お向かいさんと遠足②
今日は日曜日。
とうとう遠足の日がやってきた。
ピピピピッ
ピッ
「じゃあ行ってくる」
「ダメだよ!?熱あるじゃんか!!」
元気なかったのは体調が悪かったからか、気付かなかった。
「微熱だろう、このくらい平気だ。薬も飲んだ」
「ダメだよ、悪化したらどうするんだ」
「大丈夫、何かあったら先生たちもいる。心配するな」
「心配するなって言ったって・・・」
うーーーん、どうしたものか。
まぁ、でも、36度9分か。
これくらいなら、大丈夫かな。
「なんだ、そんなに看病したいのか?そういうプレ「何言ってるの!?・・・はぁ、だからそんな言葉どこで覚えてくるんだか・・・」
「とりあえず!少しでも辛くなってきたら先生に言うこと!帰りはバスの止まるところまで迎えにいくから」
「ん、分かった、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
さて、俺は、買い物にでも行くかー。
遠ざかるバスを見ながら、トシユキは背筋を伸ばした。
色とりどりの魚たちが、閉ざされた空間の中で、まるで閉ざされていないかのように自由に泳ぎ回る。
そんな魚達に、こちらはみえているのだろうか。
見えているとしたら、ただただ立ち竦んでこちらを見ているだけの私達は、どのように魚達の目にうつっているんだろう。
私の目に、お前達は、とても、それはとても
「うまそうだ・・・」
おいしそうに見えている。
「ミハルちゃん、これ食べたいの?いる?」
そう言って、サクラが今自分が舐めているのと同じ種類の飴をポケットから取り出した。
「うるさい、俺のミハルがそんな下等生物の食べるようなものを食べる訳がな・・痛い痛い痛い痛い!」
「なに?下等生物がなんだって?お兄ちゃんそんな風に育てた覚えはないなぁ〜」
「痛い痛い痛い!」
「あ、アスカくん!ミズキくんを離してあげて・・・?」
「そうだ、トム、ジェリー、うるさいぞ。静かにしろ、魚が逃げるだろう」
「トムとジェリーじゃねぇし!お前いつまでも引っ張んなし!」
「その前にサクラに謝れ、バカ」
「いでっ」
4年2組、道眞桜、藤堂朝霞、藤堂水輝は、幼馴染であり、ミハルの近所に住む同級生である。
ちなみに、藤堂兄弟は双子であり、アスカが兄、ミズキが弟だ。
「あ、あいつが一番うまそうだ」
「てかさっきから美味そうってなんだ!?魚は食べもんじゃねーぞ!?」
「魚は食べ物だよ、ミズキ、混乱しすぎ。ミハル、水族館のお魚は食べられないよ」
「そう、なのか?」
「あぁ、見て楽しむんだよ。綺麗だろ」
「じゃあなんでお前はさっきからサクラばかり見ている」
「見て楽しんでいるんだよ。綺麗だろ」
「・・・そういうものか」
「そういうものだ」
「っ!///・・・あ!そろそろイルカショー始まるよ!行かない?」
「あぁ、行こうか」
「ん、そうだな」
「イルカ!?イルカってあれか!!でけーやつだな!でけーやつ!」
「そうだよ、"でけーやつ"だ」
「でかくてバシャーンってやつだな!」
「そうだよ、"バシャーン"ってやつだ」
「でかくてバシャーンは危ないって昨日ツルタマレンジャーが言ってたからな!みんな気を付けろ!」
「そうだね、とりあえず声の"でけーやつ"も行動が"バシャーン"の奴も周りに気を付けろ。捕獲されるから、なっ!」
「痛い痛い痛い痛い!なんで!?」
「もう!アスカくんもミズキくんも、し、静かにしてよ・・・!そろそろ始まるよ!」
「・・・すまない」
「わ、わりぃ」
プツン
『さぁ〜て!会場の皆さん!お待たせいたしました!本日の主役、イルカのリンリンちゃんとシンシンちゃんで〜す!』
わぁあっ、と歓声が上がる。
「なんかパンダの名前みたいだな」
「むしろパンダから取ったんじゃないかな」
「パンダ!?パンダも出るのか!?」
「ミズキくん、パンダは出ないよ・・・笑」
『では、まず!みなさんにご挨拶しましょう!みなさーん、こーんにーちわー!』
イルカ達がカラダの半分ほどを水面からだし、胸ビレをパタパタ振った。
「可愛いな」
「可愛いね」
「すげぇな!」
「可愛い!」
『じゃあ、挨拶も出来たところで!まずはお得意のジャンプから!』
わぁあっ
静かに揺らいでいたプールの水面が、踊り出したように跳ね上がった。
「綺麗だったね〜!イルカショー」
「だな!すごかった!俺的にはサメの方がカッコよくて好きだったけどな!」
「ミズキくんサメが近寄ってきた時逃げてたじゃん」
「に、逃げてねーし!」
時刻はもうすぐ閉園の時間を迎える。
これで、楽しかった遠足も終わりに近づいてきた。
「あぁ、綺麗だったね、イルカショーも、他の魚達も。・・・ミハル?」
「・・・」
「ミハル、どうした?イルカショー楽しくなかった?」
「・・・」
「ミハル?・・・ミハル!」
「ミハル!?」
「ミハルちゃんっ!?」
「ミズキ、先にバスに戻って先生達呼んで来てくれ!ミハルは俺がおぶって行くから」
「お、おう!」
「ミハル、もう少し頑張れ」
「ミハルちゃん・・・」
ミハルの視界が暗転した。




