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世界を救うのは僕しかいない!?  作者: 灰色蛍
プロローグ
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【第十一話】工業高校

憂鬱を吹き飛ばすのはやはり楽しいことに限る。

そして楽しいことと言えば、美味しい物を食べることだ!

そんな訳で、一晩たっても憂鬱が晴れなかった僕は昨日掻っ払ってきたタコ焼き器を使用してタコ焼きパーティーを始めました。はい。



流石にタコは痛んでいたので、中身は適当にウィンナーやミートボール、ハズレに梅干しにタバスコ。一人ロシアンたこ焼きだ。


朝からバリバリに焼いて、バリバリに食べて、バリバリに吐いた。


梅干しとタバスコは駄目だった。


僕の口の中でちょっとした核反応が起こった気分だ。


因みに、朝から五十個ほど食べたので正直胃が重たい。



でも、今日も今日とて僕の冒険は続く。


そう、僕たちの冒険はこれからだ!



と言ってみたところで、僕たちと言っても一人だし、僕の冒険はまだ始まってすらいない。


今日は昨日とは反対方向へ向かう。



反対方向である南にはこの学校と同じ規模の工業高校と私立のデカイ高校とがある。


たしかそこも緊急の避難場所になっていた・・・気がするけど。


どちらにしろ、ここと同じように集まった人の中に感染者がいてパンデミックっ!!となったに違いない。


生き残りがいるかどうかはわからないが、僕のような存在がいたのだ。他所の学校にもスコップ片手に奇声をあげながらゾンビを狩っている人間がいても可笑しくない。



しかも、片方は工業高校だ。よくドラマなんかじゃ鉄パイプや釘バット持って他校に殴り込みにいくあの工業高校だ。


僕の考えが正しければきっとそこは僕以上の猛者がいるに違いない。


ノコギリと巨大モンキーレンチとかチェーンソーを持った半裸で奇声をあげながら暴れまわるモヒカン&リーゼントが大勢いるに違いない。ゾンビ?なにそれただの雑魚でしょ?という具合に違いない!!なんというカオス!!


そんな訳で僕は工業高校ならではのなんかすごいシャベルを求め工業高校の校門までやって来たわけです。


残念ながら未だに生存者との遭遇はない。


モヒカンとは会わなかったがリーゼントのゾンビが三体ほどいたときは心のそこから驚いた。


僕は校門から校舎を窺うが、モヒカン族もリーゼント族もいるようには見えない。


校舎は一階から四階まであり屋上はソーラーパネルで敷き詰められている。

校舎事態が少し変わった作りになっていて教室棟、専門教科棟が二棟、そしてそれらを繋ぐように職員室などが含まれる棟があり、上空から眺めるならEの字のように見えるだろう。


まあ、渡り廊下やら何やらがあるのでいまいちEの字にはならないけど。



そんなこんなで校門から隠れながら移動し校舎を観察するが、生きた人間はあまりいそうもない。


一階から四階まで満遍なくゾンビが徘徊している。


見た目的にブレザー姿が多いから学生が感染したものなのだろう。


ざっと見ただけでも100体前後いそう。


それにしても生存者はどこに行ったのだろうか?

