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お向かいさんと遠足③

「はぁ・・・」


買い物を終えたトシユキは、トボトボと帰路に着いていた。


ハル、大丈夫だったかなぁ。

あ、そろそろバスの着く時間か、迎えに行こうかな。


そう思い進路を変更しようとした時



〜♪〜〜♬〜♩〜


スマホの着信が鳴った。


「あ、ストレートだ。・・・もしもし、滝野です」




「え!?」















「み、ミハルちゃん・・・!」

「大丈夫だよ、きっと少し具合が悪くなっただけだ、帰りのバスでゆっくり休めば少しはよくなるだろう。歩かせるのは可哀想だから、俺の背中に乗ったまま帰ろうな」

「うん・・・」


それにしても、気付かなかったな。


「わたし、全然気がつかなかった・・・最初から具合悪かったのかなぁ・・・」

「どうだろう・・・でも、気持ちは分かるかも」

「え?」

「もし俺らが体調悪くても、来てただろうなぁって」

「それはそうだけど・・・言っておいてくれれば良かったのに・・・」

「まぁミハルは、そういうのできない子だから。俺たちが気づいてあげれればそれに越したことはないね」

「うん・・・」


「おい、私を子供扱いするんじゃない・・・」


「ミハルちゃん!」

「あ、起きたか。どうだ?具合は」

「問題ない、下ろせ」

「ダメだ、バスまでもう少しだからこのままでいろ」

「いい、下ろせ」

「聞き分けのないやつだな」

「ミハルちゃん、ダメだよ!このままアスカくんと一緒に行くの!帰るまでに少しでも良くならないとトシユキさんも心配しちゃうよ!」

「・・・そうか・・・じゃあ、頼む・・・」

「うん、それでいい」



「おーい!藤堂!大丈夫かぁ!」

「あ、先生」

「よし、先生が代わろう、君たちは先にバスに戻っていなさい」

「分かりまし


ギュ


「ミハル?」

「アスカが良い」

「滝野、先生がバスまで


「風見ごときが私の名を馴れ馴れしく呼ぶな」


「ははは、なんだ、いっちょまえにこんな時でも威嚇すんのか!可愛いやつだなぁ!」

「触るな、アスカでいい」

「み、ミハル、首を絞めるな・・・!」

「あ、すまない」

「いやーでも。重症そうじゃなくて良かったぞ!藤堂が報告に来た時はびっくりしたが!トシにもそのまま連絡しちゃったなぁ、まあいいか!」

「え、ミズキのやつ、なんて報告・・・」


「なんか、『み、ミハルが!いきなりズーンて!そんで、そんで、バターンて!!とにかく大変だ!死んじまうかも!』っていうから、ははは」


「はぁ、あいつ、相変わらず・・・」

「馬鹿は違うな。なぜあいつに任せた」

「ミズキくん・・・笑」


「さて!帰るまでが遠足だ!帰り道も気をつけて帰ろうな!」



「「はい!」」

「ん・・・」













どどどどどどうしよう

だからやっぱりダメだったんだ、熱があるのに遠足なんて

俺たちの歳だったら微熱なんてどうってことないがハルはまだ小学生じゃないか

どうしようどうしようどうしよう





数分前


「ストレートだ・・・もしもし、滝野です」

『おう!トシか!俺だ!』

「あぁ、うん、どうしたの」

『滝野が倒れた!かなり重症みたいだ!今からこっち出るから帰ったら速攻病院連れていけるようにしておいてくれ!じゃあな!』

「え!?ちょっ、どういう、あ、待っ」


ツーツーツー


「えぇえぇえええ!?」




そして、現在。

風見から連絡を受けたトシユキは一度家に帰り車で下車予定地に来ていた。


そして、風見が連絡し直さなかったせいでトシユキはパニックだった。


やばいどうしようどうしよう俺のせいだぁあ


「はぁ・・・」


ミハル達の乗ったバスが着くまで時間があるが、じっと待っていられず、下車予定地に着くとうろうろしていた。







そういえばーーー



そういえば、高校の修学旅行から帰って来た時。


「え?ミハルちゃんが熱?」

『そうなのよぉ、だから空港からはバスで帰って来てね〜』

「えっ、あっ、おい!ちょっと!母さん!」


「バスって言ったって・・・そんな金残ってないよ・・・」


ミハルちゃんってお向かいの子だよな、最近越して来た。親は何してんだろ、なんで母さんが。


「はぁ・・・めんどくさ・・・。誰かに借りるか」



「ただいまー」

「あら、お帰りなさい」

「バスのお金、足りなかったから後でちょーだいね」

「わかったわ〜。楽しめた?」

「あぁ、楽しかったよ」


はぁ、でもやっぱり疲れた。

早く着替えて寝よう。


「あっ、そうそう、今ミハルちゃんトシユキのベットで寝てるから起こさないようにお願いね〜」

「は!?なんでだよ!」

「こら、おっきな声出さないの、ミハルちゃんが起きちゃうでしょ」

「だからって、なんでおれの部屋なんだよ」

「だってうち客用のお布団なんてないもの。トシユキの部屋の隣の空き部屋だって最近掃除してないから埃がたくさんでしょう?」

