濃密スラング
雪兎の背中を
人差し指と中指で
撫ぜていく
背骨の形が息をして
強くなっては弱くなる
生きている事を
確認しながら
顔に触れる
小さな目が
目玉焼きの黄身のように
トロンとしていく
少し赤いのは唇
月明かりの下のグロス
僕が映りそうで
僕は
それを拒んだ
鎖骨の先の流線形
抱き締めて
指の腹に力を入れる
形ある筈の逃亡線
インスタントコーヒーの
淡い香り
一つになる事は
簡単で
一つで居る事は
難しい
一人になる事は
簡単で
一人で居る事は
難しい
あなたは僕を受け入れたが
僕はあなたを拒む
心の何処か
一欠片で
柔らかな形を
保っている
そこに顔を埋めるのが
日課になった
直ぐに重なるのが
良いとは思わない
でも一言も発さずに
落ちて行けるのは
日常からの非日常
飛んでるよりも
浮かびたい欲求
梟が鳴き
月明かりで影ができる
二人の形は
さながら帆船
頰のチーク
色を変えていた事に
抱き締めてから
気づいた
肋骨の中の内臓群
胴囲が小さくて
壊れない力を探す
中にある筈の選択肢
あなたの汗から
知りたくなかった香り
一つになる事は
簡単で
一つで居る事は
難しい
一人になる事は
簡単で
一人で居る事は
難しい
僕があなたを受け入れても
あなたが僕を受け入れても
何かが拒む
心の何処か
一欠片で
決める事より
決めた事への持続性
僕には無いし
あなたにも無い
「意味はあるの」と聞くと
「今日の意味はあった」と言う
「明日はわからない」と言うと
「明日も同じだよ」と答えた
変なピロートークは
二人は一人づつだから
雪兎が
たまに流す涙を知りながら
梟は
ずっと見ているだけ
至福と呼べる
優しい時間
鎖骨の先の流線形
抱き締めて
指の腹に力を入れる
形ある筈の逃亡線
インスタントコーヒーの
淡い香り
一つになる事は
簡単で
一つで居る事は
難しい
一人になる事は
簡単で
一人で居る事は
難しい
あなたは僕を受け入れたが
僕はあなたを拒む
心の何処か
一欠片で
肋骨の中の内臓群
胴囲が小さくて
壊れない力を探す
無数にある筈の選択肢
あなたの汗から
知りたくなかった
優しい香り
一つになる事は
簡単で
一つで居る事は
難しい
一人になる事は
簡単で
一人で居る事は
難しい
僕があなたを受け入れても
あなたが僕を受け入れても
何かが拒む
心の何処か
一欠片で
向き合う事の怖さより
できてしまった形が
壊れる事が怖いのか
先がありそうで
先がなさそうな
そんな未来が
無数にあるから
掛け布団の中で
くっつこうとする
煩わしいくせに
毎回
向き合ってくれるのが
頗る嬉しかった
それで眠れるのが
頗る嬉しかった
知らない太陽と
インスタントコーヒーを飲む
忘れられない香りは
きっと続く