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『変な子だ!』
吾郎は飲みかけのジュースを一気に飲み干し、
ゴミ入れに飲み終わったジュースの缶を捨て、
『待てよ! あの子とは何処かで逢った気がするぞ!』
ふと、彩佳と以前に何処かで逢った気がしてきた。
『どこだ?・・・』
吾郎がゴミ入れの前で必死に考えたが……
『やっぱり、ダメだ! 思い出せない……』
吾郎は彩佳と何処で逢ったのか、思い出すことが出来なかった。
だが、確かに彩佳とは何処かで逢った気がする……
結局、わからないまま、家に辿り着いた吾郎は部屋のドアを開けた。
部屋の中はシーンと静まり返っていた。
『やっぱり、朝のことは夢だったんだ……』
吾郎はため息を吐くと彩佳に振り回され、疲れ切った身体を
一刻も早く休めたくて、寝室のベットに倒れ込んだ。
『うわぁ!……』
自分のベットで気持ち良さそうにスヤスヤと寝ていた
篤子の悲鳴を聴き、吾郎は驚き、ベットから飛び起きた。
『やっぱり、朝のことは夢じゃなかったんだ!』
吾郎はそう思ったものの、疲れと眠気に勝てず、
着ていた服を着替えず、篤子の横に倒れ込み、深い眠りに落ちた。
けたたましい目覚まし時計の音とカーテン越しに零れる朝日で
吾郎は目を覚ました。
『あ、朝かぁ……』
まだ寝ぼけ眼【まなこ】で隣に目をやるとすでに横には
篤子の姿はなかった。
二日酔いに似た鈍い頭痛を抱えながら、隣の部屋に移動すると
そこにも篤子の姿はなかった。
『あれ?……』
きのうとは様子が違うのに吾郎が戸惑いながらもキッチンの前の
テーブルに目をやるとそこには一枚の小さな紙切れが置かれていて、
『仕事があるから先に行くね! 篤子』
と書かれていた。
『仕事?……』
吾郎が首を傾げ、テレビの上の壁に掛かっている時計に
ふと、見ると時計は”7時”をちょっと過ぎた時刻を差していた。
『7時?…… やばぁ!遅刻だ!」
時計の時刻を見て、驚いた吾郎は慌てて、服を着替え、
篤子が用意した朝食を摂らず、家を飛び出した。
吾郎は会社へと向かう道を急ぎながら、
『一体、篤子は何の仕事をしているのだろうか?……
どうやって、俺と知り合い、結婚をしたのだろうか?……』
色々な事を考えていると突然、吾郎の目の前を人影が横切った。




