表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

第一王子(笑)

 本館に飛び込むと軽装の兵士がいた。

 まあそりゃフルアーマーで室内をフラフラしてるわけがないか。

 元の世界でも軍人だからといって30キロの装備を常に着用してるわけがない。

 当たり前だわな。

 俺はしゃがみながら近寄る。

 ……ってなぜゲームみたいな動きをしてるのだ!

 逆におかしいだろが!

 と思いながらも心の中でバックスタブボタンを押す。

 スリーパーホールドをかけながらリーマン靴下(使用済み)を背後から口に押し当てる。


「ふごぉ! ふごぉ!」


 兵士はすぐに動かなくなる。自分でやっておいてなんだが……むごい。

 俺は兵士を中腰のままかついで……ってなんでこんなことができるんじゃー!

 そのままかついで空き部屋に放り込む。

 すると大声が聞こえてくる。


「くそ! ドラゴンだ! ドラゴンが攻めてきたぞ!」


 俺はローリングして兵士を放り込んだ部屋に入る。

 だからなんでバレないのよ!

 明らかにおかしいじゃん!

 ドン!

 俺がツッコミを入れていると館が揺れる。

 ガラガラと壁が崩れ、破片が落ちてくる。

 ドラゴンの攻撃が始まったらしい。

 俺は不自然な中腰で歩き、孤立した兵士を見かけたらリーマン靴下で黙らせる。

 そして最上階に辿り着いた。

 最上階は身分の高い人間が使う場所らしく、絵画や花で飾られていた。

 よーし、おじさん王子を拉致しちゃうぞー!

 俺が中腰でいると兵士たちが見えた。今度はちゃんと武装している。

 ドラゴンの攻撃への対応業務に違いない。

 よく見ると一番後ろに輝く高そうな衣装を着た少年がいる。金髪の超絶美少年だ。高確率で王子だろう。

 憎い……未来があるという若さと、金と権力と、女を食い散らかすその美形が憎い。

 俺が持っていないものをすべて持っている。それだけで憎むには充分なのだ。

 俺は道具を漁る。リーマン靴下にボンベがついた謎物体。

 だが俺はわかってしまった。こいつはおっさんグレネードだ……。

 水虫のついた足のフレグランスで敵を行動不能にするのだ。

 だれかお父さんにブテナフィン配合の水虫クリームあげてー!

 俺は心で涙を流しながら兵士の集団にグレネードを放る。

 俺は兵士たちが沈黙したのを確認すると王子に近づく。


「貴様は俺を怒らせた!」


 ビシッと指をさす。……キマッタ。

 そう、今なら催眠術を操る体育教師がなぜ委員長の彼氏へビデオを送りつけるかわかる。

 憎い……。その美形が憎い。女の子みたいな美形が憎い。サラサラヘアーが憎い。すべて奪ってくれる。

 俺は拉致しようと手を伸ばす。

 ばしゅッ!

 指が飛ぶのが見えた。俺の。


「うぎゃああああああああああああああああああッ!!!」


 痛い。マジで痛い。

 回復回復回復!

 俺が願うと指がにょきにょき生えてくる。


「ふう、マジで痛かった! ラブレターをクラスメイトの前で朗読されたときよりも痛かったぞー!」


 あ、そっちは心が痛かっただけか。

 前世のクラスメイト。みんな不幸な事故で死んでないかな。なるべく惨たらしく死んでくれたらいいのに。


「く、貴様が賊か!」


 男にしてはやたら高い声。アニメ声とも言う。

 それは王子の声だった。

 それにしてもやっぱりコイツ美形だわー。

 うらやましいわー。マジやってられねえわー。

 だが俺はこいつを捕まえねばならない。


「俺たち転移者の身の安全のために人質になってもらう」


 最低のセリフである。でもこれが現実ってやつよ。


「異世界から連れてきた奴隷か。確かに野蛮極まりない因習だが……だが私は第一王子として貴様らを斬らねばならん」


「ですよねー。こちらもお前を捕まえて、穴という穴にすげえことした画像を国に送りつけてやんよ!」


 ただの口から出任せだからね!

 これはあくまで策なんだからね!

 男にそんなことする気なんてないんだからね! ホントよ!


「す、すごい……」


 王子は顔を赤らめる。

 やめて変な気になるから! マジでそういうのやめて!

 ていうかコイツMだろ! ねえMでしょ!?

 だめだ、さっさと倒そう。俺の精神がおかしくなる前に。


「おどりゃあああああああ!」


 俺はポケットから武器を抜く。

 たのむ! まともな武器よ。出てくれ!

 しゃきーん。

 それは光り輝いていた。

 輝く……エネルギーブレード。

 完全に殺る気満々である。


「な、なんだ……それは……」


 驚く王子に俺は真面目な顔をして言った。


「服だけ破く聖剣だ!」


 くわッ! 俺は目を見開いた。

 服だけ破く聖剣。本来ならくっころ女騎士に使う武器と言えるだろう。

 だが俺は、俺は目の前の王子が憎かった。王子はなにも悪くないけど憎かったのだ。

 イケメンが憎い。金持ちが憎い。恥をかかせてくれる! 転移者の嫉妬、憎悪、醜悪な根性を見せつけてくれる!

