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熱に、かかる  作者: 水火
第一部
1/11

 恋をした弟は、変わったと思う。


 私とは違い、弟はたくさんの恋人を作ってきた。あぁいや、その言い方には語弊がある。年齢イコール彼氏いない歴の私とは違って、弟は世間一般で言う人並みに恋を成就させてきたのだ。


 私も恋と呼べるものは経験したが、どれもこれも片想い。唯一本人に告げることができた告白でさえ、好きな人がいると断られた。それはいいのだ。分かっていて告白したのだから。


 あぁ、違う。そんなことではない。……そう、弟のことだ。弟はこれまで、中高大と恋人を作り、社会人になった今にも新しい恋人ができた。そして、変わった、というのはこれだ。

 結婚、というものを意識しているからなのだろうか。「好きなものを食べられない」「喧嘩をした」と言うのに、朗らかな笑顔を浮かべているのだ。幸せそうに、愛おしそうに。


 今まで、そんな笑顔を浮かべた弟を見たことがあっただろうか、と思う。文句を言いながらも、好きなのだな、と今まで長い間、それなりの位置から弟を見ていた私が感じるのだ。愛されている彼女が感じないはずはないだろう。


 そうして彼女に影響されて、仲の悪かった父の誕生日プレゼントなどを買って送って。自分の身内に風当たりの強い弟が、何事でもないかのように優しく笑顔で接する。

 私のイメージの中の弟は、仏頂面で目つきが悪く、私からすれば何を考えているのかも分からないような人間であった。


 よく言えばインドア派、悪く言えば引きこもりがちで奥手である私と、アウトドア派でフレンドリーな弟。

 頭の出来もあちらが良く、劣等感を刺激されて家では良い子であろうとした私と、反発し続けた弟。正反対な私たち姉弟の溝は、埋まることはないのだろう。

 否、埋めようと食事に誘ったところで、私の誘いを受けてくれるかさえも分からないのだが。


 そんな、弟が、変わった。仕事を始めたからなのだろうか。彼女がいるからなのだろうか。目的もなくフリーターでいる私よりも、充実しているように見えるからなのだろか。


 ……あぁ、いや。やはり恋であると私は思う。両想いの恋が、愛が、弟を変えたのだ。家族になりたいと思うほど思える人の存在が。




 あぁ、人生で、一度で良い。私もあんな相手がほしい。

 この心を、全てあげてしまえるような。私という存在さえ変えてしまうような。

 強く、ひどく、うなされるような。そんな恋を、してみたい。


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