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本文 じょ

佛説盂蘭盆經(ブッダが説明したウラーバンナについてお伝えしましょう)


 聞如是一時佛在舍衞國祇樹給孤獨園大目乾連始得……


 このように聞きました。

 仏陀(ブッダ)舎衛(サーヴァティー)国の給孤独園(ぎっこどくおん)に滞在してたころ。その門下に(マハー)目乾連(=モッガラーナ)、日本では略して目連(もくれん)とも呼ばれる高僧がおられました。


 もともとは他の宗教……刪闍夜(サンジャヤ)毘羅胝子(=ベーラティプッタ)師の提唱した「不可知論」教団の若手指導者だったのですが、友人の天才哲学者・舎利弗(サーリプッタ)に誘われてブッダの弟子となり、出家修行をしていたのでした。

(*刪闍夜(サンジャヤ=)毘羅胝子(ベーラティプッタ)師の教えについては解説を省略させていただきました。ご関心ある方はご自身で調べてみるか、拙作『のべらいず 維摩経 ~ 今度は言葉責めだ!』の「第三章 弟子品(3)」にて簡単に紹介したのでご参照ください)


 さて仏教では、悟りを開いた人は、さまざまな神通力を使えるようになると伝えられてます。……ここを否定しちゃうと話が進まなくなってしまうので、「オカルトは信用できん」という方もこの先はファンタジー小説という前提でお読みください、、、


 悟りにも四つの段階があるらしいんですが、この日、モッガラーナはそのうちのどれかの悟りを開きまして、新たに六つの神通力を獲得しました。過去や未来がわかってしまう宿命通しゅくみょうつう、どこでも見えてしまう天眼通てんげんつう、etc,etc, です。

 モッガラーナは、すでに亡くなっている両親の、自分を育ててくれた恩に報いることができるかもしれないと思いつきまして。さっそく、身に着けたばかりの神通力を駆使して、両親がどこに輪廻転生(りんねてんせい)したのか探してみました。


 以前にもなにかで書きましたが、天眼通を使うとどこにある何でも見えてしまいます。異世界の出来事でも、床下にはびこるシロアリの巣の中でも、女子更衣室のロッカーの奥に転がるお菓子の箱でも。

 なので、やがて……見つけてしまいました。

 自分の母親が、なんと、「餓鬼がき」に生まれ変わっちゃってる姿を……。


 モッガラーナ、<FONT SIZE=+100><STRONG>大ショぉぉぉック!!!!!</STRONG></FONT>



 おっと、餓鬼といっても「生意気なお子様」のことではありません。その語源となった、まあ一種の死霊のようなものです。イメージとしてはグールとかゾンビとかを思い浮かべてください。『餓鬼草子』あたりで画像をぐぐって下さるとビジュアルがわかるでしょう。

 とにかく餓鬼とは、猛烈な食欲で何にでも食いつきますが、食っても食っても空腹で苦しみ続ける、あるいは食おうとしても何も食えないという、救われない哀れな存在なのです。


 餓鬼に生まれ変わったモッガラーナの元母さんは骨と皮だけに痩せこけ、目に入るものを何でも口に入れようとしますが、食べることができませんでした。何かを口に入れようとしたとたん、それは炎を発して燃え上がってしまうのです。


 モッガラーナは大変に悲しくなりました。元母さんがかわいそうでなりません。

 急いでご飯を……米なのか麦なのか雑穀なのかはお経に書いてないのでわかりませんが、とにかく穀物のご飯を鉢に盛り、元母さんの餓鬼に届けようとしました。

 『とある科学の超電磁砲』の白井黒子ちゃん(中1)のごとき超能力……もとい神通力「必殺・テレポーテーション!!」です。


 あ……届きました! 突如として目の前に出現した山盛りご飯の鉢へ、元母さんの餓鬼は嬉しそうに手を伸ばしますッ! インドでは左手は汚いことに使う習慣ですから、ここは汚くない右手でご飯を掴みまして、そしていま、食べようとしますッッッ!


 が……しかし!

 そのご飯は、口に入る直前に炎を発して燃え上がってしまいました。たちまち真っ黒な炭となって手からこぼれていきます……。こうして元母さんはついに、ひと粒の穀物さえも食べることができないまま、鉢のご飯がすべて燃えつきてしまったのでした。


モッガラーナ「うっ……わぁぁぁっ!」


 あまりの悲惨な状況にモッガラーナは絶叫し、泣きだしてしまいました。

 そして、座禅していた木の下を飛び出しまして、走ってゆきます。

 そう、師匠であるブッダのもとへと……。


 - つづく -


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