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世界を救うのは僕しかいない!?  作者: 灰色蛍
プロローグ
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【第十五話】振り返り『和也視点』


ーーーーーー和也視点ーーーーーー


世界がめちゃくちゃになった日。あの日から俺たちの日常は変わってしまった。


あの日、突然パニックになる前まで、いや、パニックになっても、直ぐにいつもの日常が帰ってくると思っていた。


でも、違った。

目の前でそれを知った。西日本でゾンビパニックが発生したと携帯電話のネットニュースで見たときはなんの冗談だと思った。しかも、それで緊急の集会とかで体育館に集められてだ。


集められた俺たちは適当な憶測を並べたり、ふざけあったりで、ニュースの話をほとんど信じていなかった。だけど・・・


それが起こった。体育館の中の人が発症した訳じゃない。それが起こったのは外からだった。


外から聞こえる悲鳴。

みんな慌てて外を見て、そこで見えたのは逃げる子供たちと、それを追うモノたち。着ている制服から逃げているのが隣接する小学校の生徒というのは直ぐにわかった。そしてそれを追うモノ。それは大人であり、子供であり老人であり、血走った目をした異常者たちが子供を追い回していた。いや、それだけじゃない。


異常者は子供に追い付くとその首筋に噛みついた。首筋の肉を食らい頬の肉を食らい腕の足の腹の、群がるように集まり子供も肉という肉を食らい尽くす。


それを見ていた俺たちはいくつかの行動に別れていた。


それを見て口を押さえ吐き出すもの。

それを見て悲鳴を上げ逃げるもの。

それを見て怖くなって動けなくなるもの。


それを見て、助けるために駆け出したもの。



そして、俺は駆け出していた。正義感とかそういったものはあまりある方じゃないと思っていた。

だけど、あれを目にしたら頭の中が真っ白になって、気が付いたら子供を襲おうとしている血塗れの男を蹴り飛ばしていた。


俺は無我夢中で倒れている少年を背負うとそのままもうダッシュで逃げた。


他にも襲われている人はいた、でも、真っ白になった頭でもわかっていた。全員は助けられない。

俺はそのまま逃げるように体育館に入り、そのまま幼馴染の新治華子を探した。このままここにいるのは不味い逃げないと。


華子は直ぐに見つかって、華子と共に逃げた。俺たちは逃げて逃げて四階の倉庫に逃げ込んだ。

この倉庫は狭いながらも頑丈に作られている。

人の力じゃ鍵を掛ければ開けられない。体当たりなんかじゃびくともしない。


そして、そこで華子と二人怯えながら一晩過ごした。


助けた子供とは体育館を逃げるときにはぐれてしまった。


俺は罪悪感を感じながらも仕方がなかったんだと自分を守る嘘をつく。



一晩経ってパニック自体は落ち着きを見せていたが、学校はゾンビで溢れ返っていた。





それから俺たちは生存者を探しながら少しずついきる環境を整えていった。といっても初めは生き残った人たちも結構いた。

だけど、その中のリーダーを取っていた男が動けるものだけでもここから逃げるべきだと主張しそれに賛同した者たちがほとんど出ていったのだ。残ったのは怪我をしたものや逃げ延びた子供。その子供を見捨てられないものなどだった。


俺も残る方に入った。俺自身は動けたが、華子は足を怪我していた。

俺の選択肢に華子は置いていくというものはない。

幼馴染の、好きな相手を置いていくなどできるはずもない。


他に残ったのは同じクラスの月夜野遥さんに、その妹の七海さん。

隣接する中学から逃げ延びた吉岡樹春に小学生組の片品未来ちゃんに川場翔太。そして、クラスは違うが同じ学年の前橋宗一郎。



最終的にこの8人が残り、学校での命懸けの生活が始まった。




苦難や慣れないこと、危ないことも沢山あったが乗り越えてきた。だけど、


華子と共に一階にある保健室にいき必要な薬などを取って来る途中だ。

疲れていたからか、それとも馴れ初めに起こる盆ミスか、地面に落ちていたガラクタを踏み音を響かせ、ゾンビに襲われた。


幸い、保健室に逃げ込めたが、それだけだ。 保健室から外に出ることはできる。でも、外にはかなりのゾンビがうろついている。保健室のドアには追い付いてきたゾンビが張り付き今にも壊して入ってきそうだ。


