【第二十六話】おっぱいをこの手に
この激情を早くぶつけたい。そう思うも、感情だけで先走り倒せるような数ではない。そもそも武器が足りない。
僕が今持っているシャベルは二個だった。それでは千匹倒しきることは不可能だ。
だから僕は学校に戻ったのだ。
戦いの前に装備を整える。
これは戦いの基本だ。
僕は小振りのピッチリ背負えるバックに予備の折り畳み式シャベルと鉤縄の予備を積める。
腰には鉤縄に、投擲用のクナイ。そして手にはシャベルを。
これが戦うときの基本装備だ。あとは台車に三台に積んだシャベル80本。
この学校に10本、工業高校に10本を予備として置いておいた。
台車のシャベルは戦う場所付近に適当に配置し戦いながら新しいシャベルを取れるようにしなくては。
僕は台車を引きながら早足でゾンビのもとへと駆ける。
おと、ハルたちが逃げ込んでも良いように廊下に分かりやすく“こっちが入り口”とペンキで書いておいた。また食料もシャベルと一緒に置いておいたので籠城もできるだろう。
例のデパート付近まで近付けば嫌でもゾンビの存在感を肌で感じる。
僕はこのままゾンビに直行したい気持ちを押さえてシャベルを配置していく。
配置に三十分ほどかけ、準備は終わった。
僕はデパート付近が見渡せるちょっとした建物の屋上へ鉤縄でさっと登り、辺りを見渡す。
デパートは・・・もう完全に崩壊していた。
これではゾンビも何処かに行ってしまうのでは、とも思ったが、いまだゾンビが数多くいる。
たぶん、建物は崩壊したけど、辛うじて逃げ延びた人がいたのだろう。
その生者につられてここに止まっているのだろう。
生者ナイス。と思うも、その生者の生存は絶望的だろうけど。
それに、デパートの周りだけではなく、4、50体は周囲に散らばっている。
僕はどうするか、と考え、直ぐにバラけたゾンビの一掃にかかった。
あれらがハルたちの所に向かっても困る。
点々としているゾンビならば気負う必要もない。
バラけているゾンビはほとんどが単体か多くても三、四体だ。変異体も混ざっているが数は多くない。この程度なら直ぐに終わる。
実際、ゾンビを倒す時間よりもそこに駆けつける時間の方がかかったくらいだ。
そうして辺りのバラけたゾンビを一掃し終えた僕はシャベルを引きずりながらゆるりと歩く。
目指す場所は決まっている。
例のデパート、そこに集まる無数のゾンビ。
十を超え百を超え、千に届きうる無数の化物。
出来の悪いホラー映画でもそんな数のゾンビに向かって一人歩いていく少年の話など有りはしないだろう。
そんなのがあるとすればそれはファンタジー、もしくはSF映画か、ともすればコメディか。
だけど、そんなことを全てひっくるめてどうでも良い。
徐々に姿を現し始めた無数のゾンビどもを目に、僕はーーーーー嬉しさのあまり大きく口角を引き上げていた。
端の、僕の近くのゾンビが僕に気が付いた。
一体が気が付くとそれに釣られるように付近のゾンビすべてが僕に気が付き、その目を標的を狙うものへと変える。
僕は足を止めた。
ゾンビの群れから一際大きな変異体が姿を現した。
三メートルを超えるほどの巨体に腕は丸太のように太く、身体は鋼鉄のように固そうな肉鎧で守られている。
強い。今までの変異体よりも格上だ。
それが見てわかるくらには強い。
その巨大変異体は他のゾンビを掻き分け一気に僕へと向かってかけてくる。
振り上げられた拳は実物よりもかなり大きく感じられ、僕をそのままペチャンコにするのに十分すぎる大きさだ。
僕はその拳を眺め、そして思う。
“おっぱい”ーーーーーと。
おっぱい、そうおっぱいだ。
僕はこの戦いが終わったら、おっぱいを、ハルのおっぱいを、揉める。
半ば勢い任せの冗談のつもりだった。ハルが本気で嫌がって拒絶したら冗談にして逃げるつもりだった。
だけど、言質を取った。取っ手しまった。ハルもなんだかんだOKをくれた。そう、つまり、僕は本当に、ハルのおっぱいを揉めるのだ。妄想でもなんでもなく、リアルに、現実に、合意の上で、・・・僕は、おっぱいを、揉む。
ふふ、
ふふふふふふ、
ふははははははははっッ
ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははッ!!
あぁ、そうか。
『グルォォォオオオオオオオッッッ』
雄叫び、そして拳。
ーーーーーーーーーースッ
僕はそれらを全部無視してシャベルを空へと振り上げた。
『グォォォオ・・・ーーーーーーーーーーーーーーー』
途切れる雄叫びとそして崩れ落ちる巨大変異体の身体。真ん中から真っ二つに両断された身体は左右にドサンッと崩れ落ち、地面に落ちた。
「くはっ、くははは、ああ、そうだ。なぁ、お前ら」
ゾンビが僕の言葉なんて聞くはずもない。だけど、僕はどうしても哀れみを覚えてしまう彼等に言ってやりたかった。
「今日の僕、ちょっと最強だよ?」
さぁ、おっぱいの為の蹂躙を始めよう。いまの僕なら神も魔王も怖くない。




