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いいか火炎放射器撃つなよ! 絶対に撃つなよ!

 森で高校生たちを降ろす。

 そのまま俺はバスで北の砦を目指す。

 このままの速度なら夜には到着するだろう。

 だが……。


「……なぜいる?」


「俺たちズッ友だろ?」


 福本が親指を立てる。

 まあ、いいけどさ。


「そうだよ。友だちでしょ!」


 高藤も福本に同意する。

 女の子には怪我させたくないけど、本人がいいっていうならいいけどさ。


「わ、私も友だちですから!」


 加藤の声がスピーカーから響く。

 どうやら通信装置があるらしい。

 このバスを動かすには加藤の演奏が必要だけど、俺一人なら別の車両を用意すればいいのに……。

 なんだから悪いことをしてしまった気分だ。


「今は燃料いっぱいだから、加藤は休んでて」


「は、はい! じゃあ蘇我さん中に入ってますので後はお願いします」


 ちょっと待て、今何つった?

 蘇我がいるだと?


「ふふふ、火炎放射器はまかせろ」


 蘇我……お前は単に火炎放射器撃ってみたいだけだよな。

 なんだろうか。この濃いメンバー。

 思ってたのと違う。


「あの……私もいるのですが……」


「マリンさんはいてください。場所がわからないので」


 けも耳は常に正義。

 けも耳で未亡人……パーフェクトだ。

 復讐は遂げさせてやろう。

 さて、砦に行くには関所を通る必要がある。

 一つしかないので内政は安定しているのだろう。

 関所が見えてくる。


 当然、突っ込んでから焼き尽くす。


 俺はアクセルべた踏みで石壁に激突する。

 脳内BGMは某将軍様である。

 ドゴンと音がしてバスが壁を突き破った。


「ふはははははははははー! 燃やせ! 燃やせー! あははははは!」


 蘇我の興奮した声がスピーカーから聞こえる。

 元気なようだ。気絶でもしてくれればいいのに。

 砦の中は簡素な建物が……次々と炎に包まれていく。

 鎧を来た騎士や兵士が逃げ惑う。

 正直言おう……ざまあ!

 もうね、異世界開始1分でこの国の好感度は0よ!

 あのバカ国王を信奉してた連中は、少し理不尽を味わって辛酸をなめた方がいい。


「力も使うぞ!」


 次の瞬間、爆発音とともに小屋がふき飛んだ。

 蘇我は火を見ると性格が変わるタイプのようだ。

 死人が出そうなので、俺もチートを発動する。


「ラーバーカップ・エクスキューター!」


 バスのまわりに聖剣ラバーカップが出現する。

 ラバーカップが飛んでいく。

 当然のように自動追尾だ。


「「ひ、ひい、やめろ、やめろおおおおおおおおお!」」


 すっぽんすっぽん!

 さらに俺はもう一つの能力を使う。


「リーマン靴下・デッドエンド!」


 黒色のくたびれたリーマン靴下がバスのまわりに出現し、飛んでいく。

 こちらは爆発効果つきだ。


「成敗!」


 ちゅどどどどどどん!

 その場にあったありとあらゆるものが爆発に巻き込まれる。

 爆風で地形がゆがみ、建物は崩れる。

 騎士の鎧は脱げ、そこらじゅうに全裸の騎士が倒れていった。

 なんだろう、うれしくない。むしろビジュアルの暴力である。

 俺たちは関所を焼き払い、爆破した。後に残るのは世紀末仕様のバスのみ。

 伝令すら戦闘不能。まさに全滅である。

 悪は滅びる。それは有史以来の法則なのだ。

 粉塵と火事の煙の中、キャタピラがキュルキュルと音を立てながら突き進む。


「……やり過ぎじゃね?」


 福本はそう言うが、この位でちょうどいい。


「二度と転生者を呼び出そうという気がなくなるまで執拗にボコる。高藤、悪いけど火を消してくれ」


 福本は苦い顔をしたが、俺は殴る手を止める気はない。

 だがメンツは徹底的につぶすが、死人はなるべく少なくするつもりだ。

 だから火の始末はちゃんとする。


「はいよー」


 高藤がピコピコと手を振る。

 まだポーズが決まってないようだ。

 恥ずかしいと思わなければ真理への扉が開くのだよ!