状況的に積んでいた。外に逃げてもこのままここにいても、どちらにしろ待っているのはゾンビに喰われるという未来。


「ヤバイな・・・っ」


バンバンとドアを叩く音が酷く大きく聞こえる。

錯覚であってほしいがドアの震える音がどんどん大きくなってきている。


あと数分も持たないかもしれない。


「和也・・・」


俺の後ろには華子がいる。俺と同じように怯えた顔で、俺の手を握るこいつの手は酷く震えていた。


こんな時に“大丈夫だよ”とか“なんとかなる”何て言う励ます言葉を言えたらよかったのかもしれない。でも、今の俺がそれを言ったら逆効果しかないだろうなと、自嘲してしまう。自分自身で欠片も信じられない言葉をどうやって信じさせるというのだろうか。


「なぁ、華子」


だからだろうか。先ほどまで響いていた激しい騒音が聞こえなくなっていく。諦め、が付いたのかもしれない。


「和也?」

「俺、さぁ」


身体の向きを変え、華子を正面に見据える。こんな至近距離だとまるで抱き合っているみたいだ。


こんな時に、という思いとこんな時だからこそ、という思いが生まれ、俺は口を開く。


「華子のことずっと好きだった」


「っ!?」


せめて死ぬ前に、この思いを伝えたい。

華子の目を真っ直ぐに見ながら思いの丈をぶちまける。


「ずっとずっと、前から、お前のことが好きだったんだ。こんな状況でなに言ってんだって思うかもしれないけど、・・・最後になるかもしれないから、伝える。好きだ、華子」


「か、ずや・・・うん」


伝え終わると、そこには真っ赤にさせた顔にいっぱいの涙を溜める華子がいる。

大きく頷くと、「うん、うん」と小さく息を飲み、俺の目を見つめ返し


「私も、ずっと和也のこと大好きだったよ。ずっと、ずっと、和也のこと」



最後の最後に、互いの気持ちを知れた。華子の言葉が心に深く染み込み、嬉しさが込み上げるーーーそれと共に、悲しみが押し寄せる。



せっかく、思いを伝え合えたのに・・・ここで終わりだなんて。



それが分かっているから、華子の涙は止まらない。


「ねぇ、・・和也」

「華子?」


「・・・キスしてよ」


「っ!?」


恥ずかしそうに顔を赤らめながらそんなことを言われたら、・・・ここでしない男などいるのだろうか?好きな子にそんなことを言われて。


「うん。・・・華子」

「ん、・・・和也」



たぶん、この始まりのキスが、最後のキスになる。


互いにそれがわかったから、互いを強く抱きしめ口付けを交わした。




やがて来る終わりが来ても、二人離れることのないように・・・。




ガタンッ、という大きな音が響いたとき、終わりが来た、と思った。思ったのだが、その先にいたのはゾンビではなく、同い年くらいの男子だった。


彼は無表情でこちらを見てそのまま下に倒れたドアを立てかけ、まるで何も見なかったと立ち去ってしまった。



「いま、のは・・・」


俺たち8人ではなかった。


つまり、別の生存者?

保健室の前にいたゾンビは?

それより彼を追わないとーー!?


「っ!!華子はここにいてくれ!」

「え、う、うん。わかったっ!」


俺は慌てて保健室の外に飛び出して、固まってしまった。

そこにはゾンビの死体があった。

たぶん、保健室のドアを叩いていたやつらだろう。

彼と、これらを合わせ見れば・・・どういう状況かなんとなくわかる。


「これ、はお前が“助けて”くれたのか?」


“助けて”くれたのか?


