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俺と家庭訪問



やってきたーーーこの季節が。


5月初め、それは、俺の勝負の季節。

なぜなら




≪3年前≫

「あの、保護者の方から電話を何通かいただいておりまして・・・。その、大変申し上げにくいのですが、滝田美晴さんと交際をしていらっしゃる、とか・・・?それは大人の立場からしていかがなものかと・・・」


≪2年前≫

「君、見た所大学生のようだが?私のクラスの滝田美晴と交際しているとは本当かね?いやはや、保護者の方にこんな話をとは思ったがまさか君本人が出てきてくれるとは。この際だから腹を割ってきちんと話し合いを・・・」


≪1年前≫

「お前か!うちの可愛い生徒に手を出しているというのは!もう何回もそんな話を聞いてきた!今日こそはと思ってきたがまさか保護者面してここに座るとは!いいか、こういう年頃っていうのは確かに年上に憧れも持つがそれを理解し正しい道に導くのが大人のやるべき・・・」




そう、どれだけ溜まりに溜まった誤解を解くか。

俺には勝負の季節であって、唯一のチャンスの季節だ。

そして今年の勝負の日はーーー今日だ。














「ってお前かよ!!」

「んえ?」


有給を取り、ビシッと信頼を勝ち取れるような好青年に仕上げ、覚悟を決めていた今日。


インターホンが鳴り扉を開けたところにいたのは


「ストレート!」

「よう、トシ!」


そう、ストレートこと風見(かざみ) 直行(なおゆき)先生でした。


「なんでお前だよ!期待してたのに!」

「ん?なんだ?俺じゃ期待はずれだったか?ひどいじゃないか!」

「はぁ・・・俺は今日世間体を回復するチャンスだったのに・・・」

「おう?」

「お前じゃ意味ないんだよぉお!」

「えっと、じゃあ家庭訪問始めるぞ」

「え、うそ、スルー?てか雑」


なんやかんかで、俺 (とストレートと) の家庭訪問が始まった。









「えーと、じゃあ、まず、第1問」

「おい待て、ツッコミが入らないと思ったか?なんだ第1問て」

「第1問」

「だからスルー!?」

「今なに中?」

「・・・もういいや、家庭訪問中でしょ」

「!!」

「いや、なんで驚いた顔してんの。何しに来てんの」

「はい正解」

「だから雑」



「第2問 チャーランッ」

「雑って別に効果音の話じゃないから」

「次なに中?」

「えっ、なに、どういうこと」

「君とチュー」

「キモいよ!!キモいし・・・いやただただキモいよ!」

「そんなんじゃ恋する乙女を傷付けるぜ」

「お前乙女じゃないだろ」



「第サンマ」

「なに第サンマって!?」

「第3問」

「あっ、普通に言い間違えたのね・・・」

「俺の好きな魚は?」

「知らねーよ!」

「答えは今までの発言のどこかにあります」

「・・・」

「・・・」

「・・・サンマ?」

「・・・」

「・・・サンマ?」

「ドゥルルルルルッ、デンッ!コイでした」

「そっち!?そこまで戻るの!?てかなんで二回言わせたの?」((第2問参照 恋する乙女のコイ))



「第4問」

「これどこまで続くのさ・・・」

「俺の渾名の由来は?」

直行(ちょっこう)だから、ストレート」

「!!」

「だからなんで驚くの!?俺が付けた渾名だよ!?てかさっきこの落ちやったし!」

「テッテレーン」

「え、どういう効果音?」

「・・・」

「シカト!?」



「第5問」

「はいはい・・・」

「俺との出会いは?」

「高校1年の時だろ。同じクラスで隣の席だった」

「本当に・・・?」

「え?」

「覚えていないのか・・・?」

「え、なに?」

「そう、あれは中学3年の時だった・・・。彼女に振られ、公園で泣きじゃくっていたときに俺がコーヒーを買って行ってやったんだ・・・。ふっ、懐かしいな。そこから俺たちの友情は始まった・・・」

「・・・いや、それ俺じゃないよ」

「あぁ、まこりんの話さ」

「知らねーよ!誰だよまこりん!?今の時間なに!?」



「第6問」

「そろそろ飽きたよ・・・本当いつまで続くのさ・・・」

「お前が本当に愛しているのは?」

「え・・・?」

「今日、俺は家庭訪問にきた・・・。普通の奴じゃ聞けないようなことも聞ける俺だから!俺だって曲がりなりにも教師・・・。お前が半端な気持ちで滝野・・・ええい、ややこしいな、ミハルちゃんを想ってるってんなら、容赦しないぜ?」


ゴクリ

い、いきなりなんだ・・・

というか


「俺、ミハルのことそういう目で見てないし」


「!!」

「いやだから驚いた顔すんなって!・・・はぁ、俺は、本当に、そういう目でハルのことは見てない」

「お前・・・!それ本気で言ってるのか・・・!?ミハルちゃんの気持ちを弄んでたっていうのか!?」

「は!?なんでそうなるんだよ!弄んでたつもりないし、ていうかむしろ弄ばれてるの俺だし!」

「ふっ、どうせ守るフリして弄んでんだろ、俺の目は誤魔化せないぜ・・・」


ブチッ


「だから!弄んでねーって言ってんだろ!ミハルは俺の大切なっーーーーー



スパンッ


「・・・え?」


和室の襖が開き、そこには、母さんと、ハルと、もう1人は・・・


「ど、どちらさ、ま「かんっどういたしました!!」


「・・・へ?」

「いえいえ、本日家庭訪問に伺う際、(ちまた)で噂なっていることの真偽を確かめたのち、お話し合いをしようと思っていたのですが・・・。確かめるほどでもなかったようですね。そこまで本気でおっしゃるのなら、陰ながら応援させていただきます。もう何も確かめることはございません。これで失礼いたします」


「え、あの、ちょっと待っ、どういうこと」

「あれ、中本先生」

「えっ、先生?」

「おや、風見先生、どうしてこんなところに?」

「えっ、ねぇ、ちょっと待ってください、どういうことですか?」



「あ、これは失礼いたしました。わたくし、滝野美晴さんの担任、中本 裕子と申します」



「・・・ストレート・・・?」

「てへぺろ☆」




バターーーンッ





「あらやだ、トシユキ!?」

「おーいトシ大丈夫かー?」

「滝野さん!?どうなさいました!?」

「トシユキ!」





今年の家庭訪問は、失敗に終わった。










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