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『え?……』
吾郎がびっくりし、鮫島のことを見ようとしたその時、
吾郎は突然、強い眠気に襲われ、その場に倒れ込んだ。
宮間が部下の基山らを引き連れ、茉里のことを
更に捜査に向かおうと警察署を出た途端、
宮間の前に数人の男を引き連れた男・田崎が現れた。
『またか!』
宮間は少し苛立ちながら
「お前達、何者だ!」
というと田崎は服の内ポケットから警察手帳を取り出し、
宮間に見せながら
「警視庁の捜査2課の田崎といいます!……
相良吾郎さんのことで少しお聞きしたいことがありまして……」
宮間に話し掛けてきた。
『はぁ? 警視庁捜査2課?』
宮間は顔をしかめ、
「相良吾郎なら、おたくらのお仲間の鮫島という者が
連れて行ったが……」
田崎に文句を言うように少し喧嘩腰でいった。
田崎は驚いた顔で
「はぁ? うちには鮫島という者はいませんが……
それは一体、どういうことですか?」
宮間に逆に訊いてきた。
宮間はすぐには理解できなかったが
『やられた!……』
自分が騙されたことに気付き
「基山。 後のことは頼む!」
後のことを基山に任せると吾郎と鮫島を捜すために
その場を走り出した。
吾郎が気が付くと薄暗い倉庫らしき場所に寝かされていた。
『ここは?……』
吾郎は辺りを見廻し、起き上がろうとしたが
うまくいかなかった。
それもそのはずだ!
手足を縛られていた上に体中をロープで
縛られていたのだった。
『なんだ? これは?……』
吾郎は必死にもがき暴れ、縛られているロープを
解こうとしたが思った以上にロープは頑丈に
縛られていて、解くことが出来なかった。
「そんなことをしても無駄さ……」
何処からともなく、いつものピエロのしゃがれた声が
聴こえてきた。
『え?……』
吾郎が驚き、辺りを見廻すと少し離れた吾郎の正面に
吾郎の家で今、一緒に暮らしている包帯の女性が立っていた。
吾郎が驚いた顔で包帯の女性のことを見詰めながら
「ど、どうして…… キミがここに?……」
というと包帯の女性は包帯越しににやけながら
「まだわからないのかい? 俺だよ!俺だよ!……」
そのしゃがれた声はあのピエロの声だった。
「ま、まさか!…… あのピエロか?……」
吾郎が驚いた顔のまま、包帯の女性にいうと
ケタケタと包帯の女性は笑いながら
「やっと気付いたか!…… そのピエロが何者か、
お前は知っているのか?……」
吾郎に話し掛けてきた。
吾郎は目の前の包帯の女性に取り込まれそうで怖く、
怯えながら
「お、お前は茉里なのか?……」
と恐る恐る、包帯の女性にいうと包帯の女性は
再び、笑いながら
「お前は何も思い出しておらず、何もわかっていない!」
鋭い眼光で包帯の女性は吾郎のことを見詰めた。
吾郎は怯えながら
「ど、どういうことだ! 俺が何も思い出しておらず、
何もわかっていないとは?……」
包帯の女性に訊くと包帯の女性は今までの怖すぎる表情から
一変、とても哀しげな表情で
「お前が私にしたことさ……」
と答えた。
『したこと?……』
吾郎はまるで意味がわからなかった。