 次の瞬間、関所の井戸から大量の水がふきだし、辺り一面を覆う。

 ずぶ濡れになった全裸のおっさんが倒れる地獄がそこにあった。

 でもトドメを刺すもん!

 バスが関所を抜けると俺は指をクンッと上にあげる。

 爆発が起き、粉塵に関所が飲み込まれる。


「ふう。一件落着」


「なにが起きたかもわからずに全滅か。鬼だな」


 福本が言うがこれはしかたがない。

 こいつらのメンツは執拗につぶしておかねばならないのだ。

 転生者を怒らせたら国が滅ぶ。対策法はない。

 これならば、本当に困ったときに少数を召喚するだけになるだろう。


「福本、この世界のバカどもには、俺たちに手を出せば国が滅ぶという事を体でわからせるしかないのだよ」


 二度と異世界から召喚しようという気にならないようにしてくれる!

 俺は誓うのであった。終わったらスライム倒してエルフとけも耳ハーレムな。

 俺はさらに運転する。

 なるべく村などは避けて裏道や森を進む。

 砦との間に集落が数カ所あるらしい。

 途中に兵士の詰め所とかがあったら面倒だし、村を通って報告されるのも面倒だ。

 いちいち焼くのも面倒だ。今回はスピードが命なのだ。

 木をなぎ倒しながら森を数時間ほど運転する。

 バスにそんなことができるのか? という疑問はなるべく考えないようにする。

 木をなぎ倒しながらのため、時速は三十キロ以下。

 それでも半日ほどで目的地近くまで来る。

 俺はスルスルと木に登る。うっわ、なにこの体! 軽いわ!

 福本に出してもらった双眼鏡をのぞき込むと、石造りの堅牢な要塞が見えた。完全に軍事基地である。

 弓を持った男が塀の上をダラダラと巡回し、門の中では男たちがランニングや訓練をしていた。

 地球の軍隊ならば「銃を持ってるなあ」とか「うっわ、戦闘機あるのかよ!」とかの感想がスラスラ出るだろうが、俺には評価ができない。

 とりあえず推測できることは、この世界の技術では壁はあまり高く作れない。

 複数階建ての建物を建築可能だが、コスト高なのか重要な建物しかない。

 全体的に耐震性も強度も低い。

 兵種は接近戦と弓、それに魔法使い。

 空にドラゴンが飛んでいるのが見えた。


「おーお、ドラゴンが飛んでる。ほら、加藤さんあそこ」


 バスの屋根にいた加藤も双眼鏡を覗く。


「ま、まさにファンタジー世界ですね! で、でも、なんで宮殿にはいなかったんでしょうね?」


「日本だって国会議事堂に戦闘機が配備されてるわけじゃないから。なにか意味があるんじゃないかな? 生き物を都市部で飼えない原因というと、でかいから郊外で飼うしかないとか。鳴き声がうるさいとか。広い土地で散歩させないとストレス溜めちゃうとか」


「な、生々しい理由ですね……」


「でも飼ってみたら案外かわいいかもよ。添い寝しないと寝られなくてキュンキュン鳴くとか。お気に入りのぬいぐるみ壊して呆然としてるとか。トイレットペーパーイタズラしてマズいと思ったのか布団の中に隠れているとか」


「真鍋くん……わんちゃん大好きなんですね」


「……しゅき」


 日本ではペット禁止の集合住宅だったので飼えなかったが、こちらでは絶対にペットを飼おう。

 絶対に! 絶対にだ!

 それは置いて、砦は警備がちゃんとされているし航空戦力もある。

「クンッ!」でいきなり破壊してもいいが、けも耳奴隷とか召喚された人がいたらトラウマになりそうだ。

 やはり潜入すべきだな。

 まず、潜入し随時けも耳奴隷や召喚された人々を解放。

 そして第一王子を発見したら拉致。

 航空戦力を無効化してバスで逃亡。

 ふむ、ハリウッド映画みたいになってきたぞ。


「んじゃ、夕方になったら行きますか。福本は武器になりそうな者を作成。加藤はバスの燃料チャージ。蘇我と高藤は待機。特に蘇我! 火炎放射器触るなよ! いいか絶対触るなよ!」


 フラグを立てつつ俺は潜入ミッションに挑むのであった。

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