世の中がこんな状態だ。

俺はあえて“助けて”と聞いてみた。

ここで、助けた見返りを求められるのはかまわない。だけど、その見返りで彼の危険度が分かるはず。


だけど、彼はこちらの言葉にただ頷いただけだった。


思わず「マジかぁ」と言葉が出てしまったけど、これは見返りを求めないということにと、本当に彼が複数のゾンビを狩った、という二つの驚きに対してだ。



その後、彼と少し話してみて悪い奴ではなさそうとわかった。


彼の知る情報もほしいし、こちらと助けられた恩はできるだけ早く返したい。



俺は彼をホームへと誘った。






「それでよく知りもしない奴をここに連れてきたのか?」


「ああ、そうだよ」


不機嫌を全開に出したような顔をするのは同級生の前橋宗一郎だ。

彼は腕を組んだまま壁に寄りかかり、敵意に似た嫌悪すら向けてくる。


「もしそいつが悪党だったらどうするだ?ゾンビを複数同時に相手にできるってのがホントだとして、そんな奴ここに呼んで、襲いかかってきたらどうするつもりだ?」


「そんなことする奴には見えないよ。それに、もしその気なら俺と華子しかいないあの状況を狙わない手はないだろ。俺だって最低限人のなりは確かめているよ」


宗一郎の言っていることも理解できる。ギリギリで安定を保てている今の状況に、別の何かの要素を加えるのが不安なのだ。



だけど、だからこそ、俺は新しい要素が必要だと思った。


「それに、今のままだと、“先はない”って分かるだろ」


今度は俺が宗一郎を見据える。

そう、今の俺たちはなんとか平安を保てていた。だけど、それは本当に“今”だけなのだ。この先、一週間、二週間くらいならまだ持つかもしれない。


だけど、1ヶ月、2ヶ月となったとき、たぶん安定は崩れている。


俺たちは学校にあった非常食を消費しながら生きている。水もそうだ。


そんな消費だけの生活は長く続くはずもない。これが切れたとき、外から手に入れてこなければ行けなくなる。


そうなれば今の籠りきりの安定など直ぐに消える。


だからこそ、外から来た彼に“何か”を見たい。



それが希望になるのか?と聞かれたら分からないが、それでも何か変わる気がする。そう思えたのだ。



だからこそ、宗一郎を説得した。


宗一郎も薄々わかっているのだ。

ただ、彼はこの歪んだ生活をどこか望んでいる節がある。


その歪みが時折見え、俺は密かに彼を警戒していた。


何事もなければ良いのだけど・・・。



「えっと、それで生存者の“彼”?はどんな人なの?」


宗一郎との話が一段落付いたからだろう。

そう聞いてきたのは華子の隣に座るもう一人の同級生、月夜野遥さんだ。


彼女と彼女の妹、月夜野七海ちゃんはここに残るしかなかった子供達を置いていけない、という理由で残った二人だ。

因みに、この二人かなりの美少女だ。

俺的には華子の方が好きだが、一般的に言うなれば、この二人、並みのアイドルじゃ勝ち目がないくらいには可愛い。

というより、姉の方はこの学校の(以前)アイドルのような存在だった。


男女問わずに人気で、ファンクラブや親衛隊まであったくらいだ。



「う~ん、一言でいうのは難しいけど、頭は悪くないと思う。俺のいった言葉の意味もちゃんと捉えてたし、互いに警戒するのを忘れてなかった。たぶん、俺たちよりこの世界に馴れてると思う」


「そっか、でも、その人は一人でこんな場所まで来たの?外にはゾンビも沢山いると思うんだけど」


「その辺は聞いていないけど、一人っぽいな。まあ、詳しくは直接聞いた方がいいと思うよ」


そうして、話がまとまり、彼を呼んだ。


彼は教室に入ると片品未来ちゃんと川場翔太を見て驚いた顔をしていた。

こんな場にこんな小さな子がいるとは想定外だったのだろう。


そうして、彼は月夜野さんに視線が行き、固まっていた。


たしかに月夜野さんは美人だし視線が止まってしまうのは分かる。


だけど、彼の視線は完全に固まっていた。




「え、・・・もしかして」


月夜野さんも彼の顔を見て、まさか、という顔をする。

この二人知り合いなのか?

そんな疑問も直ぐに分かることになった。



「もしかして、“ぺんちゃん”?」


「・・・“ハル”」





知り合いらしい。ならば話は早い、そう思ったのもつかの間だった。


彼は月夜野さんを確認したとたん、グラリと倒れ、そのまま気絶していた。



「・・・な、何が、どうなっているんだ?」



俺は訳が分からず困惑するしかなかった。

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