始まりの日
朝起きると、父親がいた。
仕事のある日は、こんな時間に家に居ないから、きっと休みなんだろう。
ソファーに座って、ニュースを見ていた。
2階から降りて来た私をチラッとだけみて、すぐにテレビ画面へ視線を戻した。
私は学校の支度のために、台所へ向う。
朝食なんて用意されているはずもない。戸棚から食パンを取り出して、オレンジマーマレードをぬる。冷蔵庫から牛乳を出して、お気に入りのパンダのマグカップへ注いだ。
時計は6時半をさしている。
・・・おはようの一言も言わなくなったのはいつだったっけ?朝食がなくなったのはいつからだった・・・?
考えると少しだけ、胸が痛い。
痛む胸を無視して朝食を食べていると母親が起きてきた。
その手には財布が握られていて、5万円取り出した。
「・・・これ、今月のおこずかいね。今日の夜から明日の夜ぐらいまで、父さんと母さんはいないから。テキトーにご飯だべてちょうだい。」
ぽんと、5万円をテーブルに置く手にはキラッキラのマニュキアが塗られている。
「ありがとう、母さん。いつもこんなに多くもらっちゃって良いの?」
高校生の月のおこずかいが5万円なんて多すぎる。
「学費と保険金以外は、私からは出さないから、必要なものはこれで買いなさいっていつも言ってるでしょ。
それに、あんたに何かあるとアイツがうるさいのよ。」
アイツとは父親のこと。
母曰く、普段ほったらかし状態の娘だか、何かあると父親の責任になるため、私が困らないようにしたいらしい。
で、父が考えた結果、お金もたせとけば良いということだ。
確かに、お金があればなんでも買えるけど、呆れてしまう。
そうゆうのは今に始まったことじゃないし、もうに気しないことにした。
母は眠たそうにして、また自室に戻っていった。
私も朝食を食べ終え、自室に戻って着替えた。1ヶ月しか着ていない、新しい制服を着れば、居心地の悪さが増した。
着替えを済ませ、通学カバンを持って下に降りた。玄関を開ければ、新鮮な空気が肺に入り込む。
いってきます とは言わず、そのまま家を出る。