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そのノートには夏海の父親の弘三が行っていた
実験の結果などと共に自分が行った実験に対しての
懺悔の言葉が綴られていた。
『嘘だろう!……』
吾郎にはそのノートに書かれていることを
すぐに信じることができなかった。
宮間は運転をしながら、少し顔色を曇らせると
「まだ詳しいことは調べてみないとわからないが……
そこに書かれていることはまず事実のようだ!
おまけに我らの組織の中にも関わっている者らが
いるみたいで……」
と言った。
吾郎も顔色も曇らせながら、ノートを閉じ、ノートの表紙を
見詰めたまま、
「そうですか……」
としか言えなかった。
宮間が吾郎と連れ、警察署の自分の部署に戻ってくると
警視庁捜査第2課の田崎らが持っていた。
田崎は宮間が連れて戻ってきた吾郎を見ると
宮間のもとに近寄ってきて
「ご苦労さまでした! 後はこちらで引き継ぎましょう!」
吾郎を連れて行こうとした。
宮間は夏海が渡したノートにより、警視庁にも
今回の事件の引き金になった人体実験に関わった者らが
いることを知っており、
『このまま、大事な証拠を持って行かれる訳にはいかん!』
と思い、
「ちょっと待ってください! こちらの事件が先です!」
田崎から吾郎を奪い返すと奥の取調室へと
吾郎と慌てて、入った。
取調室に宮間と共に入った吾郎は宮間の大胆な行動に
びっくりし、宮間のことを見詰めながら
「良いのですか? 上の方に逆らっても?……」
と訊くと宮間はため息を吐き、取調室の椅子に
腰掛けると
「ダメだろうなぁ…… このままだと……」
煙草を咥えながら、呟いた。
「ど、どうするのですか?……」
吾郎が慌てたように宮間に尋ねると
「どうするかな?……」
宮間は煙草を吹かした。
「外は大変なことになっていますよ!
先輩どうするのですか?……」
慌てて、宮間と吾郎がいる取調室の中に基山が
駆け込んできた。
煙草を吹かし、一服をしながら、これからどうするかを
考えていた宮間は
「基山! 確か、お前の友達に警視庁の
エリートの警視らがいたなぁ?……」
突然、基山に話し掛けた。
「ええぇ…… いますけど…… それが?……」
基山は驚いた顔で宮間の問いかけに頷いた。
それを聞いた宮間は何かを思い付いたらしく、
「そうか!基山。すぐにここにパソコンを持って来い!」
基山に取調室にパソコンを持ってくるように指示をした。
「も、持って来ました!」
さっぱり、基山には訳がわからなかったが宮間に
言われた通りにパソコンを取ってきた。
「ご苦労! 相良さん、さっきのノートを
貸してもらえませんか?」
吾郎もさっぱり、訳がわからなかったが
「ええぇ…… 良いですけど……」
吾郎は宮間にさっき、受け取ったノートを宮間に返した。
宮間は吾郎からノートを受け取ると数ページを捲り、
「これを簡単に纏め、お前の友達の警視庁の
エリート警視らに送れ!」
基山に命令した。
『はぁ?……』
基山は初めは意味がわからなかったが宮間の差し出した
ノートに書かれている内容を観て、顔色を変え、驚いた。
「せ、先輩! 正気ですか? これを公表されたら、
我らの組織を含め、世間は大変なことになりますよ……」
宮間はまだ残っている煙草を吹かしながら
「ああぁ…… 正気さ! でも、これが公表される前に
警視庁の奴らが何か、手を打ってくれるはずだろう!……」
と言った。
基山は宮間の言葉に半信半疑だったが宮間の言われるままに
自分の友達の警視庁のエリート警視らの他にも
マスコミ関係の友達らにも宮間が差し出したノートの内容を
簡単に纏め、メールで一斉に送った。
基山のメールを受け取った基山の友達らは大騒ぎになった。
特に基山の友達の警視庁のエリート警視らは
すぐに事の重大性を感じ、上層部に送られてきた
メールの内容を報告をした。




