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世界を救うのは僕しかいない!?  作者: 灰色蛍
プロローグ
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【第八話】体育館

念願の独り暮らしが始まって二週間。早くもホームシックです。

寂しくはありません。沢山の人に囲まれ忙しい毎日を過ごしています


でもやはりホームシックでございます。


お家に帰りとうございます。やりかけのゲームに読みかけのマンガ。

それから本棚の隠し戸にしまってある僕のお宝。


僕、やっぱりホームシックでございます。


終わってしまった世界を屋上から眺めていた僕はため息と共にその場をあとにした。





昨日付けでこの校舎は僕の家となりました。


僕が王さま。僕の城です。


昨日の時点でマイルームにしている四階の教室に保健室のベッドとか宿直室の畳に、湯沸し器とか、いろいろなものを運び込んである。


校長室の椅子とかも運ぼうと思ったけど、現校長はハゲオヤジだ。脂ぎったハゲオヤジの座っていた椅子などいらん。


さてはて、ホームシックな僕はそろそろある行動に出ようと思っている。


それはズバリ、“外”の探索だ。


学外にでる。と言うことなのだ。


いままであえてその考えは持たなかったが、もしかすればまだ町には生き残った人がいるかもしれない。


あと、うちに置いてあるエロ本取ってきたい。


・・・いや、むしろ、この状況ならコンビニで好きなだけエロ本盗めるのでは・・・。


さてはて、僕のやる気がたぎって来たのは良いのだけど、一つ忘れていた。

今日の午前中はそれに当てようと思う。


というわけで、僕はシャベルをズルズルと引きずりながら校舎を歩く。


「ふんふんふふ~ん」と鼻唄を歌いながら、








体育館のドアを蹴破った。





ギョロッと、五十対もの眼球が一斉に僕を捉える。これはホラーじゃないかな?いや、相手がゾンビーな時点で既にホラーか。



僕はそんな悠長なことを考えながらも、身体は自然と動きを取る。


襲いくるゾンビ軍。それを迎え撃つ僕一人。


そう、今日の午前中にやらなくちゃいけないこと。


それは体育館の清掃だ。


校舎一階にも沢山のゾンビがいたが、ここが一番多い。


この近辺のパンデミックの拡散源だ。

その多くが歩き回りこの場を離れたが、それでもこの前来たときは百近く。そして今も五十ほどのゾンビがいる。


ここを綺麗にせずに平和を満喫することはできない。



取り敢えず僕は向かってきた五体のゾンビを瞬殺し、シャベルを構えて駆け抜ける。

いまの僕はかなりテンションが高い。

ゲージが吹っ切れてぴゅーぴゅーと吹き出てしまいそうなくらいだ。


そしてそんな僕は、酷く強い。


燃え上がるテンションに、それを全力で支えるように脳がフル稼働。これまでにないほど的確に状況判断から行動実施まで行っている。



取り敢えず現在開始五分で二十三体のゾンビをなぎ倒しました。はい。


返り血はあるけどいまだ触れられてすらいない。


ちょっと僕のステータスがおかしい気がしないでもない。


というか、人間を止めていそうでちょっと怖い。


目の前に繰り出される赤く爛れた腕を半歩下がり避けながら大本の首をシャベルでスパンッ。そのまま右足を大きく後ろに引きながらシャベルの柄で真後ろにいたゾンビの頭を強打。姿勢を崩したところに兜割り。

