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ピエロ  作者: 劉・小狼
6/41

 6

 吾郎は戸惑いながら、

 「あ、ありがとう!……」

 夏海にいうと

 「良かった!」

 夏海は嬉しそうに微笑んだ。

 夏海が首筋に当ててくれた濡れたハンカチのお陰で

吾郎の頭の痛みは徐々に和らいでいった。

 随分、頭の痛みが和らいだ吾郎は夏海が首筋に宛てている

濡れたハンカチを取ると

 「ありがとう!……」

 夏海に言い、ベンチから立ち上がった。

 だが、急に立ち眩みを起こし、吾郎はよろけ、

再び、ベンチに尻餅を付いた。

 「だ、大丈夫ですか?…… やっぱり、病院で

診てもらいましょう?」

 心配そうに夏海は吾郎のことを見詰めた。

 立ち眩みを起こした吾郎は頭が少しボーとしながら

 「ああぁ…… そうだなぁ……」

 病院に行くことにしたのをいうと

 「わたし、近くに良い病院を知っていますから……」

 夏海は吾郎を自分が知っている、近くの病院に

連れて行った。

 だが、夏海が連れて来たのは病院というよりかは

町の診療所のような所だった。

 夏海はその診療所のような病院の玄関のドアを開けると

 「お父さん、いる?……」

 中へと聴こえるように叫んだ。

 「なんだ! 騒々しい!……」

 建物の奥から白衣を着た男の人【弘三】が夏海らの前に現れた。

 弘三は夏海のことを見るなり、がっかりした顔をしながら、

 「なんだ…… お前かぁ……」

 というと再び、建物の奥へと戻ろうとした。

 「相変わらず、冷たいのね! お父さん」

 夏海がため息混じりにそう言うと弘三は不機嫌そうに

 「用がないなら、とっとと帰れ!」

 夏海に冷たく、言った。

 夏海は弘三のそんな態度にイラッとしながらも、

 「用はあるわ! お父さんにちょっと、

診てもらいたい人がいるの?……」

 外で立ち尽くしている吾郎のことを見た。

 夏海のそんな言葉に弘三は眉間にしわを寄せながら、

奥から外に立ち尽くしている吾郎のことを見た。

 顔色の悪い吾郎を見て、弘三は眉間にしわを寄せたまま、

 「奥に通せ!」

 と呟くと一人、奥へと戻った。

 「はぁ~い!……」

 夏海は吾郎を診療所のような病院の中へと入れた。

 奥の診療室で一通り、吾郎のことを見た弘三は

カルテに色々と書き込みながら、

 「恐らく、疲れからの頭痛だと思うけど……

一度、大きな病院でちゃんと診てもらった方が良いぞ!」

 吾郎にそう告げた。

 点滴を打ってもらい、薬をもらった吾郎は

 「ありがとうございました!……」

 弘三にお礼を言い、弘三の診療所のような病院を後にした。

 吾郎と並んで歩きながら、夏海は

 「良かったね! 何ともなくて……」

 吾郎に微笑んだ。

 「ああぁ…… 助かったよ!」

 吾郎が頷くと

 「うちの父は口は少し悪いけど、腕は確かだから……

でも、父が言ったように一度、ちゃんと大きな病院で

診てもらった方が良いよ!」

 夏海は真面目な顔で吾郎に言った。

 「ああぁ…… それより、キミは時間は良いの?」

 吾郎は頷きながら、夏海にそう尋ねると


 『え?……』


 夏海は驚いた顔をし、腕に嵌めている腕時計に目をやった。

 途端に顔色を変えた夏海は

 「やばぁ! 遅刻だ!」

 慌てて、その場を駆け出した。

 少し行くと夏海は立ち止まり、吾郎の方に振り返り、

 「今日は家に帰って、大人しくしとくんだよ!」

 吾郎をまるで子供扱いし、微笑むと吾郎に手を振り、

その場を後にした。

 吾郎も夏海に手を振りながら、


 『あの子、何処かで逢った気がするんだけどなぁ?……』


 と思うものの、思い出すことができなかった。


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