色彩感覚のない少女
白咲 彩乃 17歳高校2年生
私には生まれつき色彩感覚がない。とは言っても私の視界はみんなが言うモノクロでできている。だから私は他の色はどんな色か分からない。
幼い時に両親に『赤色ってどんな色?』『青色って何色なの?』と聞いたが両親は私に納得のいく説明ができなかった。
そして4歳ぐいの時に両親は私が家で留守番をしてた間に交通事故で息を引き取られた。もちろん私は4歳ぐらいだったので何もできない。
私は養子となり他の家族に引き取られた。いとこや、親戚に本来は引き取らるはずだったが、両親は私の事を内緒でいとこや親戚とつるんでいたらしい。どおりで会ったことないわけだ。
今の両親には私が色彩感覚が無いという事を秘密にして生活している。もし今の両親に色彩感覚が無いとバレでもしたら確実に変なふうに思われる。さらにそれを学校にでも連絡したら先生、クラスメイトにどう思われるか、考えるだけで背筋凍る。まぁ、実際今の家族、先生、クラスメイトとは全くコミュニケーションをとってないので信頼関係なんてただのちり紙みたいなものなんだ。それでも私が怯えているのは周りからの視線や噂話なんだ。だから、私はあまり話したくない。
よく13年間も秘密を守ってきたものだ。私はいつも通り通っている高校に行き、教室に入り無言で自分の席に座り机の上に腕を置き頭をつけそして寝る。こうすることによって周りからも声を掛けられず済むのだ。最初のうちは周りの子が『白咲さん、起きて!』と声を掛けてくれたが、私は周りの子を殺すような目で威嚇した。そしたら流石に周りからも声を掛けられずに平和に暮らせるようになったのだ。だが、ここで出てくるのが教室のボスとも言える先生だ。だが私はこの先生をも黙らせるある秘策があるのだ。それは、授業を受けなくても学年テストで毎回1位を取ることだ。そうすることによって先生の授業など受けなくてもテストで1位になっているので先生はぐうの音も出ないわけだ。たまに『白咲、お前の平常点を抜くぞ!』と言ってくるが私はそんなどうでもいい事は無視して再び眠りにつく。体育の授業は流石にどうしようもできないので体操服を忘れるなり、生理と言って休むなりして成績は保健のテストでしか稼げなかった。これが私のいつも通りの日常。
私は色彩感覚以外にも人と関わりたくない理由がある。それは私が人間らしすぎるからだ。いや、私が人間ではないのかもしれない。というか私自身も嫌いだ。
これは去年のクラスの話だが、私を抜いて1人だけ孤立している女の子がいた。
彼女の名は宮代 由佳
いわゆるボッチ、いじめられっ子など色々な称号が似合う女の子だ。
彼女のいじめられていた理由はかなり酷かった。
理由はいたって簡単、見た目だ。彼女の1年間はきっと辛かっただろう。ずっと暴言を吐かれるは、かつて友達だった人に無視をされるわ、そんな小学生がやるようないじめで泣く由佳。
私はそんな人と言えるか分からん奴らが本当に嫌いで、それと同じくらい自分が嫌いだ。いじめというのはいじめられる人といじめる人とそれを見て見ぬふりをする人に分かれる。つまり、私はその見て見ぬふりをする人に当てはまるのだ。心底ダサいと思うよ。でも立ち向かえなかったんだ。
他にも人というのは誰かがやってくれると思っていて平気でその場を去るクズ人間。
例えるなら教室にゴミが置いてあってそれを誰かがやってくれると思って通り過ぎる人々だ。だから私は心底人間が嫌いだ。
もちろん、例外もいる。だが、会ったことがない。
そして事件が起きた。
いつも通り教室に入り寝ていた。そして登校時間が終わり先生が入り今日ある事を説明する。
それにしても今日は騒がしい、何故か周りの人がうるさい。
先生はみんなを静かにさせてこう言った。
『今日からうちのクラスに転校生が来る。みんな仲良くしてやってくれ』
なんだ、転校生か。と私は再び寝ようとする。寝ようとしたと同時に転校生が来た。
