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お向かいさんと憂鬱②

今回のお向かいさんの憂鬱①〜③は、ちょっと胸がキュッてなるようなお話です(*´꒳`*)





イロトリドリの世界の中で


普段とは違う髪型で


これからの2日間に夢を見る




文化祭が始まった。












「いやー、晴れたねー」

「ですねー」


(くだん)の新米教師ペアは、駐車場にて交通整備中だ。


「準備やるだけやってお楽しみはなしっすか〜」

「仕方ないですよ、俺たちもそうだったでしょう」

「まぁそうだけどさー」

「それに、こういう日は小さいお子さんのいる先生達に楽しんでもらいたいじゃないですか」

「うわっ、タッキーいい子!」

「鎌ヶ谷先生は欲に忠実すぎです。俺を見習ってください」


可愛い子いないかな〜と、相変わらずの鎌ヶ谷を視界の端に捉えながら、トシユキはぼんやりと考えていた。


「そーいやミハルちゃん?だったっけ?来ないの?」

「一応昨日誘ったんですが、どうも乗り気じゃなくて」

「ふーん?てか誘ったって!なんか卑猥っ!」

「お前ろくなこと言わねーな!」

「まぁま、滝野せんせ、俺たちも交代来たら楽しみましょ!」


「はい」


トシユキは子供らしい鎌ヶ谷の陰にミハルを思い出しながら、優しく微笑んだ。




















トシユキは優しい。


私がワガママを言っても、迷惑をかけても、くっ付きっぱなしでも、冗談交じりに怒るだけで、本気で私に怒ったことなんて一度もない。


冗談交じりに怒った時だって、すぐ後には困ったように笑って撫でてくれる。



私は知ってる。


私のせいで早く帰ってくることも。

私のせいで友達とあまり遊びに行けないことも。

私のせいでたくさんの人に色々言われていることも。


でも、大好きなものはやめられない。


だからせめて、今日くらいは解放してやらなくちゃいけない。




「ミハルちゃん!おはよう!」

「おはようサクラ」

「晴れてよかったね!」



「あぁ、本当に」



『生徒の皆さんは校庭に集まってください。10時より開会式を始めます』

プツンッ




「ミハルちゃん!行こ!」

「あぁ」


ミハルはサクラに手を引かれて校庭に駆けていく。


トラックの外側にはびっしりとビニールシートが敷き詰められ、生徒の保護者達が所狭しとならんでいた。




いつもよりも騒がしい今日は、

西郷小学校の体育会の日だ。




「ミハルちゃん、なに持ってるの?」

「いや・・・なんでも」


ミハルは手に持っていた紙を折りたたむと、体操着のポケットへしまった。


「今日トシユキさん来るの?」

「今日は来ない」

「え!なんで!?」

「トシユキは仕事だ。今日はトシユキのお母さんが来てくれる」

「そ、っか・・・」

「そんな顔するな。別にトシユキがいなくても死ぬわけじゃない」

「そうだけど・・・」

「ほら、先生来たから」

「あっ」


『えーーー、生徒の皆さん、保護者の皆様、本日は大変お日柄もよくーー・・・



















「やーだー!お化け屋敷行きたいのー!」

「ワガママ言うな!ほら、生徒に笑われてるから!恥ずかしいからやめろ!」

「笑われてるのはタッキーでしょーー?『お化け屋敷が怖くてはいれな〜い』とか言うからーー」

「言ってねぇよ!」

「なら入ってよ」

「・・・やだ」

「ほら!」


時刻はお昼を回り、休憩に入った新米ペアは文化祭をひと通り周ることにした。


「それよりご飯食べましょうよ、俺もうお腹すきすぎました」

「ご飯はいつでも食べられるでしょーが!お化け屋敷は並ぶから、時間近くなったら切られるのが早いのーーー」

「ご飯系こそ売り切れたら終わりなんですからそっち行きましょうよ!」


が、早々にどこの店へ向かうかで意見が割れていた。