 貴様を社会的に抹殺してやる!


「きええええええええええええええいッ!」


 俺は聖剣を振りかぶる。


「ええい! この変態めが!」


 俺たちは激しく剣を打ち合う。

 剣の熟練者にスピードで追いついている。なるほど、レベルが上がったのだろう。

 中腰で消えることができるし……そうか!


「ふん!」


 俺は大きく振りかぶり、全力で剣を叩き込む。

 もちろん王子にブロッキングされる。だが俺のフルパワーは王子を跳ね飛ばした。

 そして俺はそっと中腰になる。


「き、消えた!」


 王子は驚いていた。

 俺はFPSのごとき不自然な動きで後ろに回り込む。

 そして服だけ破く聖剣で尻をサクッと刺した。

 パンッ!

 鎧と服が弾け飛ぶ。ほう、やはり鎧も服に含まれるのか。

 ぽよん。

 尻が揺れた。

 おい、やめろ! そんなベタはいらない!


「うおおおおおおおおおおおッ!」


「きゃあああああああああああッ!」


 王子は振り返った。

 オウ、メロン! もしくはスライム!


「み、見たな……」


 王子は隠そうとせずに言った。


「ナニモミテナイヨ」


「く……これから私は野蛮ない世界人に連れさらわれ、昼夜を問わず慰み者にされ、親のわからない子を孕むのだな」


 なにそのエロゲ!


「そう! 女として! 女として!」


 あれ……なんかテンションがおかしい。


「はあはあ、17年間考えてきた妄想を全部ぶつけてもらえるのだな」


「それじゃぽく、みんなが待っているので帰ります」


 がしり。

 肩をつかまれた。


「待て、女に恥をかかせるというのかね?」


「王子様はオトコダヨ?」


「ふ……」


 色っぽくほほ笑む。


「とりあえず、外に出ようか」


 ギリギリとつかまれた肩から音がする。

 まあ、すごい握力!

 俺はびびった。


「あ、はい」


 怖い。カツアゲされてる中学生みたいに俺はなっていた。ふぁっく!


「とりあえず脱げ」


「え、なんで?」


「女の子を素っ裸で連れ回すのが異世界流なのかな? なあ!?」


 ぎりぎりぎりぎり。

 肩が! 肩がああああああああああッ!


「あ、はい。脱ぎます。パイセン」


 俺はパンツ一丁になった。パンツだけは泣いて許してもらった。

 王子は俺の学ランを奪い取るとささっと着替える。


「これをつけろ」


 首輪。


「え?」


「腰巻き一丁の不審者が歩いていたら目立つだろ? わかるな?」


 わからないが従おう。怖いから。


「はい……パイセン」


 俺は首輪をつけられ、パンイチで館を歩く。


「お、王子はどこだ!」


「どこにもいません!」


「ぐあああああああああ!(責任者だせー!)」


 兵士もドラゴンも首輪プレイ中の俺たちに構っている暇などなかった。

 誰も王子と不審者だと気づかない。というか誰も目を合わせない。

 俺たちは誰にも気づかれずに外に出てしまった。

 俺は首輪をつけられたまま森に入る。

 すると王子が俺を見つめる。

 目にハートマークが出ているような気がするが、アダルトビデオじゃあるまいし……ねえ? ないよね?


「さて……、まさかこのような場所で処女を散らすとは思わなかったが……ふふふ、あの小説によく似ている……」


「パイセン。不穏なセリフが口から漏れてますが」


「エリザベスと呼べ。私の本当の名前だ」


「エリザベスパイセン。ボクも初めてなのでマジ勘弁してください。あの甘ラブが僕たちには必要だと思うのです」


「ふふふ、せめて敷物が欲しいな」


 聞いてねえ!

 嫌な予感がする。


「ほう、天使様。そのような使い方が!」


 エリザベスはなにかと交信しながら、学ランのポケットに手を突っ込む。

 天使の野郎! 余計な事をエリザベスに教えやがったな!

 絶対に仕返しするからな! お前、本当にふざけんな!

 俺がキレてるとエリザベスはポケットからウォーターベッドを出した。ホーリーシット!


「ふふふふふふふふふ」


「あ、あのよく知り合ってからで……」


 ばふん。押し倒される。


「ふはははははははははー! ポチッとな!」


 エリザベスは学ランのポケットから出したなにかのボタンを押した。

 すると四方が銀色に輝く物質で覆われる。


「これで誰にも邪魔されない」


 さらにエリザベスはポケットに手を突っ込む。

 そして禍々しい、名状できないなにかを取り出す。

 え、なに!? なにが起こるの!? 聞いてないよ!?

 ポケットから出てきたものは描写できない。

 ただ……天狗の鼻とだけ言っておこう。


「私に勝利した異世界の勇者よ! さあ逝こう! 愛と快楽の極北へ!」


 エリザベスが男らしく服を脱いだ。


「なんで貴様はそんなに男らしいんだあああああああああああッ!」


 さてその後の描写は警告来るから省略させてもらう。

 ただ砦がドラゴンによって灰になるくらいの時間が経ったとだけ報告しよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