『このクラスに来ました。暁 隼人です。
趣味は人を助ける事です、あと、寝る事も好きです。』と自己紹介を終えた。
『暁、お前の席は白咲の隣だ。』と先生が言い、少し驚いた。『確かに私の席は窓際で1番後ろの席で隣がいないから来るのは必然か』と自分に言い聞かせて私の1人の空間に立ち入ることを許可した。
よくある展開だが、もちろん暁は隣になった私に『よろしく』と言ってきた。まぁ、私は無視したけど。
私はすでに気分が悪いのに先生は更に追い討ちをかけてきた。
『白咲、暁に放課後学校案内をしてやれ。』
仕方なく私は返事をして、学校案内をする事になった。
暁はかなり顔が良く、休み時間中にはクラスのいろんな人が囲んで話掛けていた。
私は隣でうるさいのを我慢していた。今日はやけについてない。
放課後、私は暁に学校案内をした。
『ここが職員室、理科室、音楽室、体育館、プール、テニスコート。』こんな感じで私と暁は会話をせず、ただ教室の名前だけを教えて通り過ぎる事を繰り返した。
『ここは、美術室。』と最後の教室を紹介して、帰ろうとしたその時、暁は私に話掛けてきた。
『今日は学校を案内してくれてありがと。えっと、白咲さん。』
『別にいいよ。あと、先に言っとくけど私に話しかけないでね?』
私は暁を突き放すように言葉を放った。今まで会った人は大体この一言で人の心の距離は離れていくのだ。
だが、暁は次に私に一気に距離を近づけてきた。
『白咲さんってさぁ...ちょっと言いにくいんだけど、色彩感覚ってある?』
あまりにもストレートでかつ今まで聞かれたことのない質問だったので私はとっさに暁にそっぽを向いた。表情をバレないようにしなきゃならないし、とは言ってもそっぽを向いたせいで今更言い逃れできるのだろうか?
やってみよう。
『あるけどなんでそんな質問をしたの?』
すると暁は私に理解し難い話をしてきた。
『信じてもらえるかはわからないけど俺は他人の視界に入り込むことができるんだ。それと他人の視界に入り込んだときその人の感情まで読めちゃうんだ。ほら、目は口ほどに物を言うって言うだろ?』
暁は申し訳なさそうにそう言った。
『そんなことある訳ないじゃないの!!』
私は話を認めたくなかった。私の声が美術室の廊下で響き渡る。幸い、周りがいなくて良かった。暁はこんな私のデカイ声を聞いても冷静で話をやめなかった。
『じゃああの絵はどんな色をしてる?』
私と暁の間に沈黙がしばらく続いた。私はため息を深くつき話始めた。
『今日は全く最悪の日だよ、転校生がきて私の隣の席で人が群がってるし、学校案内させられる挙句に今まで13年間隠し通していた眼の秘密もバレちゃったし...。』
私は久しぶりに人とこんなに話した気がして少し嬉しかった。けど、同時に暁に恐怖を感じていた。
『安心して、この事は秘密にするから。』と暁はニコリと私の眼を見ながら笑った。まぁ私から見たらモノクロでパッとしないけど。
『ねぇ、なんで私の眼について聞いてきたの?』
『白咲さん俺の自己紹介ちゃんと聞いてた?俺は人を助ける事と寝る事が趣味なんだよ。』
『私の眼なんて助けることはできないよ。』
『確かに君の眼は治すことなんて俺には到底できない、でもね、きっと白咲さんが今まで人と関わらなかったのは眼のせいだろ?だから、白咲さんの秘密を知ってる俺は関われる。俺の身勝手にも程があるけど俺は白咲さんと仲良くしたいんだ。』
私はすごく嬉しかった。こんな事を初対面の私に言ってくれる暁の優しさに。先に言っておくが別に恋愛感情など抱いている訳でわない。
『気持ちは嬉しいけど学校では静かにいたいから授業後とかに相手してあげる。』と言い私は暁に少しだけ笑みを浮かべた。
『ありがと!是非相手にしてもらうね。』暁も嬉しそうに笑っていた。
こうして1人から2人へと私の秘密は変わっていった。