ロードローラーはおやつにはいりますか?
兵士と共にロードローラーに乗った俺は外へ落下する。
そのまま華麗に着地。
だけどケツに深刻なダメージ。
どすんごきり。あふん!
痛くないもん。おっさん偉い子だから我慢するもん。
外に出るとまわり一面を騎士が囲んでいた。
後方には槍を構えた兵隊や、ローブを着た魔法使いと思われる集団もいる。
はい確認。エルフいない。けも耳いない。皆殺し確定。
「止まれ! 今なら命だけは助けてげぶらッ!」
「成敗!」
もちろん最後まで言わせない。問答無用でアクセルを踏んだ。
ぺちゃくちゃしゃべってた騎士が星になる。
「うーん? 聞こえんなあ!?」
俺ははね飛ばしてから耳に手を当てて、暴君ぶってみた。
『そういやなぜか言葉通じてるな』とか余計な事を考えながらの三文芝居なれど効果は絶大。
理不尽な暴力の前に騎士たちは動きを止めた。
だから問答無用でアクセルを踏み突撃。そしてそのままドリフト! さらに数人を星にする。
ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる!
俺の頭の中に、なんとか警察のテーマが鳴り響く。
やっていることは世紀末なのに。
「貴様ぁ! 騎士の作法をぶべらッ!」
どごん。
俺はしゃべったやつからはね飛ばしていく。
お前らの安っぽい台詞など聞きたくない。
俺は単に怒っていただけだが、心理的効果は絶大だった。場を恐怖と絶望が支配したのだ。
「く、弓兵! 魔道士も魔法を撃て!」
重武装のおそらく兵士と思われる男が叫んだ。
おっと、比較的冷静なやつがいた。
飛び道具は厄介だ。
弓兵がつがえた矢を放した。
魔道士たちは炎を発射する。
ロードローラーの屋根に矢が刺さり、炎で前が見えなくなる。
煙が車内に入ってきて、煙で目が痛くなる。
いでででで。目がぁッ! 目がぁッー! しみるー!
こういうときは不思議な道具の出番だ。
ポケットを漁る。筆箱が出てきた。
缶や布じゃなくて、プラスチック製の無駄にゴツイやつ。
鉛筆削りとかが無駄についてて、定規とか収納できるやつ。おっさんが小学生だったときに男子が使ってたやつ。
裏を見る。【やまだはじめ】と名前が油性ペンで書かれている。誰だよ! 中古品じゃねえか!
実に懐かしい。俺も中に小さくなった鉛筆をためて怒られたっけ。
俺は中を開く。ぱかり。
中は小さくなった鉛筆でぎっしりだった。
あ、なんとなくわかっちゃった。
俺は筆箱を放り投げた。
筆箱から眩い光がほとばしり、炎を噴射しながら鉛筆が空を飛ぶ。
最近の鉛筆はジェット燃料で空を飛ぶらしい。おじさん知らなかった。
鉛筆が後方の部隊へ降り注いだ。
ちゅどーん!
笑えるほどの爆発。それは一方的な蹂躙。
爆発に巻き込まれた魔道士や弓兵たちが吹き飛ばされていく。なぜか全裸で。もちろん女子などいない!
煙とビジュアルの暴力が俺を襲う。
目がショボショボするっす。
「え……?」
騎士たちは後方の惨状を見て固まっていた。
まさか一瞬で蹴散らされるとは思ってもいなかったのだろう。
このポケットから出てくるものは、絶対に嫌がらせだと思う。
でもやめない。
俺はポケットを漁る。しゅるしゅる。
長いものだ。ゴム?
平べったくて長いゴムだ。
なんとなくわかった。なるほど、これは伝統芸能だ。
俺はゴムを投げる。
ゴムは自動で騎士の口に入っていき勝手にくわえる。
どことなく過程はホラー映画っぽいが気にしたら負けだ。
「な、なに! 勝手に口がごにょごにょ……」
騎士は意思に反してゴムを全力で噛みしめる。
そしてゴムのもう一端が俺の手元に戻ってくる。
噛みしめた口と、俺の手元、その間のゴムは大きく伸びていた。
俺はほほ笑む。これは一つしかないでしょ。
「はなしゅなよ……はにゃしゅなよ!(離すなよ! 離すなよ!) にゃ、にゃめろ! にゃめてく」
もちろん離す。容赦なく。
スパコーンッ!
顔面に当たったはずなのになぜか部位破壊。騎士が裸になる。
騎士はゴムパッチンの勢いで飛んでいった。全裸で。ぷらぷらさせながら。
庭の地面にぶつかりバウンド、そのままお空に飛んでいく。そして星になった。
それを見た騎士たちの顔が青ざめた。
ヒザがガクガクと震え、ひっ、ひっ、とえづいている。
他人様を拉致しておいて、なにその態度!
お星様になる覚悟のあるものだけが、召喚拉致をしていいのである。
だから俺は騎士へ無情な判決を出す。
「成敗!」
アクセル全開。ロードローラーが騎士たちに突っ込む。
ゴムパッチンが面倒だったのだ。
残りの騎士たちも一瞬で星になった。
一方的な蹂躙の前に騎士たちは敗れ去ったのだ。全裸で。
騎士を倒すと学生たちが外に出てきた。
「みんな、逃げるんだ」
「真鍋! お前はどうするんだ!」
「そうだよ真鍋くん! 一緒に逃げようよ!」
「真鍋! 頼む、逃げてくれ!」
どうやら学生たちは気のいい連中のようだ。
俺のリアル高校時代はすぐにナイフを出すクソヤンキーしかいなかったというのに……。
君らは生き抜くんだ!
「俺は国王に落とし前をつけさせる。その間にみんなは逃げるんだ!」
「ま、真鍋えええええええええッ!」
感動である。
熱い友情、涙。別れの喪失感。そこには全てあったのだ。
俺はアクセルを踏む。
国王をぶっ殺してくるぜ! そしたら俺、エルフの嫁を探すんだ!
死亡フラグ立ててみた。