そのまま駆け抜けて更に五体ほど首をスパパパンッと狩っていく。


いつの間にか体育館には首なしゾンビの死体の山ができていて起きて動いているのは7体になっていた。


開始十分の出来事でした。


7体になったところで油断はしない。彼らは皆人外の生き物だ。


動きは遅かったりする個体もいるし、両腕がない個体もたまにいる。でも、全体的に見て最近のゾンビたちは人以上の力を出してくる。

殴った壁が凹んだり、四本足で駆けてきたり。


その都度僕の心臓がビクンバクンとするのだから止めてもらいたい。


これでも僕は小心者なのだ。



スパンッと更に一体追加。

残り六体。






しかしながら、僕はまだ知らなかった。

彼らが、ゾンビたちは確かに強くなっていた。だけど、それはまだ始まりに過ぎなかったのだと。





『グゴァァァァァォァァァダッーーーーーー!!』


一体のゾンビが苦しみ出すように自身の顔を両の手で引っ掻く。

頬の肉が削げ落ちるのも構わず行うその所業は不気味としか言いようがない。


そうして、一体の絶叫と共にそれに共鳴するように残りの五体も苦しみだした。


「・・・なん、だ?」


散々ゾンビを狩ってきて始めてみる現象。

何かが起きようとしている。


・・・・・・


「ふむ」



なら、起きる前にスパンだ。


スパンッ、と。


最初に苦しみ出したゾンビA の首を切り飛ばしそのままゾンビBゾンビCの首を飛ばしていく。


そうして、ゾンビDの首を飛ばし終えたところでゾンビの絶叫が止まった。


「ちっ、間に合わなか・・・・・・た」


残る二体のゾンビ。それらへ目を向け、僕は身構えていた。


そこにいるのはゾンビ。それはそのままだ。


だけど、ゾンビEは腕の下というか脇から腕が生えていた。それも元の腕よりも長く、赤く黒い。悪魔の腕、とでも言えばそれらしいだろう。それと、顔が少しばかり変わられていた。整形にしては斬新なそれは、顎が別れて虫みたいになっていた。


ちょっとこの整形は嫌。


生理的に受け付けません。


因みにその隣のゾンビFさんは首が伸びてお腹から新しい頭が生えていた。

双頭ゾンビ。

ただ、お腹から生えた頭は人の顔の形はしていない。

赤黒く染まった獣。というか、ドーベルマンとかの皮を剥いで、筋肉がむき出しになったような顔のだった。


体型も頭二つのバランスを取るためか下半身が大きくなっていた。



まさしく怪物に進化したゾンビたち。


『グオォォォォォォオオオオッ!!!』


と大地を震わせるような雄叫びを上げる二体の怪物。人間の恐怖心を煽る、本能を恐怖させる。絶望の叫び声だ。








取り敢えず僕は近い方の四腕の怪物さんの頭を横殴りにシャベルで叩き割りました。


頭の半分から上が飛んでいって地面にべちゃりと落ちた。それに続くように無駄に進化した四腕の身体が地面に倒れた。


いや、ね。腕が増えたって言ったって、もともの五人十人と戦っていたのだもの。

彼らの腕を合わせれば四腕くらいどうってことないですはい。



彼らと言うか、彼と言うか、双頭ゾンビさんに知性があるのかどうかわかりませんが、四腕ゾンビさんが倒れると『・・・・・・』と無言で固まっていました。



え?もちろん、そんな無防備なゾンビさんを見逃す僕ではありません。


腹から突き出した頭が本体なのか、人の頭が本体かわからない僕はちょっとばかり悩んだけど、これもおんなじだ。


どちから一つが外れなのか、二つとも当たりなのか、分からないのなら二つとも壊せば良いのだ。


というわけで、お腹の頭をスパンと。


『グキャァァァァァーーーッ・・・・・・』


頭の頭をスパンと。


威嚇の叫びじゃない本物の叫び(悲鳴)を上げるも、その頭をスパンしたので直ぐに止む。



「・・・ふむ」


バタリ、と倒れる双頭ゾンビ・・・いや、今は首なしゾンビさん。


「・・・終わった?」


辺りを見渡し生きているゾンビがいないかと探す。・・・いや、ゾンビの時点で死んでいるのだろうけど。


結局動き出すゾンビはいなかった。


まあ、全部頭を切断、もしくは破壊したので動き出すはずもないのだけど。いや、ゾンビなどという不思議生物なのだしもしかしたら、という可能性もあるか?


ゾンビの死体の山となった体育館。


この死体・・・片付けなくてはいけないのだろうか?



・・・いや、待てよ?と僕は記憶を辿る。ここ最近、というか、昨日今日の発見なのだけど。


「・・・死体が消えていたんだよな」


誰に聞かせるでもなく静かに告げる。そう、昨日まで狩ってきてゾンビ(死体)の多くが消えていたのだ。


正確に言うなら着ていた衣服と微かな黒い粒子を残して、だ。


全部が消えた訳じゃない。

たぶんだが、倒したのが早い奴らが消えた。初めの数日で倒した奴らだ。


ここまでくれば最近の若者の代表と言ってもよいゲーム脳な僕にはある程度の予想がついた。


これは、あれだ。

死んで時間が経つと灰のようになって消えるというやつだ。


証拠もにもないがなんとなく確信をついている気がした。


「・・・なら、このままで良いか」


うん。片付けとか面倒だし。片付けているうちに冷静になったらまた吐きそうだし。もしくは発狂するんじゎないかな。




三十分ほどでことが足りてしまった僕はちょっと予想外で、本当は二時間くらいかかると思っていたのだけど。


まあいいか。少し早いけど着替えたら外に行こう。


流石に血塗れのこの格好で外に出たら危ない人だ。

シャベル一つでゾンビ相手に無双できてしまう危ない人だけど、見た目は普通なはず。




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