【第二十七話】一騎当千
最初の変異体を倒し終え、僕の意気込みを宣言したのだけど、彼等聞く耳を持たない。
問答無用で襲ってきた約十ぴきの雑魚ゾンビを瞬殺しながら僕は集団の中に入っていく。
四方八方ゾンビ。見渡す限りゾンビ。ゾンビ、ゾンビゾンビゾンビゾンビゾンビ。
つまり、何処を殴ってもゾンビに当たるのだ。もう問答無用でシャベルを振り回し周囲のゾンビを挽き肉に変えていく。
『グォォォオオオオオオオ』
変異体。岩ゾンビ。それも左右から二体。だから僕は片方の岩ゾンビに自ら飛び込み覚えたてのラノベ流シャベル斬りもといシャベル突きで岩ゾンビの顔面を突き刺しそのまま抉るように回し吹き飛ばす。
すぐ後ろには反対からやって来ていたもう一体の岩ゾンビがいたので、吹き飛ばした時の勢いのまシャベルで頭を叩き斬る。
ガンッーーーーー
斬る、つもりが、弾かれた。まだシャベル斬りの精度が甘いのだろう。
僕は慌てず頭を殴られよろけている岩ゾンビに再びシャベル斬りを放ち頭から身体にかけて斜めに切り裂いた。
そのまま僕は走り、近場のゾンビから順に確実に潰していく。
変異体も岩ゾンビでなければ差ほど問題はない。
六腕の変異体は四肢もとい八股を吹き飛ばしあとは普通に叩き潰した。
獣のように変化した変異体はすごいスピードで襲ってきたのでもっとすごいスピードで殴り殺した。
首を三つ生やしたケルベロスの人バージョンのような変異体は普通に首を三つとも吹き飛ばして倒した・・・とおもったら跳ばした首が生えてきたので身体ごと全部ぐちゃぐちゃにしてぶっ殺した。
兎に角、速度重視にゾンビを蹂躙し既にかなりの数のゾンビを潰したはず。
途中何度か殴られたりひっかかれたりして意識を無くしたけど、無くしながらも身体は勝手に動いてくれるのだから便利の一言に尽きる。
通常ゾンビ、変異体、合わせれば既に百近いゾンビどもを葬ったのだが、減っている気がしない。むしろ僕を中心に群がってきているので感覚的には増えているような気までする。
「ヤバい。ちょっと調子のりすぎたかな・・・」
疲労は勿論のこと“減らない”という状況は精神を酷く追い詰める。
そうやって余計なことを考えていれば僕自身油断ができる。
寒気、背筋がブルリと震える。
どこだ?ーーーーー上だッ!?
気が付いたときには僕の身体がすでに反応し避けていたけど。
上空から降ってきたのは両足がバッタのようになった変異体だ。
上半身は人なので半人半蟲だ。あれをバッタ男と呼ぶと色々な所からクレームが来そうだなと思えるほどの気持ち悪さだ。
バッタが着地した場所を見れば見事に小クレーターができており命中すれば僕はペチャンコだ。
上からの攻撃というのはちょっと予想していなかった。前後左右と既に色々いっぱいいっぱいで更に上とか・・・僕は飛ばれる前に殺ろうと決め、速攻で駆け寄ろうとし急ブレーキど止まることになった。
目の前に変異体が、二体。それも初めて見る半人半馬、ケンタウスのような形だ。
まあ、どっちにしろ腐った死体が主なので見た目が酷くグロテスクだけど。ケンタウルス、といったが、下半身が馬、というより四つ足の獣のようになっている。それも筋肉繊維が丸見えで。
上半身も完全な人ではなく、両手の先が指ではなく細く尖った槍のようになっている。
新しい敵というのは対処が難しい。出鱈目に突っ込んでそのまま死ぬとかありそうでヤダ。
その躊躇があったからだろう。
バッタゾンビは再び空に跳んでいた。
「ちっ、だったら先にこいつらをっ」
片付ける。そう思いシャベルを振るうが、ガキンッと金属音がなった。
見れば僕のシャベルが馬ゾンビのクロスさせた腕に防がれていた。
「っ、だったら」
ーーーーー斬れない。ならば、
「潰すッ」
もう斬るなどという繊細な攻撃をしてやるか。
荒くれた僕は力の限りシャベルを振る。振って防がれ振って防がれ振って防がれ防がれ振って振って防がれ振って振って振って防がれ振って振って振って振って振って振って振って、当たった。
体制を崩した馬ゾンビに更に僕はシャベルを振って、殴って、殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って、兎に角殴り続ける。
途中まで辛うじて防いでいたが、立派な尖った手がへし折れ防ぐ間もなく殴り続ける。
僕の必殺技。兎に角殴り続ける攻撃。
途中もう一体が邪魔しに来たから力任せにシャベルで吹き飛ばして殴る攻撃を続ける。ゾンビは生命力が高い・・・いや、死んでいるけどね。何が言いたいかというと殺すならちゃんと殺らないといけない。
だから僕はいま馬ゾンビの頭を原形が崩れるくらいに殴り壊している。
次第にピクリとも動かなくなったのでよく見ると既に頭がなかった。
・・・僕は取り敢えず終わったことは気にしない方向にし残りの一体へと視線を向けて、ブルリと寒気を感じ横に跳んだ。
ドバンッーーーーーと僕がいた場所に空から飛来したバッタゾンビ。
間一髪。
僕は即座にバッタゾンビを殺ろうとするも再び馬ゾンビに道を阻まれた。
これはさっき吹っ飛ばした一体だ。さっさと殺っておけばよかった。
僕は「くそッ」と悪態をつきながらも馬ゾンビを葬るべくシャベルを振るう。さきほどの馬ゾンビとの戦いで攻略は大分掴めた。
