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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

現実世界とほぼ類似の世界

流転の転生

私は死んだはずだ。

あの時婚約者からよく分からない理由で断罪を受け、王宮の庭に引きずり出されて。

最後に見たのは笑みを浮かべながら剣を振り下ろす弟の姿だった。


夢だったとでも言うのか・・・


だが、最後の瞬間に感じた強烈な痛みは鮮明に覚えている。

何が起こった。


時は約三年巻き戻り明日私は学園に入学する。

行きたくない。

当たり前である。

夢だったのかもしれないが私には学園で過ごした三年間の記憶があり、あの身も凍るような鮮烈な感覚もこの体は覚えている。

だが、両親に理由を言っても相手にはされないだろう。

最悪死期が早まるだけだ。

私はベッドの隅で朝まで震えていた。


==============


またあの女と私の婚約者が楽しそうに中庭で談笑している。

「またあの男爵令嬢ごときがトロイアス殿下につきまとっていますわ。ユリア様よろしいのですか」

「良いのです。わたくしはただ殿下の御心に従うだけです」

前の記憶での私は周囲の言葉もあり殿下と男爵令嬢に諌言と忠告をした。

婚約者としては当たり前のことを言っただけだ。

その結果私は死んだ。

だから私は何もしない、身の潔白を証明するために常に複数の友人と行動を共にし、必要以上に殿下たちには接触しないようにした。

大丈夫だ、きっと大丈夫。

私は毎晩呪文のようにこの言葉を唱えて神に祈った。


==============


その結果三年の学園生活も最後の卒業パーティーだけとなった。

大丈夫だ、きっと大丈夫。

そう祈りながら私は会場に足を踏み入れた。

その後私は取り巻きに指示して嫌がらせをしたとして断罪された。

多分死んだのだろう。

私はまた三年前のあの日に戻ってきた。

せめてもの救いは会場で騎士団長の息子に引きずり出されたときに気を失ってしまい、死の恐怖を味わわずに済んだことだろう。

だからどうしたというのだ。

また明日から絶望の三年間が始まる。

私は床に座り込んだまま朝を迎えた。


==============


殿下の婚約者でいる限り私は死ぬ。

私は両親の承諾を得ることなく国王陛下に婚約の辞退を申し出た。

私は侯爵家の令嬢だが普通の方法では婚約の辞退など出来ない。

だから学園に入学してから毎夜狂人のように寮を徘徊し、昼間は呆けたように空を見て過ごした。

私は学園を退学し領地の隅にある館に幽閉された。

鉄格子の付いた窓と鍵のかかった扉、そして監視のための護衛、私の瞳にはそれらすべてが殿下とあの男爵令嬢たちから守ってくれる頼もしい存在に映った。

そしてあの日が過ぎた翌朝、私は涙を流しながら神に祈った。

「ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!」

その夜は久しぶりに薬を飲まなくても眠れそうだった。

そして、夕食の時間に踏み込んできた騎士たちに王都に連行されて牢屋に入れられた。

理由は誘拐未遂・・・

殿下と男爵令嬢が城下にお忍びで出かけた際、悪漢どもに男爵令嬢がさらわれそうになったそうだ。

捕まった悪漢どもは私に命じられたと答えたそうだ。

今私はその悪漢どもと一緒にいる。

「いや!助けて、誰か、誰か!・・・・・・・・・・」

その後の記憶は無い。

私に分かっているのはまたあの日に戻ってきたと言うことだけだ。

「もう死にたくない・・・」


==============


この国にいる限り私はきっと死ぬ。

私は金目のものをかき集め、簡素な衣装を着て屋敷から抜け出した。

行き先など無い。

だだここに居たらいけない。

だだそれだけを考えてひたすら隣国への街道を走る。

夜が明ける頃、私は草原に寝転び朝日を眺めていた。

痛いな・・・

魔獣どもに両足を食べられた私はもう逃げることも出来ない。

そして両手を失った頃、やっと私の意識は闇に溶けた。


ああ、またか・・・私は声を出さずに笑い続けた。

明日から学園生活が始まる。


==============


私がこの世界で生きていくためには、殿下と婚約を破棄して国外に逃亡するしかない。

だが私一人で国外に逃げることは出来ないだろう。

協力者がいる。

「まあ、クリストバル様ったら」

私は留学してきていた二年生の隣国の第三王子のクリストバル様に目をつけた。

彼を籠絡して妻になる。いや愛人でも良い。

彼の国は大国であり彼に望まれれば安全に隣国に逃げることが出来る。

私はすべての手段を使って彼を籠絡した。

純潔も失いお腹も大きくなってしまったけど私は彼の婚約者になることが出来た。


愛する夫と可愛い我が子に囲まれて今私は幸せだ。

「ユリア、聞いてくれユリバルが私の名前を呼んだんだ」

「ふふっクリス、良かったですわね」

先月ユリバルが私の名前を呼んでから、必死になって自分の名前を呼んで貰おうと頑張っていたことがやっと報われたのですね。

「ゆりあ、くりちゅ」

私と旦那様の名前を呼ぶ我が子はかわいい。

ああ、まるで夢のようです。


そして私はあの日に戻った。

「あ、あ、あ、あーーーーー!ユリバル、どこ・・・ねえ、旦那様?ねえ・・・ふふっ、かくれんぼですか・・・ははっ・・・」


==============


--???--

「ねえ、借りてたゲームだけど壊れちゃったかもしれない」

「えー、DVD割っちゃったの?」

「違うの、ゲームを開始したら一回勝手にリセットされてから悪役令嬢が出てこなくなっちゃったの、変でしょ?」

「隠しステージとかじゃないのそれ」

「そうなのかな?でも悪役令嬢が居ないせいで、どの攻略対象も攻略できないのよ」

「変だね」

「そうでしょ」


==============


「私のユリバルと旦那様を返して!」

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[一言] ホラーだな。
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