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ピエロ  作者: 劉・小狼
3/41

 3

 今にも泣き出しそうな彩佳の顔をみた吾郎は彩佳をそのまま、

そこに残していくことが出来ず、大きなため息を吐き、

 「わ、わかったよ!……」

 半分、諦め顔で呟くとそれを聴いた彩佳は

 「やった!……」

 満面の笑みで吾郎に抱き付くと夜空を照らし始めた夜の街へと

吾郎の手を引き、歩き出した。

 屈託のない彩佳の笑顔に負けた吾郎は


 『しょうがないなぁ……』


 彩佳と一緒になり、微笑みながら、彩佳に手を引かれ、

夜の街へと歩き出した。

 吾郎は小悪魔のような彩佳に散々、ネオン煌く街の中を

連れ廻された。

 ヘトヘトに疲れ果てた吾郎は

 「ちょっと休憩!」

 と言い、街外れの公園のベンチに腰掛けた。


 『えー!……』


 彩佳は少し不満そうだったが吾郎の横にちょこんと腰掛け、

座った。

 公園は雑踏の街から少ししか離れていないのだが

街の雑音などがまるで聞こえず、虫の声が聴こえる位、

静かな場所だった。

 吾郎がホッとしながら

 「落ち着くなぁ……」

 虫の声に耳を澄ませ、公園の静かさに浸っていると

彩佳は脚を投げ出し、プラプラとしながら

 「こんな場所、つまんない!…… 戻ろうよ!」

 吾郎の袖を引っ張った。

 「ああぁ…… もうちょっとなぁ……」

 吾郎はあまりの静けさとどっと出た疲れと共に

深い眠りに落ちた。


 何時間、寝たんだろう?……


 ハッと気が付き、吾郎が起きると辺りには誰もいなかった。


 『さっきのことは夢か?……』


 吾郎が半分、寝ぼけいると突然、首の後ろに冷たさを感じた。


 『つ、冷たい!……』


 吾郎がベンチから飛び上がり、後ろを振り返ると彩佳が

楽しげに微笑みながら、

 「おはよう!……」

 両手にジュースを持って、立っていた。


 『夢じゃないのか?……』


 吾郎がさっきまで一緒にいた彩佳がまだ、そこにいることに

びっくりしていると

 「どうしたの?……」

 彩佳は不思議そうな顔をし、吾郎のことを見詰めた。

 「い、いや…… なんでもない……」

 彩佳に見惚れていた吾郎は咄嗟に誤魔化すと

 「そう…… はい! ジュース!」

 彩佳は少し疑いながらも吾郎に持っていたジュースの

片方を手渡した。

 少し戸惑いながらも吾郎は

 「あ、ありがとう!……」

 彩佳からジュースを受け取ると蓋を開け、

一口、ジュースを飲みながら、再びベンチに腰掛けた。

 彩佳も同じようにジュースを飲みながら、吾郎の横に

腰を下ろした。

 静かな公園で吾郎と彩佳が二人、ベンチに並んで座り、

ジュースを飲んでいると静かな公園には似合わない

けたたましい携帯電話の着信音が鳴り響いた。


 『うわぁ!……』


 びっくりし、吾郎は慌てて、上着の内ポケットから

携帯電話を取り出し、着信者を確認したが吾郎のモノではなかった。

 「いけない! 私のだ!」

 彩佳は慌てて、携帯電話を取り出すと吾郎に背を向け、

電話に出た。


 しばらく、話し込んだ彩佳は

 「わかったよ! すぐに帰るから……」

 というと不機嫌そうに電話を切った。

 彩佳は小さなため息を吐くとくるりと吾郎の方を向くと

哀しげな顔で

 「ごめん! ママから…… すぐに家に帰って来なさい!って……

だから、帰るね!」

 と言った。

 「そう…… じゃあ、送ろうか?」

 吾郎が立ち上がり、彩佳にそう言うと

 「ううん……大丈夫! 家はすぐ近くだから……

今日はとても楽しかった!」

 彩佳は吾郎の頬にキスをすると吾郎の前から立ち去った。

 突然のキスに吾郎が驚いていると彩佳は公園の入り口で

立ち止まり、吾郎の方に振り返ると

 「またね!」

 笑顔で吾郎に手を振り、吾郎の前から立ち去った。


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