僕の攻撃速度に反応する馬ゾンビ。僕の大概の攻撃は防がれてしまう。倒す方法はいくつかありさっきみたいに手数で圧倒するのがある。
だけどあれだと時間がかかる。なのでもうひとつの方法。
僕の攻撃に反応して防御を取るのなら、その防御ごと破壊しよう。
「はぁあああああっッ!!!」
僕は渾身の力をもって馬ゾンビのクロスさせた両腕ごとシャベルで叩き折る。
折れれば金属でなく肉だと分かるほど血が吹き出て、僕はそれをお構いなしにシャベルの連撃で馬ゾンビの頭を貫いた。
このままバッタを、そう思い飛び出そうとして気が付いた。
シャベルの先がない。
根本が折れて、すでにシャベルの原型を留めていなかった。
「っ!?くそっ、あぁぁッ!!」
仕留めるチャンスだった。なのにこれじゃ流石に変異体は倒せない。僕はそのまま壊れたシャベルを振りかぶり少し前にいた通常ゾンビの顔面に投げつける。
僕は一旦後方へ飛び、さらに一瞬首を回し周囲を見回す。
シャベルが折れたのは痛いが、大分戦線が動いてくれたお陰でツキが来た。
僕が設置したシャベル、それがすぐそこにある。僕はそれ目掛けてダッシュ。
途中いた通常ゾンビは殴り倒しシャベルまで一直線。
シャベルは三体ほどの通常ゾンビの足元にあり、僕はゾンビの足元に向かってダイブ。
ダイブのままシャベルを掴んで三体の足首を吹き飛ばし、浮き上がったゾンビを全員まとめて叩き跳ばした。
兎に角シャベルをゲット。
これでまだ戦える。
「ん?・・・またかッ!?」
寒気とともに僕は横に跳んだ。
上を確認する間もない。
いつの間にか空に跳んでいたバッタゾンビが僕に向かって落ちてきた。
ドンッーーーーー!!とクレーター作るほどの破壊力、やっぱりここで仕留めないと・・・・・・あれ?いや、待てよ?
僕は頭の中で一つの案を思いつき、それを実行した。
なるべく自然に、“バッタゾンビに近付けない”フリをして、あのバッタを空に上げる。
空に上がったバッタゾンビは本当に高くまで登り、普通の肉眼じゃ捉えきれないだろう。
ま、僕の目ならなんとかまだ見える。
そうして、僕はバッタゾンビが跳躍の頂点に行くのを待った。
そう、頂点。一番上。そこならばバッタゾンビの恐るべきスピードはない。
頂点というのは速度ゼロ、これから助走が付いていく場所でありこの位置は絶好の攻撃ポイントなのだ。もっとも、普通じゃこんな場所への攻撃方法など無いため意味を持たないが。
だけど、いまの僕にシャベルがある。
僕はシャベルを振りかぶりそれを投げた。
いまの僕の力なら速度を持たせたまま余裕で届く。
いや、届くなんて生温い。剛速と呼んで良いほどの速度と勢いを持ったシャベルは螺旋を描きながら爆風とともにバッタゾンビの頭を捉え、吹き飛ばしてそのまま空の彼方へ消えていった。
空中で頭を潰されたバッタゾンビは力なくそのまま落下し地面でべチャリと潰れた。
そのあとも僕は様々なゾンビを相手に戦った。
中にはこの前の夜に戦った上位の変異体も何体かいて数えるのもバカらしくなるほど死にかけた。
撃破数が半数を超える頃には僕の学ランはぼろぼろで原形は既になく下にきていたシャツも破けたり穴が空いたりだ。
そうしてここまできて僕にとうとう限界が近付いていた。
半分倒した。つまり、変異体だけでも50体以上は倒した。通常ゾンビだけなら数百。それだけ倒してもまだ同じ数の敵がいる。
僕の体力もそうだけと、精神的な負担が限界を迎える。
気力というものはどうしても減っていく。あんなに殺れる気でいた僕だけど、いまの僕にはあと数十体の変異体を倒すだけの自信も力もない。
いや、もしかすれば通常ゾンビにすら遅れを取るかもしれない。
そんな風はな考えていたからか、目の前には迫った巨大な拳を避け損なった。
「っうッーーーーーーーーーー!?」
防御は、できた。辛うじて拳と身体の間にシャベルを入れることができたが、踏ん張りもできず僕はそのまま吹き飛んだ。
最近吹き飛び慣れているからか、吹き飛ばされながらも回りの状況を確認して地面にしっかりと足をついて立ち上がった。
「今度は・・・って、マジかよ」
僕を吹き飛ばしたゾンビ、変異体は系統的に言えば岩ゾンビに近い。
だけど、見た感じで判断すれば、この変異体の身体は岩ではなく光沢のある灰色、鉄でできているのではないだろうか?
しかもそれだけでなく、岩ゾンビ体長はざっと二メートル半から三メートルだけど、
この鉄ゾンビの体長は四メートル近くある。
見上げるような高さのそいつに僕は一瞬だけどビビった。
大きさとはそのまま力になる。
どこぞの漫画やアニメでは大きければ攻撃が当てやすい!!などとポジティブ過ぎる発言を聞くが、大きさは強さ。大きければ当てられる?当たっても効果がなければ意味がないじゃないか。
そして何より、巨体はそれイコール強さだ。
例え相手が三歳児の子供でも身長が三十メートルあればそれに敵う人などいない。
何より、この敵は三歳児でもなければただのゾンビでもない。
鋼鉄の肉体を持つ変異体。
しかもいままで一番の巨体。
ビビったのは最初だけだ。
あとに感じたのは絶望感。
最近麻痺っていたその感覚を久々に感じた僕は思った以上に落ち着いていた。
これは、・・・無理だ。




