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関わりシリーズ

関わりたくありません

作者: 三月




 月日が過ぎるのは早いもので、あれから3ヶ月が経ちました。楠木 沙那です。

 お馬鹿な前生徒会役員達の尻拭いに奔走していた現役員達もどうにか落ち着きを見せ始め、平和になった今日この頃です。


 私の不名誉な噂も撤回されましたし、ヒロイン様と攻略メンバー達も学院を追い出されました。全校生徒代表とクラスメイト全員からの謝罪も受け、平穏に読書に勤しむ毎日を送れるようになりました。

 ただあれから学年問わず何人かの生徒が、私と廊下ですれ違う度に土下座をするようになってしまいました。初めて見たときは驚いて立たせようとしたのですが、私の姿が見えなくなるまで頑として譲らず土下座し続けるので、今では放置しています。

 彼らは特に酷い嫌がらせを私にしてきたそうですが、大変良い笑顔をしていた五家のご当主達は一体どんなフォローをして下さったのでしょうか?

 私には秘密裏に護衛がつけられていたので、実際の被害などさほど無かったのですが…。

 まぁ、私が考えたところで彼らの処遇が変わるとも思えません。気にしないのが1番でしょう。


 そんなことを考えていたある日の放課後。いつも通り図書室に向かっていたのですが、私はとうとう幻覚を見るようになってしまったのだろうか。目の前にイギリスに飛ばされた筈の元婚約者殿が見える。

 彼ら前生徒会役員達は、責任を取って役員を辞任させられ、俺様はイタリア、眼鏡はイギリス、チャラ男はフランス、寡黙はドイツにそれぞれ留学という名目で飛ばされた。

 性根を叩き直すまで帰国はさせないと、各家の奥方様達がこれも大変良い笑顔で仰っていたのに…。


 何だか見たことも無いようなキラキラした笑顔の眼鏡が口を開こうとした瞬間、言い様のない寒気に襲われた私は、反射的に逃げ出していた。

 走り出してから自分の反応に気付き、そっと後ろを振り返った私は、直ぐに前を向いてスピードを上げた。

 だって、眼鏡がキラキラの笑顔のままで追いかけて来るんですよ?そりゃ全力で逃げるしかないでしょう!


 放課後の校内には助けになるような人影も見当たらず、眼鏡に見つかりたくない私は、目についた教室に隠れようと飛び込みました。その瞬間、



 「ぶっふぇっ!?」



 お嬢様らしからぬ悲鳴を上げて盛大にスッ転びました。

 一体何がと振り向くと、私を見て固まっている1人の男子生徒がいました。しゃがんで床のペンを拾おうとしている様子から、伸ばされた彼の腕に私は躓いたのでしょう。

 というか、彼からしたら唐突に教室に飛び込んできた女に腕を蹴られたわけです。私の前方不注意が原因ですから、ここはきちんと謝罪しなければと、彼の方に向き直ったのですが、



 「クマ○ン…」



 先に呟かれた彼の言葉に撃沈しました。

 見たんですか?

 見たんですね!

 いいじゃないですかクマ○ン。

 可愛いじゃないですかクマ○ン。

 ちゃんと上下お揃いですよ!


 脳内で訳のわからない弁明をしていますが、羞恥の余り言葉になりません。

 真っ赤な顔で口をパクパクさせるしかない私に、更なる危機がやって来ました。



 「沙那!」



 相変わらずキラキラした笑顔の眼鏡に追い付かれました。

 てか、今まで私のこと名前で呼んだことなんて1回もなかったでしょうが!何急に馴れ馴れしく呼んでるんだよ!

 脳内で眼鏡を罵倒するも、精神的ショックが強すぎて立ち上がることの出来ない私の目の前まで、奴はやって来ました。この眼鏡、何をするつもりでしょうか。



 「沙那、貴女を傷つけてすみませんでした」



 それまでのキラキラ笑顔から一転して、苦しそうな顔で私に謝る眼鏡を呆然と見ます。

 眼鏡が言うには、イギリスでこれまでの行いを振り返り、自分がどれ程酷いことをしてきたのかを自覚したそうです。特に、私への仕打ちはとても許されるものではないと。

 だがそれでも、面と向かって謝るべきだと思い、直ぐに飛行機を手配して飛び乗ったのだそうです。


 うん、まあね。

 別に私傷ついてないし、正直何罰則放り出して勝手に帰国してんだよ、と思わないでもないけどね。あの馬鹿が自分の非に気がついて、自分から謝りに来たところは認めてあげても良いかな。


 なんて思ったのに、私が口を開く前にまた、眼鏡があのキラキラ笑顔に戻りました。



 「そしてわかったんです。沙那こそが僕の運命の女性だったのだと!」



 はああああああああああ?!



