1/22
1
濃密な草木のかおりと、
噎せ返るほどの死臭。
木々という生命の息吹が濃い場所で、
その息吹を終えいく者たちが打ち捨てられている。
鬱蒼たる死の肉林。
土にまみれた古い骨と、
血にまみれた新しい骨。
そこに佇む一人の少女。
乱雑に切られて束ねられた髪は、炎のような暁色。
傷つき泥にまみれても瑞々しさを失わない
肌の色は濡れた土のような褐色。
漆黒のロングコートに包まれた肉体は、
起伏に少ないがしなやかで、強い生命力を感じさせる。
しかし足元の肉塊を見下す紫の瞳は、
眠りのように昏い闇を宿していた。
まるで、凍える炎のように。
それは足元に転がる死肉と同じだと沙華は思っている。
かつては熱を持っていたが、今はもう熱を生まず、腐敗する
だけの何か。
それでも沙華は戦っていた。
腐ることも、
朽ちることも叶わぬまま。
冷え切った憎悪を抱えて。
――でも、それも今日、ここで終わると良い。
遠く、荘厳なカリヨンの音が響く、美しい翠の
木洩れ日が煌めく空を見上げながら、
沙華は祈るようにそう思った。