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プロローグ

 死後の世界は四畳半の畳の間だった。

 俺はあたりを見渡す。

 よくある和室に見える。

 だが欄間の細工は非情に細かい。高級品だろう。

 畳も重量感があり、高そうなものだ。

 部屋の中央にはこたつが鎮座する。

 そのこたつに若者が、ぬくぬくとこたつで暖を取っていた。

 金髪でオールバック……眉毛なし。おそらくヤンキーだ。

 死後の世界でもカツアゲは存在するらしい。


「いや、ヤンキーじゃないですから。カツアゲしませんから」


 考えていることがダダ漏れだと!


「ではハイパーヤンキーで。ところで、ここは死後の世界の民泊的な施設ですか?」


 これだけ立派な施設ということは宿泊施設に違いない。

 死後の世界にも観光客が押し寄せているようだ。


「だからヤンキーじゃありませんって。ここの民泊ではありません! 私は天使。簡単に言うと異世界の管理をしております。気合の入った人材をスカウトしに来ました」


 気合……やはりヤンキーに違いない。

 疑惑が確信に変化した。

 俺はとっさに回避する方便が口から出る。


「はあ、今は会社の納期が近いので後にしてもらえると……デバッグが全く終わってないので……」


 度重なる仕様変更のせいで100連勤中なのだ。

 ここで休んだら方々に迷惑がかかってしまう。


「あなたの世界の神様もブラック企業にはお怒りです。すでに神の怒りで物理的に燃えました」


 ちょっと待てよ。これ異世界転生ってやつじゃね?

 ということは……つまり……。


「……その火事で俺は死んだ……とか?」


「ああ、はい。異世界転生のお約束的に。まあ神様的には、あなたは数字でしかありません。箱庭SLG的な意味で」


 やたらメタい天使は笑顔になった。

 誰か神を殺す力をオラにくれ!


「承知いたしました。あなたはこの世界ではただの数字ですが、こちらの世界では、我らの神様に選ばれた使徒にございます。あなたの世界の神を殺す力だろうが、金だろうが、ハーレムだろうがなんでもご自由に」


 ハーレム全面肯定。しゅき!

 なお嫁たちを適正にマネジメントする能力は当方には存在しない。

 やったら地獄確定。


「神様的にはそれでいいので?」


「この世界の神と当方はまったく関係ございませんし、それにちゃんとあなたの世界の神様の許可を取ってありますので」


 許可はあるらしい。

 拉致ではなくトレードということのようだ。

 よく考えてみよう。

 会社は燃えた。

 肉体も、もはやなし。

 俺を醜い顔に生んでクソ人生を歩ませた元の世界の神様に義理はない。

 あとは業務内容だろうか?


「業務内容はどのようなもので?」


「はい。クッソ生意気な人間どもへ天罰を与えるお仕事です。あ、安心してください。未経験でも大丈夫です。我々の厳格なテストによって、あなた様はまるで混沌から生み出されたような魂でありながら、笑いの神に愛されたお方。きっと笑える結果をもたらすことでしょう! さあ、さあ、世界を地獄に変えましょう!」


 この天使。押しが強い。しかも不穏なセリフを吐きまくっている。


「今ならチートマシマシ!」


「マシマシ!」


「今ならチートは黄色い看板の店で出されるラーメンの上にそびえ立つモヤシと油のごとく! さあ、お買い得ですよ!」


 だが待って欲しい。

 生きている間はいい。好き放題できる。

 だが、死後の世界があることがわかった今、地獄行きは嫌だぞ。


「神様の事業です。カルマに影響はございません。あ、そうそう! 我々の世界にはあなたの大好きな……けも耳ですか? それとエルフ。おりますよ。あなたの助けがないと絶滅しちゃうんじゃないかなあー。あーあ、残念だなあ」


「よーし、正義のためにがんばるぞい!」


 けも耳とエルフのためなら誰も二つ返事になるだろう。

 ダメとは言わせない。


「ではー、さっそく今から送りますので、また会う日までご機嫌よう」


 俺の意識はいきなり白くなった。

 こうして俺は異世界で人間に天罰を落とすことになったのだ。

 でも天罰ってどうやるんだろう?

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