【第六話】装備品の確保
この日、久しぶりに外が雨だった。
これでは日課の日向ぼっこができない。屋上からこの世紀末を見下ろし悲壮感に暮れるという日課もできない。
傘を差せばできるかもしれないけど、雨の日は出来る限りの外にでたくはないな。
という訳で、今日は鉤縄を使わない。・・・とおもっていたのだけど。
二階の女子更衣室で囲まれた僕は回りのゾンビを殲滅させ外に逃げましたはい。
因みに、雨で縄を握る手が滑りちょっとした落下事故が起こりました。
これは雨の日用に練習もしないといざという時に危ないな。
そうして雨の中、外でびしょ濡れになりながら縄を登る練習を繰り返した。
半日くらいそうしていたら徐々に登れるようになってきて、余裕が出始めたくらいで今日は止めることにした。
四階の拠点に戻り、かき集めておいたバスタオルで身体を拭く。
着ていた学ランをハンガーにかけて乾かすが、こうして見ると随分とボロボロになっていた。
まあ、約二週間のサバイバル生活だ。
返り血や返り血や返り血でボロボロのゲロゲロだ。
こうして吊るしてはいるもののそろそろ限界かもしれない。
新しい服を用意する必要がある。
だがしかし、ここは服屋じゃない。服などない。いや、探せば使ってない体育着くらいいくらでもあるだろうが、あれじゃ防御力が低い。
予備の学ランがあれば・・・。
いや、あることにはある。
・・・ゾンビの中には僕と同じ学生も多数存在している。彼らは言わずもだが学ランを着ている。
ひっぺがせば学ランの予備ができるな。
・・・いや、もちろんしないけど。流石に僕も仏さんの服を剥ぎ取るのは、心が痛む。
まぁ、それ以前に結局血まみれで着れないし。
しかしながらそんなことを考えていると、ふと、あることを思い出した。
「そう言えば、たしか、あの場所に・・・」
もしかしたら、と思い出したのならあとは早かった。
防御力は落ちるものの寝間着として使っていたイモジャージを着て早速出かける。
目指すは二階。職員室前の廊下。
そこにはこの学校が上げた成績、部活動の優勝カップやメダルなどなどが飾られており、たしかその隣に学校指定の制服として男子の学ランと女子のセーラーが飾られていたはず。
今回の目標は即ちそれだ。
因みに既に二階まで降りてきている。ここまでは既にゾンビを排除しているから何も問題なく来れる。
さてさて、と職員室までは無事にたどり着く。無事に、というのはゾンビに会わず、という意味ではなく、怪我なく、という意味だ。
ここに来る間に単体ゾンビが五体くらいいたからそれぞれ倒してきた。
お陰でジャージは赤い帰り血で不気味な模様を作り出している。
このジャージももう使えないか・・・いや、ジャージなら洗濯すれば行けるか?
制服の展示は思った場所にちゃんと有りしっかりとその見た目を保っていた。
取り敢えず僕は何も考えずにガラスを叩き割り中の制服を抜き取り急いで背負っていたバックに詰め込む。
マネキンに着せてあって、しかもボタンがしっかりとされているから脱がすのに苦労した。
きっと慌てていたのだろう。僕は急いで女子のセーラーもバックに詰め込んだ。そう、慌てていたから。
しかし、そうこうしている間にガラスの割れた音を聞き付けてゾンビが6体ほど走ってくる。
6体は不味い。そう思った僕の行動は割れたガラスの破片を掴みそのままゾンビへと投げつけた。
これで一体撃破・・・・・・できるはずもなく明後日の方向へ飛んでいくガラスの破片。
「・・・ふ」
まだ慌てる時間じゃない。こんなときこそ慌てず素早く逃げる。
そう、別に囲まれた訳でもない。
ゾンビたちは一方方向からしか来ていない。ならば反対へと逃げれば・・・。
不気味なうねり声をあげながら走ってくる四体のゾンビ。
左から6体。右から4体。
合わせて10体。しかも挟まれている。
「・・・・・・ふ。慌てる時間の到来さ!」
僕は勢い良く立ち上がるとそのまま窓へと走った。
鍵のかかった窓をガンっと勢い良く開け放つと、腰にぶら下げた鉤縄をぐるぐると回し上へと放つ。スッンと飛んで行き三階のベランダの手摺に見事に引っかかる。
「ふっ、あばよとっつぁん」
なんとなしにいってみたい台詞を言い放って急いで縄を登る。
火事場の馬鹿力という奴か、思った以上にするすると登れ、三階の手摺にを掴みそのままベランダに上がる。
上がり終わる頃にちょうど良く今しがた飛び出してきた窓からゾンビが湧く。
間一髪、でもないが、やはりこの鉤縄、使える。
僕の考えは間違っていなかったと今更ながらに安堵した。