「そうじゃなくて、自分家で寝せればいいだろって「じゃあよろしくね〜」

「おい!ちょっと母さん!!」




「はぁ・・・マジかよ・・・。ほんとだし・・・」


扉を静かに開けると、仰向けに寝て頭にタオルを乗せた女の子がベットにいた。


「参ったな、これじゃあ寝れないじゃないか・・・」


ベッドの端にゆっくりと腰を下ろし、ため息をつきながらミハルを見た。


息、荒いな。辛いのかな。

・・・飲み物でも、持って来た方がーーー



キュ



「え?」

「・・・行っちゃ、や」

「え?・・・あ、うん・・・」


立ち上がりかけていた腰をまたベットの落ち着けた。


袖を掴む手がやけに小さく見えて。

呼び止める声がか細くて。


ーーー守ってあげたい、と。


ミハルの頭をそっと撫でた。


「だぁぁ!だからなんだ!どうした俺!」

「ん〜〜・・・」

「あっ、やばっ」




「あ?お前誰だ・・・?」




「・・・・・えっ」















「今思い出すと笑えるなー」


そして今、あの時には考えられないくらい、俺はこんな風に取り乱している。


「もうミハルがこっちに来てから5年か・・・俺も結構絆されてんのかなぁ・・・。いやまて、笑えない!!非常に笑えない!!」


「はぁ・・・、遅いな」


もう予定時刻を10分過ぎている。

周りには同じように子供を迎えに来た親がたくさん集まっていた。


「あ!」

道路の先に、この街の観光バス。


目の前に来て止まると、たくさんの子供達が降りて来た。



しかし、ミハルが降りて来ない。

(えっ、なんで・・・!?)



「あ、あの!滝野美晴はどこですか!?このバスに乗ってるはずなんですけど!倒れたって!先に降ろしてもらえないんですか!?」

「え?あ、それならきっと・・・」

はーい、さようならー、と子供達にバスの入り口で手を振る引率の先生に詰め寄っていると



「何をしている?トシユキ」



「え?ミハル、どうして・・・?え?あれ?みんなも、ストレート!」

「おう!トシ!何してんだ?」

「何してって・・・あっ!ハル!びょ、病院!」

「病院なら大丈夫だ、帰って寝ればいい」

「そんな、だって、重症だって・・・」

「あ、悪い、こっちの手違いだった、連絡し忘れたわ、ははは」

「・・・は?」


「ていうかトシ、なに木崎先生口説いてんだ?」

「口説いてねーよ!え、だって、バスに・・・」

「おぅ、俺らは後ろのバスだ!」

「え、うしろ・・・?」


うしろのバスの正面には1〜3組と書いてあった。

木崎先生とやらに謝ると、トシユキはミハルを抱えた。


「ミハル、本当に大丈夫か?」

「大丈夫だ」

「そうか・・・じゃあ、帰ろう。みんな、ありがとうね」

「はい、ミハル、またね」

「ミハルちゃん、お大事に」

「じゃあな、ゆっくり休めよ、滝野!トシもまたな!」


みんなが手を振るのを見てから、家を目指した。















「ごめんな、ミハル」

「ん・・・?」


後部座席に寝転んだミハルに、トシユキが声をかけた。


「俺が無責任に送り出したから辛い思いさせたな・・・プリン、買ってあるから、帰ったら食べような」

「ん・・・トシユキ」

「ん?」


しかし、少し経ってもミハルから次の言葉は出て来なかった。



『あぁ、見て楽しむんだよ。綺麗だろ』

『じゃあなんでお前はさっきからサクラばかり見ている』

『見て楽しんでいるんだよ。綺麗だろ』

『・・・そういうものか』

『そういうものだ』



「綺麗か・・・?」

「え?何?」

「いや・・・」

「?」


「まぁでも・・・綺麗、かもな・・・」


そのまま吸い込まれるように、ミハルは眠りについた。











「あ、おはよう。どう?ご飯たべれる?」

「ん・・・おはよ・・・」


ミハルは帰りの車でいつの間にか寝てしまっていて、それから三時間ほどしてから目を覚ました。


「それともプリンがいい?」

「ん・・・プリン食べる」

「そうか、今もってくるから待ってて」

「待て」

「えっ」


そういって、ハルが俺の袖を強く引っ張った。


「ハル?」

「・・・も少しここにいろ・・・」

「あ・・・うん・・・」


なにこれ、デジャヴ?

いつも強気にからかってくるハルがこうだと調子狂うな・・・。


でもやっぱり、少し可愛い、かも。



「そういえば」

「ん?」


俺が機嫌よく聞き返すと


「もう寝てる時に手を出すようなことはしなくなったんだな」


そう、ニヤっと笑った。




「お前っ、いつのこと覚えて・・・!」

「あれは正直引いたからな。会って間もない幼稚園児を寝てる隙に・・・こいつはとんだ変態なんだな、とその時確信したぞ」


そう言ってハルがくすくす笑う。





「〜〜〜〜〜〜っ手ぇ出してないし、やっぱ可愛くない!!!」







ハルは次の日にはすっかり元気になった。



ーーー遠足編終わりーーー


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