まえがき
ご存知の方はご存知でしょうが。ゴータマ=ブッダまたの名を釈迦牟尼、つまりお釈迦様が、2500年前のインドで、死にかけたほどの激しい修行をした末についに悟りをひらきまして、仏教が始まりました。
やがて弟子が増えまして、「僧伽」と呼ばれる仏教教団ができました。
初期の僧伽には、そりゃ~キビシーぃイ戒律がありまして……たとえば、基本の五戒。斎戒用の八戒。在家信者用の十善戒。そして出家修行者には摩訶僧伽律だの四分律だのという250項目くらいのルールもありました。
(注:戒(努力目標)と律(絶対規則)とは厳密には違いますけど、ここではぶっちゃけて「どちらもルールみたいなもの」という認識で続けさせてください(汗))
しかし、厳しい戒律であるほど、さまざまな状況ですべてを遵守し徹すことは困難です。
そこで……一ヶ月に一回、満月の翌日(陰暦の15日)に、戒律を破ってしまったことを先輩の僧侶などに告白し、懺悔して許しを請うという習慣ができました。
この習慣は「盂蘭盆」と呼ばれていました。
そう、盂蘭盆こと「お盆」の行事の原型です。
ん? 変ですよね……現代の「お盆」とはかなり違うような???
現代の日本では毎月でなく年に一度、「過去に亡くなった人を追善供養」するのが「盂蘭盆」とか「お盆」と呼ばれる行事となってますよね。
なぜ、変わってしまったのでしょうか?
「盂蘭盆」の目的が変わってしまった原因は、実は「盂蘭盆経」という短いお経に書き残されているできごとがきっかけでした。
最初は聖賢を大量生産するための修行システムとして始まった仏教が、どうして先祖供養をメインとする信仰形態に変わっていったのか、そのきっかけをこのお経から読み解ける……かもしれません、もしかすると。
ということで、筆者に解読できた範囲で「盂蘭盆経」に書かれている物語を小説化してみました。
ただ予備知識のない方にはわかりづらい部分もありますから、忠実な翻訳ではなくてきとーにアレンジしたり解説的な文章を加えたりもしています。
けして学術目的とか宗教目的とかじゃなく、趣味の素人小説で古典を題材にしてみましたってことで、こまかいツッコミは遠慮していただく方向でひとつお願いします~。
「つけたし部分やオマエの解釈なんか要らねえ、正しい内容だけを知りたいんだ」という方は、どうか原典に当たってみてください。全文が漢字ですから、ちょっと慣れれば西洋言語とかより楽ですよん☆