笑われてるのは両方だ。



「あれー?クマぽん、タッキー!なにしてんのー?」

「小林さん!」

「あ、」


廊下で騒いでいると、お化け屋敷の隣の教室から女子生徒がひとり、顔を出した。


「いやー、こいつがね、お化け屋敷怖がっちゃって笑」

「怖がってないって!」

「タッキー可愛い〜!」

「可愛いくない!」


気づけばわらわらと、たくさんの生徒たちがクラスの中から出てきていた。


「小林さんのとこ何屋さん?これ」

「メイクだよ。あ、ちょうどよかった、寄ってってよ!」

「メイクって・・・俺たち男だけど」

「あぁ全然、そういうんじゃなくて、フェイスペイントみたいなやつだよ、ほら」


小林は、自分のほっぺを指差して言った。

確かに、星型のシールのような、絵のような、可愛らしいデザインが肌にのっていた。


「小林さんがそういうんだからいこーぜ!」

「お前・・げほん、鎌ヶ谷先生・・・」

「ね、きてきて!」





結局、それぞれほっぺを星柄とハート柄に染めた2人は、休憩所で牛丼を食べていた。


「お化け屋敷行きたかったのにー」

「なら明日にでも行ってください」

「明日なら行ってくれんの!?」

「え、明日も俺と一緒にいる予定なの!?」

「そのつもりだったけど?」

「まじか・・・」


ーーー明日

明日はハル、来るかな・・・


今日、どうして来たくなかったんだろう

明日になったら、来る気になっているだろうか


「なになに、恋のお悩み?黄昏ちゃってどうしたの」

「げほっ、ごふっ!」

「あははっ、動揺してんの!?タッキーほんと面白いわー!てか分かりやすすぎ笑」


鎌ヶ谷はケラケラと笑う。


「ぜ、全然違いますよ・・・。ていうか、前から言ってますけど、生徒の前でくらいその『タッキー』っていうのやめてもらえます?あと敬語でお願いします」

「え〜タッキーかた〜い、蓮子お近づきになりたいのに〜」

「キモいからやめろ」

「ぷー」

「生徒の前だけでいいんですから。いい大人が、シャキッとしてください」


ため息をつきながらそう言うと、鎌ヶ谷が押し黙った。


「今度は黙っちゃってなんですか、撤回はしませんよ」

「いや、そうじゃなくてさ。ますます信じられないなーって」

「何が?」

「昔荒れてたって本当?」


トシユキは少し驚いた顔をすると、すぐにまた牛丼を食べ始めた。


「・・・誰から」

「岸元先生。高校生ん時担任だったって」

「余計なことを・・・」

「でも、タッキー今すごく真面目だよね」

「当たり前でしょう、大人になったんです。誰だって反抗期のひとつやふたつ、あるでしょう」

「ま、そーだけどさ。文化祭、ちゃんと参加するの初めてなんじゃないの?」

「・・・別に」

「とか言っちゃって、顔に『楽しい』って書いてあるぞい☆」


そう言われて、トシユキは思わず頬をバッと隠した。


「もー、タッキーほんと正直!笑」

鎌ヶ谷がまた、ケラケラと笑う。


「か、らかわないでくださいよ!・・・初めてですよ。真面目になり始めたの、高3の夏くらいからなんで」

「ふーん?」

「聞いといていきなり興味無くさないでくださいよ!なんか俺が恥ずかしい!」

「いやー?興味なくなったとかじゃなくてさ、やっぱすげーなーって笑」

「? なにが?」

「んーん、なんでも。さ、食べたらお化け屋敷行こ!」

「え、今からですか?」

「まだ間に合うっしょ!」

「えー・・・仕方ないですね、入り口まではついていってあげます」

「ねぇもう正直に怖いって言ったら?」



(いやー、すごいよね。だって、それってつまりーーー)



「なにニヤニヤしてるんですか」

「いやー?べっつにー?笑」


(ま、黙っててあげよーっと♪)




15分後、お化け屋敷の前ではまたも攻防戦が繰り広げられるのだった。











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