やはり工業高校だから他校に殴り込みに行っているのか、もしくは、あれだ。

ソーラーパネルで動くエコロジーなバギーに乗って旋盤やマシニングセンターを使って作った金属製の武具を持ってあちこちを徘徊しているのか。


僕の頭の中には工業高校イコール不良かオタクしかいないものだと思っている節がある。

少なくとも4:2:4くらいでオタク普通不良だと思っている。

だから、あれだ。

オタクが作り、

不良がそれで戦う。

正しく生産職と戦闘職の使い分け。

普通は知らん。


きっといまあそこで徘徊しているのが普通なのだろう。



さてさて、僕の目的は新しいシャベルだ。取り敢えずありそうな場所を巡って、と歩き出そうとしたとき、校庭の奥の方に不気味なモノが見えた。


いや、ゾンビだらけでどこもかしこも不気味なんだけど。



それでも、それはまた一段と不気味で、


周りのゾンビと比較するならば二メートル半はある体長。

首や銅、手足が異様に長く、猫背になっている。ピント背を伸ばせば三メートルに届くかもしれない。

人の頭と足を持って引っ張ればこんな風になるかもしれないが。


兎に角、そんな目立つゾンビがいたのだ。

しかも、ゾンビらしく皮は剥がれ、中の肉が剥き出し。特に手足は皮が全てなく赤いというか黒い。これが遠目でよかった。近くで、しかも、初見だから軽く悲鳴をあげていたかもしれない。


そんなゾンビちゃんだが、たぶんあのゾンビも体育館で戦ったゾンビと同種のものだろう。


普通のゾンビの進化というか変異というか、


変異体と呼ぶか進化体と呼ぶか。

まあ、変異体とでも呼ぼう。


そう言えば、と思い出す。あのデパート。

中にいたゾンビはとてつもなく弱く雑魚ゾンビだったけど、外に群がっていた中には変異体が何体かいた。


あまりのゾンビの数に目の錯覚かと思ったけど、今さら思い出すと腕が丸太みたいにぶっといのとか、首がろくろ首みたいに長いゾンビがいたはず。


変異体はたぶん、通常のゾンビよりも強い。

いや、実際は知らない。強いとか弱いとか考える前に倒してたし。

それでも、アニメや漫画でお馴染みの変身をしたのだ。弱くなる、ということはないだろう。


変身しただけで倍とか十倍強くるキャラだっていたはず。ならばあのゾンビが通常の十倍の強さである可能性もなくはない。


・・・もしまたデパートに行く用事があったら気を付けよう。


といまは、そんなことよりも目の前の変異体だ。


たまたま見たけたけど、あれをどうしようか?

このまま見逃してピンチの時に現れたら困る。


普通のゾンビなら不意打ちされても対処できるけど、変異体は予想がつかない。ならば、変異体は見付け次第排除、という方向性で行こう。

もちろん、その時に余裕があるのなら、だが。


因みに、いまの僕は余裕がある。たこ焼き五十個分の元気を発揮するときだろう。


というわけで、僕はゾンビに見つからないように移動する。


校庭を突っ切っていけば速いがそれじゃ直ぐに見付かる。だから、取り敢えず鉤縄で校舎の屋上に登りそこから奴の真上に行く。


幸い屋上にゾンビはいなかった。



真上まで来てよく観察。

最近目が異様に良いから遠くからでもよく見えたが、やはり近付いて見ると凄く気持ち悪い。キモい。



頭に当たる部分は遠目からではわからなかったけど、顔がないのだ。

いや、目や鼻がない。頭部には口裂け女もビックリな大きく避けた口が顔を斜めに両断しているようだ。


もともとは普通のゾンビであったのだろうが、これまた気持ち悪い変身だ。

体にはボロボロだが、服を着ていて、そこから伸びる手足は長く赤く黒い。

人の皮を剥ぎ、筋肉を剥き出しにしたようなそれは見ているだけで痛々しい。



果たしてこれがどれくらい強いのか。

見た目だけでも普通のゾンビよりは強そうだけど・・・。


取り敢えず、僕は鉤縄を使ってシュルシュル~と屋上から降りる。


物陰に隠れるように降り、ゾンビにも見つかっていない。

あとでステータスノートに《隠密》ってスキルを付けたそう。うん。


悠々と歩き回る変異体のあとを柱や自販機に隠れながらついて回る。

にしても、本当にバレない。変異体だけじゃなくて普通のゾンビにも。

一度普通のゾンビが二メートルほど前を通りかかったときは焦ったのだけど、柱に隠れて普通にやり過ごせた。


ゾンビさんって臭いとか赤外線で人を判断できないんだっけ?