 ちょっと待てお前!

 さっきまで私に許されなくても当然だとか言ってなかったか?

 何でそこから急に運命の女性になるんだよ!

 取り敢えず病院行け!


 うっとりした顔で私に向かって愛を叫び続ける眼鏡から少しでも離れようと、ジリジリと後退していきましたが、私が座ったままなのと、相手も同じだけ進んでくるのとで、直ぐに壁際に追い詰められてしまいました。

 キラキラ笑顔の眼鏡の手が私の体に触れそうになり、思わず目を閉じた瞬間、



 「ちょっと待て」



 先程の男子生徒が、眼鏡を私から引き離し、私を抱き起こして自分の背後に隠して下さいました。


 あなたは救世主様ですか?!

 ありがとうございます!

 正直存在忘れてました!



 「何ですか、あなたは。部外者は黙っていて下さい」



 黙れ眼鏡!お前だってもう私の関係者じゃないだろうが!



 「まぁ、確かに関係無いけどな」



 そんな、救世主様!私を見捨てないで下さい。

 思わず救世主様の制服をギュッと握り締めてしまいましたが、救世主様は私を安心させるように微笑んで下さいました。



 「怯えてる女を見捨てて帰れないだろ」



 流石救世主様!何処ぞの馬鹿眼鏡とは格が違います。



 「彼女は僕の婚約者です。何の問題もありません。」



 ふざけんな眼鏡!だからとっくに婚約破棄してるって言っただろうが!



 「俺がお前のこと知らないとでも思ってんの?元副会長様」



 眼鏡が何か悔しそうに唇噛んでますが、当然でしょう。あんなこと仕出かした彼ら、前生徒会役員達は悪い意味で有名になりましたからね。



 「散々彼女のこと罵ってた癖に、今更手のひら返して言い寄るなんて、見苦し過ぎだろ」



 素晴らしいです救世主様。もっと言ってやって下さい。



 「帰国まだ許されてないんだろ。彼女を口説きたいんなら、先ず信用取り戻すとこから始めろよ」



 救世主様の言葉に何も返せず固まる眼鏡。何かを言おうとして、口を開けては閉じるのを繰り返しています。

 固まる眼鏡を置いて教室を出る私達。救世主様はずっと、私と眼鏡の間に入り続けて下さいました。



 「ありがとうございました」



 教室から十分離れたところまで来て、ようやく救世主様にお礼を言えました。



 「気にするな」



 私の頭を撫でながら笑いかけて下さる救世主様。素敵過ぎます。



 「迎えが来るまで付き合おう」


 「そんな訳には…」


 「無いとは思うが、また追いかけられたくはないだろ」



 確かに。救世主様には申し訳ないが、お願いしよう。

 全く、今日はひどい目にあった。個人的にはヒロイン様より、今日のキラキラ眼鏡の方が遥かに怖かった。

 とにかく、もうあのキラキラ眼鏡には関わりたくありません!





無駄な裏設定

 ・眼鏡はこの後、イギリスに強制連行。ペナルティ追加です。

 ・元々好感度低かったのに最低値割った眼鏡は、頭丸めて土下座しても許してもらえない。

 ・救世主様は沙那の護衛役の1人。隠しカメラの回収に来ていました。

 ・救世主様と沙那は同学年ですが、クラスが違います。今回が初接触。

 ・沙那の護衛は悪女被害者の会会員の子ども達で構成。

 ・多分いつか女狐被害者の会ができる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 眼鏡w笑わせていただきましたv 眼鏡の僕に選ばれるのが嬉しいだろう、光栄だろうってドヤ顔がいらつきますね。 ちやほやされすぎて自分を好きにならないにんげんがいるなんておかしいって考えなのか…
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