stage-0 此処ではないもう一つの世界で
設定は現実世界の一部を使用していますが、間違ってもこの世界がこうなったらと言うものでは有りません。
こんな世界ですよという程度の理解でいいです。
むしろ、読み飛ばしても問題ないです(笑)
20××年、中国は北朝鮮、ネパールとフィリピン北部の島嶼部に侵攻し、中華連邦を立ち上げる。
この連邦設立に異を唱える諸外国の賛意と目前に迫った脅威に背に腹を変えられない野党の同意を得て、与党は自衛隊から日本自衛軍へと組織改変を行い何時訪れるとも知れない中華連邦の侵攻に備えた。
そして数年の時を経て中華連邦は旧日中平和条約を破棄し、最も日本に近い戦力である東海艦隊を出撃させて日本領海内へと侵攻を始めたのだ。
後の世に言われる『亜細亜戦役』、そして東シナ海で行われた日本と中華連邦の一戦が『東シナ海海戦』である。
勢いよく侵攻してきた中華連邦海軍だったが、日本の空・海両自衛軍の類まれな精度を誇る攻撃で第一陣の連邦海軍東海艦隊は初撃で艦隊旗艦を含む八割もの艦艇を失う事となった。
これに対して日本自衛軍の損失は無人ミサイルキャリアとして使用した旧型戦闘機二機だけであり、海上艦においては中華連邦側のミサイルの至近弾に因る怪我人は出たものの航空・海上自衛軍共に戦死者は出さなかったのである。
東海艦隊はほうほうの態で一旦は本国軍港に戻ったものの、それでも侵攻を進める中華連邦は第二陣として強襲揚陸艦十隻を中心とし、東海艦隊の残存艦と西海艦隊との合同艦隊を差し向けた。
しかしそんな三十隻を超える大艦隊の行動は米軍からの情報提供もあって既に自衛軍司令部は総てを把握しており、司令部は海上自衛軍が誇る潜水艦部隊に対して出撃命令を出した。
二十隻もの潜水艦部隊は侵攻してくる中華連邦大艦隊の進路の領海線に配置され、その静粛性を武器として日本領海に入る直前に中華連邦艦隊へホーミング魚雷の飽和攻撃を行った。
この攻撃には後に一部米軍潜水艦も加わっていたとの噂が流れたが、米軍司令部は軍事機密であるとコメントしただけであり、真相は定かではない。
結果として中華連邦強襲揚陸艦隊はこの魚雷攻撃でコルベット一隻を残して全艦撃沈という中華連邦側から見れば屈辱的な、日本側から見れば最高の結果を残してこの東シナ海戦役は仮初の幕を閉じた。
なぜ仮初なのか。
日本侵攻という暴挙に出た中華連邦に対して、日本の盟友である米・豪・印そしてASEAN諸国、更には中華連邦を非難し日本と友好関係にあったロシアを始めとする欧州諸国が国際的に認められた集団的自衛権をついに発動したのだ。
アメリカは中華連邦の軍港、軍事基地に対して通常弾でのICBM・SLBMでの攻撃を行い、標的となった全ての軍事施設を灰燼に帰した。
そして「目標設定を間違えて」発射されたICBMの一弾が連邦首都の主席官邸に着弾する。
人的被害は出なかったものの、設定通りに着弾したこの一撃で連邦政府は反撃の意志を折られたとも言われている。
オーストラリア・インド・ASEAN諸国合同艦隊は中華連邦が占拠したフィリピン島嶼部を南海艦隊を出撃させる猶予も与えぬまま一気に奪回し、連邦が強引に占拠していたスプラトリー諸島からもその戦力を撤退させた。
ロシア・欧州諸国は軍事面では大きく動く事は無かったものの、輸出入の禁止や金融機関の凍結といった経済面で、連邦の勢力に大きな打撃を与えた。
画して、東シナ海海戦を発端とする『亜細亜戦役』は中華連邦からの降伏宣言という一方的な敗戦で幕を閉じる。
終戦後、東京で行われた賠償交渉では平和条約の破棄という連邦の暴挙を盾に日本政府は強圧的に交渉に臨んだ。
敗戦後就任した連邦主席はどうにか責任を逃れようと『戦犯の即時処刑』や『一部領土割譲』等の数々の策を弄してきたが、その全てが戦勝国側にその意図を見透かされて徒労に終わった。
そして、連邦は平和条約を破棄して侵攻した代償として『百年間、年二兆元(日本円で約二十兆円)、総額二百兆元の賠償金の支払い』と『自衛戦力以外の戦力の破棄(ICBM・空母等の強大な戦力の保持の禁止)』、そして『占拠していた海洋部及び連邦成立時に占領した領土の破棄』という一方的な条件の「東京条約」を飲むこととなる。
そして敗戦で権力が失墜した軍部の抑えが利かなくなった余波で一部自治区の反乱も相次いで、中華連邦は国家としては何とか持ち堪えたものの一時は隆盛を極めた連邦の国力は一気に低下していく事となったのである。
平和と思いもよらぬ財政的な援助を得て日本は国力を回復し再び世界的な大国へと歩を進める形となったが、平和主義を掲げる日本の躍進を(中華連邦と大韓共和国を除く)世界は諸手を挙げて歓迎した。
そして訪れた好景気の中で芸能界には三度のアイドルブームが巻き起こり、二千年初頭から世代交代を繰り返し生き延びてきたアイドルグループの美少女・美女達がテレビやライブで歌い踊る世の中となっていたのである。
そして、この物語はある地方の自衛軍基地から始まる。