それともなんだろう。


ゾンビをハンティングしまくった僕からは既にゾンビと同じで臭いがするとか。



・・・笑えない冗談だ。




そんなこんなで、僕は変異体が他のゾンビから離れるのを待っている。


できれば半径五メートルはゾンビがいない空間が望ましい。


変異体とちゃんと戦うのはこれが初めてだ。

雑魚ゾンビに邪魔をされて一撃で殺される、なんてバットエンドは迎えたくない。



なかなか~と粘ったところで、校庭の中央付近で変異体と回りのゾンビの距離が離れた。正しく狙い時だ。


因みにこの時僕は花壇の雑草に紛れていた。我ながらよく見つからないものだ。



まずは戦闘においての基本。背後を取ること。

相手はゾンビだ。ゾンビは基本的に頭を潰さないと倒れない。


そんなゾンビに正面から挑むというのは、よっぽどの実力差がなければ不可能だ。


だって考えてみてほしい。


ゾンビと真っ正面から対峙。

ゾンビは在り来たりなゾンビポーズだ。こう、腕を前に突き出したやつ。


さぁ、そこで見てみよう。まずどうやって頭を潰す?


腕を突き出したゾンビを倒すにはまず腕をどうにかしないといけない。それはわかるだろう。そのまま頭を破壊しに行けば、ゾンビの手につかまりバックンチョされる。

なら、ゾンビの腕を先にチョンパすればと考えるが、基本的にゾンビに痛覚はない。なら、腕をチョンパしても狼狽えることがないのだ。

つまり、腕をチョンパしたら、その隙にバックンチョされるのだ。


これを成功させるにはよっぽどの早業か、もしくは、ゾンビのバックンチョを避ける技術だ。


雑魚ゾンビ相手にならできるけど、未確認であるところの変異体に試すのはちょっの厳しい。


なら、やはり背後からの一撃が一番だ。


背後からなら腕はない。直接頭を狙えるのだ。



・・・一回だけ頭が180度回転して後ろを向いてるゾンビもいたけど。ああいう場合はどちらが背後になるのだろう。

取り敢えず後頭部を狙って叩き潰したけど。



というわけで、僕は出来る限り気配を消し変異体の背後を取る。背後を取ってからあとは一瞬だ。


他のゾンビに見付かり近付かれても困る。


だから、一瞬。いや、一撃。


僕の一撃は背後から正しく奇襲という形で、そして・・・



普通に変異体の首が飛んで、地面にべちゃりと落ちた。


「・・・・・・」


頭がなくなりフラりとバランスを崩した体が前のめりに倒れた。


「・・・・・・」



変異体が倒れたためか、その戦闘?音のためか、回りのゾンビに僕の存在がバレて集まってくるのがわかる。



だけど、・・・えっと。何て言うのか。


「・・・複雑だ」


僕の頭の中には激しい戦闘シーンが用意されていた。

背後からの奇襲を難なく避け、そのまま鋭い攻撃を放ってくる変異体。それを紙一重で避けながら必死に攻撃に出る僕。僕のシャベルと変異体の鋭い手が幾度となくかち合い火花を飛ばし、最後には変異体の攻撃にクロスカウンターのように止めを刺す僕。


・・・何て言うバトル展開を予想していた。


それが、これだ。


僕は立ち尽くしながらも迫ってきた普通のゾンビをシャベルで殴り飛ばし、首を狩る。


立ち尽くしながら首を狩る。


同じ作業を繰り返すが如く首を狩り、それは校庭のゾンビ30体が首なし死体に成り果てるまでたんたんと続いた。




全部が終わったあと僕はやるせないため息を付いた。



「・・・でも、次会っても後ろから奇襲は絶対だな」


うん。

それで無傷で倒せたのだ。

なら、変なプライドとか意地より命を大切にした方がずっと良い。


僕は何度目かになるため息をついてこの工業高校をあとにした。


そしてしばらくして気が付いた。


「・・・シャベル探すの忘れた」


もともとの目的は工業高校ならではの新シャベルだ。


それを探し忘れたのだ。


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