間も与えず、大きく一歩踏み出しラバーカップで国王の顔面をフルスイングした。

 角度よし。速度よし。

 宇宙に突入できる角度でホームラン。

 そして成敗には超必殺技が必要だ。必要なのだ。

 俺は適当にポーズを取る!


「超必殺! ラーバーカップ・エクスキューショナー!」


 俺が王様の飛んでいった方を指さす。

 すると無数にあったラバーカップが光りを纏い、爆炎をあげながら空へ飛んでいく。たぶんホーミングだ。

 ぼふーん!

 数秒後に空が赤く光り、ジャッジメントデイっぽい爆発雲が見えた。後はシラネ。

 王は宇宙空間で考えるのをやめるんじゃね? たぶん。

 とにかく悪は滅んだのだ。

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